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【日本酒】「山田錦」のルーツを深掘り!酒米別に飲み比べ3本~『伊藤家の晩酌』第三十五夜〜

Hanako.tokyo / 2022年8月7日 17時50分

【日本酒】「山田錦」のルーツを深掘り!酒米別に飲み比べ3本~『伊藤家の晩酌』第三十五夜〜

20歳の頃から唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第三十五夜は、もっとも有名な酒米「山田錦」のルーツをたどります!

「山田錦」のルーツとなる「山田穂」と「短稈渡船」を使った「日高見」3本!

(左から)「日高見 純米 山田穂」「日高見 純米 短稈渡船」「日高見 純米 山田錦」

宮城県石巻市にある「平孝酒造」の代表銘柄「日高見(ひたかみ)」。酒米「山田錦」の母親にあたる「山田穂」を使った純米酒。純米酒らしい米の甘さ、やわらかさが際立つ。「日高見 純米 山田穂」720ml 1,540円(ひいな購入時価格)/株式会社平孝酒造

こちらは「山田錦」の父親にあたる「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」。栽培が難しいため、とても希少な酒米。フルーティな酸味と余韻がふわりと残るさわやかな飲み口が印象的。「日高見 純米 短稈渡船」720ml 1,540円(ひいな購入時価格)/株式会社平孝酒造

港町・石巻の酒らしく「魚でやるなら日高見だっちゃ!」がキャッチフレーズの「日高見」。ラベルのイラスト通り、魚介と相性抜群。母と父のいいとこどりの味わいで、さすが「山田錦」な1本。「日高見 純米 山田錦」720ml 1,430円(ひいな購入時価格)/株式会社平孝酒造



娘・ひいな(以下、ひいな)「今回はね、誰もが知る、あの有名な酒米を深掘りしてみようかと…」


父・徹也(以下、テツヤ)「『山田錦』?」


ひいな「正解!」


テツヤ「酒米といえば、『山田錦』だよな!生産量も一番多いんだよね?」


ひいな「そう。割と育てやすくて、麹もつくりやすいって言われてる。『山田錦』のふるさとは兵庫県。でね。『山田錦』にも、お父さんとお母さんがいるわけですよ」


テツヤ「あぁ、かけ合わせた品種ってことなんだな?あ、ラベルに父、母って入ってる!」


ひいな「今日は、それぞれの酒米で飲み比べしてみたいと思います」


テツヤ「なるほど。おもしろい企画だね!」


ひいな「でしょう?今回は、宮城県石巻の『日高見』っていう純米酒で、それぞれ酒米が違う3本をご用意しました」


テツヤ「父、母、子どもが『山田錦』ってわけだな?いままで酒米をそういうふうに系統でみたことなかったな」



ひいな「そうだよね。『山田錦』の母親が『山田穂』で、父親が『短稈渡船(たんかんわたりぶね)』っていう酒米なんだけどね。そもそも、これらのお米を使ってお酒を造ってるところが少なくて、限られた蔵にしか出回らないお米なの」


テツヤ「へぇ。そんな珍しいお米なんだ」


ひいな「同じ蔵で、酒米違いで純米酒を出してる」


テツヤ「なるほど、全部、純米酒なんだね。米の違いが純粋に楽しめるわけだ」


ひいな「今日は、『山田錦』にまつわるお酒3本を飲み比べてみたいと思います!」


テツヤ「いいね、いいね」

酒米ごとにまったく違う味わい、風味、香り…。どれがお好み?



ひいな「『山田穂』から乾杯しようか」


テツヤ「左から、母、父、子だな」


ひいな&テツヤ「乾杯〜!」



ひいな「やわらかくない?」


テツヤ「めちゃくちゃ上品だねぇ〜」


ひいな「すごくやわらかくて、やさしい感じの味わいなんだよね。次は父の『短稈渡船』飲んでみよう」


テツヤ「初めて聞いたよ!こんな酒米があるんだね」


ひいな「名前がいかついよね(笑)」



ひいな&テツヤ「乾杯!」


テツヤ「あぁ、俺はこれ好きかも」


ひいな「父だけに(笑)」


テツヤ「後味の酸味がいいな」


ひいな「そう。後味にあるよね」


テツヤ「父と母、ぜんぜんちがうね」


ひいな「でしょう?」


テツヤ「好み的には、断然、父だね」


ひいな「そうなんだ!私は『山田穂』かな。やさしい感じがいい」


テツヤ「『山田穂』は最初にアクセントがきて、『短稈渡船』は後にこない?」


ひいな「あぁ、言われてみればそうかも」


テツヤ「俺はさ、人生の余韻を感じたいからさ…」



ひいな「なるほど(笑)」


テツヤ「年齢的にね(笑)」


ひいな「味わいは違うんだけど、でも味の系統は似てるよね」


テツヤ「そうそう。似たもの夫婦なんだな。これはスタッフみんなでどっち派なのか多数決取りたいな」


編集・小倉「僕もお父さんかも」


ライター・薮下「私は、第一印象、母が好きでした」


フォトグラファー・北尾「お父さんですかね」


母・美樹「母のほうが甘みがあるね」



ひいな「見事に分かれたね(笑)。この母と父を人工交配させてできたのが『山田錦』なの。実は、父の『短稈渡船』は『雄町』の系列なんだって」


テツヤ「『雄町』が祖先ってこと?」


ひいな「そういうことだね。『短稈渡船』は、もともと滋賀県に『渡船』っていうお米があったんだけど、その『渡船』の祖先が『雄町』なんだって」


テツヤ「なるほど。『雄町』『渡船』『短稈渡船』ってことか」


ひいな「『短稈渡船』ってすごく栽培しにくいらしくて。穂が短くて、倒れやすくて、病気に弱い…」


テツヤ「それは、育てるのが大変だろう」


ひいな「普通に食べる飯米よりも、収穫が1ヶ月遅いらしくて」


テツヤ「めちゃくちゃ扱いにくいお米なんだな」


ひいな「反対に『山田穂』は背が高くて倒れやすいんだけど、大粒で酒米として評価が高かったんだって。だから、背が高い母と背が低い父をかけ合わせてできたのが『山田錦』」


テツヤ「なるほど。父と母のいいとこどりなんだね」


ひいな「『魚でやるなら日高見だっちゃ!』っていうキャッチフレーズが有名で、『日高見』は海鮮にぴったりな日本酒なんだけどね。『山田錦』はそのままずばり魚のラベル」


テツヤ「石巻だもんな。どんな魚がいいんだろな。やっぱり白身魚かな」



ひいな「イラストには、サクラマス、赤貝、アナゴ…」


テツヤ「アナゴだ!白焼きだな」


ひいな「うん、絶対合うね」


テツヤ「子ども、いただいてみようかな」


ひいな&テツヤ「乾杯」


テツヤ「あぁ、こりゃ確かに、父と母、両方のいいところをかけ合わせてあるね」


ひいな「『山田穂』のやさしさと『短稈渡船』の後味の酸を感じるよね」


テツヤ「俺はきれいにまとまっているよりも、父の酸味が好きかもしれない。ひとつ突き抜けた感じの」


ひいな「うんうん、特徴的だよね」


テツヤ「日本酒ってさ、最初にアクセントあるやつが多くない?」


ひいな「確かに。最初にあるのが多いかもね。香りが華やかで、後味さっぱり、キレがあるみたいな」


テツヤ「辛口ってそうだもんな」


ひいな「でも、純米酒とか熱燗に向いてるお酒はだいたい後ろ重心だと思うよ」


テツヤ「今日わかった!俺は後ろ重心の酒が好きなんだな。余韻だよ。2年かかって自分の好みがわかった!」


ひいな「でも、それがわかると選ぶの楽しいかも。スペックから予想ができるかもしれないね」


テツヤ「わかるかな…(笑)。『後ろ重心の酒ありますか?』って聞くのもなぁ」



ひいな「確かに(笑)」


テツヤ「ひいなはどっちが好み?前?後ろ?」


ひいな「う〜ん、シチュエーションによるかな。一杯目に飲むとしたら、前に重心があるお酒で、食事の後半とか、煮物に合わせるなら後ろ重心かなとか」


テツヤ「そうか。食事に合わせると確かに変わってくるよね」


ひいな「じゃ、おつまみに合わせてみよう」

兵庫県生まれの酒米だから、合わせるのは兵庫県のおいしいものいろいろ!



ひいな「今回は、兵庫のおつまみをそろえてみました!兵庫産の塩海苔と〈トキワ〉のさばへしこ、淡路島産の玉ネギはオーブンで丸ごと焼いて上にパルメザンチーズをかけてみました。兵庫県産の赤味噌をかけた牡蠣のどて焼きです!」


テツヤ「うん。うまいね。玉ネギは母が合うね」



ひいな「うんうん。すごく『山田穂』と合う!」


テツヤ「父は何に合うんだろうな?あ、へしこが合うよ。うまい。これはいい。母だとちょっとへしこの匂いが気になる。子どもは何と合うかな?」



ひいな「『山田錦』って、割となんでもいけるイメージがあって」


テツヤ「うん。一番流通してるしね。だから、個性がないっちゃない気もするよな」


ひいな「特徴がないのが、山田錦のいいところでもある」


テツヤ「牡蠣は魚介だからどれでも合いそうだけど。こっくりしてる味噌がいいね。あれ、お父さんと合わないな…」



ひいな「牡蠣って旨みが後から来るから、お父さんの後ろ重心とバッティングしちゃうんじゃない?」


テツヤ「口のなかでケンカしてるのかな(笑)。牡蠣の味噌がお母さんに合うね。『山田錦』はまぁまぁって仲裁してくれるような…」


ひいな「『山田穂』はやわらかい甘みと味噌のまろやかさが一緒のトーンな気がする。お味噌とすごく合うね」


テツヤ「お父さんは?」


ひいな「お父さんは酸があるからね…。牡蠣だけだったら合うかもしれない」


テツヤ「お母さんは、なんでも包みこんでくれる包容力がある感じだなぁ。味噌だとお父さんの存在感が弱くなっちゃうんだよなぁ。牡蠣とは合うんだけど。ここまで特徴がはっきりしてるのっておもしろいね。お米によって全然違うんだな」


ひいな「ほんとにおもしろいよね」


テツヤ「『山田錦』は、何にでも合う優等生な感じだね」


ひいな「うん、さすがサラブレッド」


テツヤ「でも、何か偏りがある方がおいしく感じるなぁ。バランスはすごく取れてるんだけどね」


ひいな「『山田錦』って炊いたらもちもちらしくて、チャーハンにしてもいいらしいよ。飯米としても使えるんだって」


テツヤ「酒にしてもよし、食べてもよしのオールマイティなんだな」


ひいな「日本酒のなかの37%が『山田錦』を使ってるんだって」


テツヤ「3割越えか!あとの63%は?」


ひいな「新しいお米も増えてきてるから。やっぱり『山田錦』は不動だね」


テツヤ「やっぱり育てやすいってことなのかな」


ひいな「使いやすくて、味のバランスが取れてるっていうことかな」


テツヤ「俺はやっぱり、『短稈渡船』だな」



ひいな「父が父を絶賛だね。『渡船』のお酒は結構あるから見つけたら買ってみるといいかも」


テツヤ「いままで見たことなかったよ。この間、滋賀に出張に行ったんだけどさ、米どころだし、水もあるし、農業もさかんでさ」


ひいな「滋賀は蔵も多いし」


テツヤ「発酵文化もあるし、日本酒と合うよなぁって」


ひいな「行きたいなぁ。今回は米を語る会になったね」


テツヤ「お米が違うだけで、こんなに味わいが違うのって、ほんとにおもしろかったよ」

【ひいなのつぶやき】
酒米に注目すると、選び方の一つの指針になって、お酒選びが楽しくなります!お米の特性を把握して造り方を変えている酒蔵さんの巧みな技をぜひ堪能してください!!
ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中

photo:Wataru Kitao illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita

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