歴史を紐解き、道具を買う楽しみも。京都の茶時間、温故知新 (後編)
Hanako.tokyo / 2022年10月4日 16時0分
革新の繰り返しで伝統が育まれてきた京都では、茶の世界も常に新しいムーブメントが。老舗から最新店までを巡り、お茶と共にある豊かな時間を手に入れたい。後編では、シングルオリジンに注目するお茶をいただけるお店や、お茶の道具を求め、旅の目的にしたい2つのスポットを紹介します。9月28日(水)発売Hanako1213号「新しいニッポンのお茶。」特集よりお届け。
1.〈茶室/茶藝室 池半〉何煎ものお茶を味わいつつ、道具やしつらえを愛でる楽しみ。
茶葉は煎茶の深蒸し、お菓子は水まんじゅうと黒豆しぼり。
抹茶スイーツが一世を風靡したのはずいぶん昔のこと。近頃はコーヒー同様にお茶もシングルオリジンが注目される時代になってきた。やぶきた、おくみどり、ごこうなどの品種はもちろん、生産者による味の違いを楽しむのが主流になりつつある。
鴨川畔にある〈茶室/茶藝室 池半〉は、日本と台湾の茶農家を訪ねて手に入れた種類豊富な茶葉を、台湾茶のように何煎も杯を重ねて味わうスタイルを提案する。店主夫妻がコレクションしてきた茶道具を使い、味の変化を楽しみながら味わうひとときは、ふっと日常を忘れさせる贅沢さ。お茶そのものはもちろん、お茶と共にある時間の豊かさを伝えてくれる。いかにも京都らしい鴨川の眺めと共に、心ゆくまで堪能したい。
茶壺と呼ばれる急須と、煎れたお茶の味を均一にする茶海は萩焼の作家・坂倉正紘さんのもの。茶壺の下の茶盤は、瀬戸の窯元だった店主・小嶋万太郎さんの祖先のもの。
窓の外に鴨川が広がる2階。壁紙が和紙の1階と、2つの空間がある。
〈茶室/茶藝室 池半〉/ちゃしつ ちゃげいしつ いけはん
杯を重ねるごとに変化する味わいを知ってほしいと、台湾の茶藝館のスタイルを取り入れた茶の空間。好きな茶葉3種とお菓子2種を選び、コース仕立てで味わう。お茶の味わいはもちろん、骨董から現代作家まで織り交ぜた道具づかいにも心惹かれる。
住所:京都府京都市下京区都市町143-11│地図
営業時間:10:00〜16:00(90分間)
定休日:水、木、金曜
※HPからの完全予約制。1組4名までの貸切。
2.〈SHUHARI KYOTO〉100%和束産の宇治抹茶を、シングルオリジンで提供。
シングルオリジンの抹茶ラテ590円。
ティースタンドもただ売るだけではない店が増えてきた。実は抹茶は茶舗の味に仕立てるためブレンドが一般的。宇治茶の産地・和束(わづか)で育てられる抹茶をシングルオリジンで扱い、薄茶や抹茶ラテで楽しませてくれるのが〈SHUHARI KYOTO〉だ。茶葉とじっくり向き合う、そんなスタイルが今、京都を席巻している。
アイスクリーム専門店〈Picaro eis〉(ピカロ アイス)による「クラフトアイス ダブル 白い抹茶」650円。
路地奥にある江戸時代をイメージしたストリート。
〈SHUHARI KYOTO〉/シュハリ キョウト
宇治抹茶の生産地として約800年の歴史を持つ和束町。そこで育てられる抹茶本来の味を伝えたいと店主の喜多真也さん。茶農家と共に単一品種の抹茶を作り上げ、広めるべくスタンドを開いた。抹茶本来の甘みを味わってほしいと、砂糖を加えないラテが潔い。
住所:京都府京都市上京区東西俵屋町144西陣ろおじ│地図
TEL:050-3702-1981
営業時間:13:00〜17:00
定休日:月〜金曜
※10月初旬からはイートインスペースも登場。
器探しの街・京都で、 老舗と新定番の蚤の市へ。
都をどりの団子皿など、京都らしい骨董探しも楽しめる。
京都ではつい財布の紐が緩むというのは、器好きからよく聞く話。都だった長い歴史のなかで培われた美意識は現代の店主にも受け継がれ、そのセンスに魅了されてしまうのだ。点在する店々を巡りやすいという、コンパクトな街ならではの魅力も相まって、誘惑だらけの街ともいえる。
岡崎公園で毎月ほぼ10日に開かれる「平安蚤の市」には150ほどの店が出る。今どきの軽やかな古道具店から昔ながらの骨董店までが並ぶ。早い時間には買い付ける古道具店の店主に遭遇することもしばしばで、その充実ぶりが窺える。
輸出用食器を中心とするデッドストックを扱う店は何軒かあって、いつでも人気。
気に入った形があれば、すぐに手に入れたい急須たち。
「平安蚤の市」
広々とした抜け感が心地いい岡崎公園で2019年に始まった蚤の市は、弘法さん・天神さんに負けない人気を誇る。急須や煎茶碗など煎茶道具はもちろん、豆皿を茶托に見立てるなど遊び心での宝探しも楽しい時間。均一価格のダンボール箱なども見逃さずに。
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町ほか 岡崎公園 平安神宮前広場
開催日時:毎月ほぼ10日、9:00〜16:00
雨天・荒天中止。詳細はHPから。
〈田村莱山〉120年を超えて今に続く、老舗で茶道具を探す。
右・木村宜正 宝瓶16,500円、下・木村龍生 焼締急須7,700円、上・市岡和憲 白瓷急須22,000円。小ぶりな急須は人気で、一期一会の場合も多い。
五条坂〈田村萊山〉は明治初期に創業し、料理店の器を中心に扱ってきた老舗。「常に扱う作家は20〜30人ほど。京焼の繊細な仕事を大切にする、京都の作家さんを扱います」と5代目の田村健夫さん。中国茶や台湾茶が人気の近頃は、煎茶のための道具を見立てる人も増えている。急須を茶壺に、煎茶碗を茶杯に。意外と探すのが難しい、京都の作家ものが充実していて心湧く存在だ。
ほんのり光が透けるほど、薄く仕立てられた市岡和憲 白瓷煎茶碗各4,400円。
市岡和憲 青瓷刻紋急須30,800円。
北側2軒隣に〈河井寬次郎記念館〉がある。
〈田村莱山〉/たむららいざん
〈河井寬次郎記念館〉の南にあり、「美術割烹陶器」と掲げているが個人での利用も可能。「清水は原料の産地ではないので、白磁や青磁、染付、赤絵など、作風は作家それぞれに違って多彩です。けれど量産せずに一つずつ手仕事で作り上げる作品こそが、清水焼」と田村さん。上質な器を探しに訪ねたい。
住所:京都府京都市東山区五条坂八幡前南入ル鐘鋳町394│地図
TEL:075-561-2626
営業時間:9:30〜18:00
定休日:日、祝
(Hanako1213号掲載/photo:Yoshiko Watanabe text:Mako Yamato)
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