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「サステナビリティ・ファースト」で社会実装する会社〈ユーグレナ〉/シナダユイ

Hanako.tokyo / 2022年10月2日 16時0分

「サステナビリティ・ファースト」で社会実装する会社〈ユーグレナ〉/シナダユイ

ハナコラボ パートナーの中から、SDGsについて知りたい、学びたいと意欲をもった4人が「ハナコラボSDGsレポーターズ」を発足!毎週さまざまなコンテンツをレポートします。第76回は、ナチュラルビューティーハンターとして活躍するシナダユイさんが、〈ユーグレナ〉の広報宣伝部 部長・北見裕介さんに話を伺いました。

〈ユーグレナ〉ができたきっかけ

〈ユーグレナ〉の広報宣伝部 部長・北見裕介さん。



ーー〈ユーグレナ〉と聞くと健康食品のイメージが強いのですが、他はあまり詳しくなく。まずは、どのような会社なのか教えていただけますか。

「〈ユーグレナ〉という会社は社長の出雲 充が創業したのですが、きっかけは元々、彼が国連の職員になろうと思ったからなんです。その中で、インターンシップとして訪れたバングラデシュで目の当たりにしたのは栄養失調に苦しむ人たち。バングラデシュといえば、食うに困る人、飢餓に苦しむ人たちがとても多いイメージでしたが、実際は“栄養の問題”でした」。



ーー栄養が足りなかったんですね。

「ただ、その国では電源も確保ができない。ということは、冷蔵などの環境も担保できない。そうなると、新鮮な物を届けるということが簡単ではない。『豊富な野菜を届けましょう』というのは難しいんです。だからこそ、みんなの中で当たり前になっていない食材や食品を何か探さないといけないと思い、日本に帰ってきたんです」。



ーー現状の課題と強い使命感を感じる体験だったんですね。

「そのときに、ノーベル平和賞を受賞されたモハメド・ユヌス先生に出会い、ソーシャルビジネスという考え方に触れたことで、会社を作り、大きくしていきながら社会問題を解決していくという想いに至りました。当時、出雲は東京大学に通っていたのですが、校内で『何か栄養豊富な食材はないか』と周囲に聞いてまわり、その中で藻の仲間であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)は可能性があるかもと聞きました。ただ、ユーグレナは栄養豊富であるがゆえに、他の微生物などの食料になってしまい、人が食べる食品になるための量を作るのがむずかしい。でも、何が何でも食用の屋外大量培養を成功させるぞと思い、実はまだ培養方法が見つかってないタイミングで起業しました。そのとき作ったのが〈ユーグレナ〉という会社です」。



ーーまだ誰もやってなかったからこそ、生物名「ユーグレナ」を社名にできたんですか?

「そうですね。当時は色々な大学の先生たちがチャレンジしている中で不可能だと言われていました。その後、ユーグレナが育ちやすい温暖な気候の中でやれば成功するという仮説をもち、チャレンジし続けた結果、屋外での大量培養という技術を石垣島で初めて確立しました」。



ーー石垣島が好きだという理由(私の浅はかな思い込み!)ではなかったんですね。さすが日本最難関大学の問題解決能力です。

「どちらかというと、そんなにアウトドアなタイプではなかったと思いますが(笑)。気候が適していたのと藻類を培養するノウハウとスペシャリストたちが既にいたので、協力して成功させることができました。一定量生産できるようになってから、サプリメントや食品を事業化していきました」。

左から、からだにユーグレナ「ふりかけない理由がないふりかけ」「トロピカルフルーツオレ カロリーオフ」「やさしいフルーツオレパウダー」。

「ユーグレナGENKIプログラム」対象商品記載ロゴ。



ーー食品という形になり、ソーシャルビジネスへの第一歩が始まったんですね。

「まだ少量しか出来ていない食品をバングラデシュの人たちに買っていただくのはむずかしいので、まずは日本国内でこの栄養をみなさまにお届けし、売り上げの一部をバングラデシュに支援するという『ユーグレナGENKIプログラム』を始めました」。



ーーなるほど。最初はクッキーを届けていましたが、最近はふりかけも出たとお聞きしました。

「そうなんです。日本の売り上げの一部から、バングラデシュの小学校の子どもにクッキーを配っているのですが、そうすることで学校に行く理由ができる。親からすると将来、農業しかさせないのであれば学校に行かせる必要はありませんが、給食(クッキー)があれば行せることができる。そうなると識字率が上がり、子どもたちは良い学校に進学できたり職に付ける可能性が出てきて、経済が発展します。ただ、クッキーは2つの課題があり、1つ目はクッキーという形状上、1日2食とか食べる気になれない」。



ーーそうですね...。

「2つ目は、クッキーはあくまで日本の売り上げの一部からで、どれだけ売ったとしても先進国から途上国にという形が変わらず、例えば、先進国の経済状況が悪化したら途上国への支援が止まってしまうのでサステナブルではない。一方で、最近開始したふりかけは現地で作られ、現地で食される。現地でビジネスを作ることで、さまざまな企業から補助が入ったりしながらビジネスを大きくし、ソーシャルビジネスの新たな形を作りました」。



ーーそこまで考えられてるんですね。SDGsの1.貧困、2.飢餓、3.保険、4.教育などたくさん当てはまりますね。ちなみに藻の味ってどんなものでしょう。

「海苔やワカメなどの仲間で栄養価が高く、結構濃い味ではあるのですが『バングラデシュでも日本でもおいしくないことには日常的にならないよね』ということで、2021年に当社のコーポレートシェフに就任した、ミシュランガイド東京2020~2022一つ星掲載店「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏と共同開発し、トロピカルフルーツオレなど3商品を発表しました。やさしい甘さで飲みやすいですよ」。

石油に代わるバイオ燃料にも!



ーー〈ユーグレナ〉のジェット機が飛んだという話題を見聞きして1番気になっています。藻(ユーグレナ)が食べ物になり、“バイオ燃料”にもなるなんて!エネルギー問題を解決できるようになったらすごいのではないか、ユーグレナは救世主になりうるんのではないかと勝手に期待しています(笑)。

「多分、いま1番〈ユーグレナ〉という会社を象徴する話だと思います。〈ユーグレナ〉は2020年にミドリムシの会社からアップデートして『サステナビリティ・ファースト』というフィロソフィーに変えました。その年に変えたのも、バイオ燃料のできること、できないことをきちんとお伝えしていくため。その中で、私たちは2020年4月にバイオ燃料のディーゼル、車でいう軽油相当のものを出荷し始めました。いままで普通に石油で走っていた車に入れて、そのまま走らせることができるんです」。



ーーえ!それってすごくないですか。

「いま普通の乗用車って、電気自動車・水素自動車など別の代替手段は見つかっていますが、例えばバスや大きな船は代替手段が見つかっていないんです。電気になると充電する頻度が高くなってしまう。その分野でニーズが高まっているのがバイオディーゼルです。もう一つがジェット燃料で、2021年6月に初めて空に飛ばしたのですが、これも昨日まで普通に飛んでいた飛行機に給油可能なASTMというアメリカの規格に沿ったものになります。もう5回以上飛ばしているんです」。



ーー電気自動車や水素みたいにチャージするためのステーションとかも作らなくていいですね。

「『サステナビリティ・ファースト』の話をさせてもらった理由は 、原料としてユーグレナの油脂と、使用済みの食用油の2種類を大きく使っているからです。使用済みの食用油100%で走らせるバイオ燃料を作る技術はヨーロッパで結構発達しています。ただ、藻類を使ったバイオ燃料はまだ未発達の分野で、当初藻類だけのバイオ燃料を私たちもチャレンジしていましたが、藻類だけにこだわりすぎて2030年に初めて出来たとしたらSDGsの達成年を超えてしまう。はやく作らなければいけないと考えて、いまある原材料の2つを複合して作ることに踏み切りました。バイオ燃料をなぜ〈ユーグレナ〉が国産で最初に出せているかは、こだわりを止めたから。1番、大事なことは作り、使える状況をつくることですよね。作って世に出さないと誰も使い始めない」。



ーーまずは世の中に送りだしたんですね。

「こういったイノベーションは日本にいっぱいあると思いますが、それが当たり前にならないと使える場面がなく、日常生活に浸透していかない。まずは、使える状態を作ることを優先にしました。実際、使ってみると『ああ、大丈夫なんだ』と思い、みなさんが色々なことにチャレンジし始めるので」。

広がり続けるユーグレナの力

微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)、二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す「光合成」によって成長。動物と植物の両方の性質を備えており、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素が含まれています。

〈lavita ORGANICS(ラビタ オーガニクス)〉。

〈CONC(コンク)〉。



ーー以前、牛の餌の研究で「ユーグレナを食べたら排出するメタンの量が減った」と新聞で読み、ユーグレナは色々な可能性を秘めてるなと。他にも、サステナビリティの分野で進めてることはありますか?

「飼料の業界でいうと、そのほかにも養殖が得意な会社にパートナーとして入ってもらいながら、三重県多気町で『多気サステナブル・サーモン』にチャレンジしました。佐賀県では農業をしています。化粧品も事業になっています」。



ーーそうですよね。実は今回話を伺ったきっかけは、〈ユーグレナ〉が発売したオーガニックコスメブランド〈lavita ORGANICS(ラビタ オーガニクス)〉の存在を知り、私も一気に距離感が縮まった気がしたからなんです。

「ユーグレナの研究開発は、培養する方法がわかってくると出来ることが一気に開けてくるんですよ。一つは食品としての利用。エキス、美容成分を抜き出すことができたのが化粧品。油分の部分をワックスエステルとして抽出してやるとバイオ燃料の原料になるし、さらにそれの廃棄する部分、バイオ燃料にしなかった部分とかを使えば農業で使えるみたいなことも始まってますし応用が一気に広がりだしたんです」。



ーーだから最近、よく見るようになったんですね。なぜ化粧品?と思っていました。

「〈CONC(コンク)〉という美容液も出していまして、これは〈lavita ORGANICS(ラビタ オーガニクス)〉より少し前に出したのですが、〈インテグリカルチャー〉さんという〈ユーグレナ〉も出資している細胞培養技術の研究に特化したスタートアップ企業なんです。〈ユーグレナ〉がスタートアップ企業から一定の規模まで事業を成長させることに成功したのであれば、そのノウハウを協業していくことで、他の企業も大きくなっていきます。“スタートアップが元気になっていくと、国が元気になっていく”という考え方で、技術力の支援をするファンドも作っています」。



ーーなるほど。

「イノベーションが社会実装(得られた研究成果を社会問題解決のために応用、展開すること)されないままになってしまうともったいないので、とにかく社会実装させていく。使える状態を作っていくことを大切にしています」。



ーー実におもしろいですね!ありがとうございました。

〈ユーグレナ〉

https://www.euglena.jp/

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