日本の四川料理ブームの火付け役的存在。井桁良樹シェフ〈飄香〉が、広尾にリニューアルオープン。
Hanako.tokyo / 2022年8月5日 12時0分
上海と成都で修業を重ねた井桁良樹シェフ。四川料理の500以上のレシピを習得して帰国し、代々木上原にオープンした〈飄香〉の衝撃を覚えている人も多いはず。その井桁シェフが本店を広尾に移し、ここでしか食べられない四川料理を追求します。本物の四川料理が展開されるこの店が、中華料理の新たな聖地になるのは間違いなさそうです。
〈飄香〉店内
大きなオープンキッチンを眺めるように配置された客席は、どこもとっておきのシェフズテーブル。井桁シェフの料理する姿が間近に見られ、現地から取り寄せた極上のスパイスや自家製調味などの豊かな香りが体感できます。窓の外には竹林があしらわれ、コンクリート打ちっぱなしの無機質な壁とのコントラストが印象的です。
オーナーシェフの井桁良樹さん。
井桁シェフは、国内の四川料理店で腕を磨いた後、単身中国に渡ります。「百の素材があれば百の調理法がある」といわれる四川料理をマスターし帰国。2005年に代々木上原に自身の店〈飄香〉をオープンさせるとたちまち大評判に。その後の大四川料理ブームが起きるきっかけのひとつになりました。
コロナ禍前までは毎年四川省を訪れ、奥深い四川料理の道を追求。伝統四川料理の継承人として認定を受けるなど、その実力は本場でも高く評価されています。
“芙蓉(フヨウ)”。
料理は、14品ほどの料理が登場するお任せコース。料理にはそれぞれ、味やイメージを象徴する名前がつけられています。最初の一皿は、四川省の省都・成都市の花である芙蓉(フヨウ)をイメージしたもの。ムース状の豆腐の中には、白インゲン豆や自家製干し肉などが隠れています。隠し味には腐乳も。四川伝統料理のふわふわ豆腐を井桁シェフが進化させた一品です。
飄香のロゴの入ったお皿で登場する“竹韻(ジュユィン)”という料理。
竹の葉が風に吹かれてさらさらと鳴る様子を表す言葉が竹韻。井桁シェフが景徳鎮にオーダーして作らせた竹韻を表すうつわには、イカ墨を練り込んだ中国パイの上にフォアグラ、赤腐乳、ピクルス、自家製甜麺醤を乗せて緑茶のパウダーをかけたものが置かれています。甘・辛・酸の味をフォアグラでまとめる、初めて出会う美味は驚きです。
“琵琶(ビワ)”。
泡菜(パオツァイ)を天然乳酸発酵させてできるピクルス液でマリネしたボタン海老。それを海老の殻を粉砕して作る自家製の海老煎餅の上に、青山椒オイル、ムージャン油、青柚子の皮などと共にのせ、泡菜エキスを乳化させたソースで覆った前菜です。中国の弦楽器“琵琶(ビワ)”をイメージし、ロックチャイブを弦に見立てています。海老の香りが口中を満たした後、複雑な味わいが次々と広がり、最後に青山椒の香りがふわっと鼻を抜けて行きます。通常は使われない泡菜のピクルス液を料理に仕立てた、井桁シェフの独創性が冴える一品です。
古鎮(グーチェン)
涼粉(リャンフェン)は、緑豆やえんどう豆粉などをゼリー状に固めたものに、辛いソースをかけて食べる、四川の庶民料理。屋台でカジュアルに食べられる料理も、井桁シェフの手にかかると、とうもろこしエキスのゼリーに黒酢や青唐辛子をきかせたソースをかけた洗練された一品になります。昔の四川の街並みをイメージして、“古鎮”と名付けられた料理です。
“文明(ブンメイ)”。もも肉は軽くスモークをかけてシンプルに。胸肉は韃靼蕎麦粉のクレープで。
低温でじっくり香料煮にした後、スモークした鶏肉が2種類の料理で登場します。一皿目は、もも肉を山椒塩で。しっとりと深い味わいのもも肉は、素材の良さがストレートに伝わってきます。噛み締めるほどに、旨味が口中に広がります。
同じ一羽の鶏の胸肉は、韃靼蕎麦粉(だったんそばこ)のクレープ包みで登場します。味付けは自家製の、四川を代表するソースのひとつ、怪味(ガイウェイ)。怪味とは中国語で“複雑な味”を意味する言葉で、四川料理の基本とされる五味(麻味/山椒のしびれるような味、甘味、酸味、塩味、辛味)がバランスよく混ざったソースです。蕎麦粉のクレープとのバランスの良さが際立ちます。
“松雲(ソンユン)”。ナマコの煮込み料理。
井桁シェフが四川で修行した名店の名物のひとつであるナマコ料理を、井桁シェフ独自の解釈で再構築し進化させた一品。大分の冠地鶏のムースと白レバーを、皮付きの豚すね肉で巻き、豚肉とムール貝をじっくり煮詰めた滋味豊かなソースでナマコとともに煮込んだもの。異質な食材のバランスの良さ、どこまでも奥深い旨味の複雑さに陶然となります。まさに井桁シェフならではの美味。
絶品ソースは原木乾椎茸を使用した蒸しパンにつけて、最後まで堪能できます。
“貴妃(グゥイフェイ)” 。黒鮑の煮込み。
鶏、鴨、豚、金華ハム、干し貝柱、干しするめ、干し牡蠣、干し椎茸、など極上の素材を10時間以上炊いてとったスープで、黒鮑を煮込みます。鶏のスープで煮た冬瓜を加え、黒鮑を煮込んだスープとジョージアのオレンジワインを合わせて煮詰めたソースを合わせます。複雑で奥深い味わいのソース、柔らかな鮑、旨味を全部吸い込んだ冬瓜の三位一体は、食べ終わるのが惜しくなるほどの素晴らしい料理です。
“花徑(ファージン)”。ラムのロースト
ワインを作るときの搾りかすを食べて育つ北海道のワインラムをローストに。ヒレ肉と鞍下肉に自家製のルースイという八角などの香辛料がきいた調味料で下味をつけてじっくりと火入れします。鞍下肉には、腐乳を合わせたマッシュポテト、万願寺唐辛子がのせられ、唐代の詩人杜甫の住居の赤い壁と竹の緑をイメージしているそうです。ラムの焼き汁にクミンや山椒、唐辛子、八角などを合わせたソースが相性抜群。繊細でシルキーな食感のワインラムの美味しさを引き立てています。
“川魂(センコン)。うなぎを使ったオリジナル麺。
締めの一品は、オリジナルレシピの自家製麺。トッピングは、うなぎとへちまです。豆板醤をベースに香辛料を多彩に使ったタレに、喉越しの良い麺がよく絡み、変幻自在な井桁シェフの料理の最後にふさわしい味わい。四川料理らしいスパイシーさながら、他のどこにもない井桁シェフならではの麺料理です。
家庭料理や屋台の味から、日本ではあまり知られていない伝統的な宴席料理まで、四川料理のすべてに精通している井桁良樹シェフ。四川料理は真っ赤で激辛なものばかりではないことを、料理を通じて教えてくれる。中国の歴史や文化にも造詣が深く、一品一品につけられた料理名に込められた背景や思いからも、その知識量の一端がうかがえる。器は井桁良樹シェフがデザインし、中国の名陶景徳鎮窯に特注して作らせたものも多く、料理と器のマリアージュも見所のひとつになっている。伝統的な四川料理を井桁シェフ流に分解し、薬膳の知識なども合わせて再構築した料理の数々は、圧倒的な美味しさ。ワインやノンアルのペアリングがさらに料理を引き立てる。繊細ながらも重層的で深い味わいの井桁料理をぜひ体験しみて!
東京都渋谷区広尾5-19-1 HIROO VILLAGE 1F-2
03-6277-2141(予約受付時間11:00〜15:00)
ディナー営業のみ、18:30より一斉スタート。
日・月休
お任せコースのみ24200円
ワインペアリング15000円、ノンアルコールペアリング8000円
完全予約制(予約は2営業日前まで)
オンライン予約可
16席
禁煙
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