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寿木けい×富士華名 大人の茶会。

Hanako.tokyo / 2022年10月27日 13時52分

寿木けい×富士華名 大人の茶会。

最近、茶道を始めてお茶に目覚めたという寿木けいさんが、以前から交流のある茶人の富士華名(ふじばな)さんの茶寮を訪問。お茶をしながらゆるりとした時間を過ごしました。9月28日(水)発売Hanako1213号「新しいニッポンのお茶。」特集よりお届けします。

お茶を通して語る、いまのこと、これからのこと。

富士華名さんのお茶会は小さな茶杯で1人3〜4煎ずついただくスタイル。同じ茶葉でも飲むたびに味変する。使用している水は「高賀の森水 奥長良川名水」。

8月某日。富士華名さんの茶寮へ訪れたのは、茶道をきっかけにお茶に目覚めたという寿木けいさん。お茶を通じてゆるりとしたひとときを過ごす、大人の茶会が開かれました。

(右)

寿木けい(エッセイスト・料理家)
すずき・けい/富山県出身。出版社勤務を経て執筆活動を開始。著書は『泣いてちゃごはんに遅れるよ』『土を編む日々』など多数。本誌にて「ひんぴんさんになりたくて」を連載中。今年山梨に移住し、古家をリノベーション中。

(左)

富士華名(茶人)
ふじ・ばな/学生時代にお茶の魅力にハマり、中国茶、台湾茶、日本茶を20年以上にわたり研究分析している。主宰する〈富士華名茶寮研究所〉では定期的にレッスンを開催。初心者にもわかりやすく、お茶の楽しさを教えてくれる。

富士さんの茶道具はアイデア満載。

建水は茶碗を清めた湯を捨てる器。見た目にも楽しくなるような工夫を。もらいものの岩茶の岩は茶さじや茶則置きに。



寿木けい(以下、寿木):富士華名さんのところに来ると、お茶の概念が変わるし、お茶の知識も増えるのが楽しい。……この器ってなあに?


富士華名(以下、富士):これは建水(けんすい)。ガラス作家さんのコップがちょうどいい大きさだったので、川で拾ってきた石を入れて。石は、お湯をこぼすときに跳ねないように。


寿木:いいアイデア! 建水って茶道具の中でも地味な存在だけど、こうするとすっごくおしゃれ。


富士:お茶を始めるときって、みなさんお道具の心配をするんです。どうしてもお金がかかるものなので。だから、こんなふうに自分流にアレンジしていいんですよって。あと、茶さじも自分でよく作る。竹や梅の木、拾ってきた流木を削ったり。


寿木:手先が器用なんですね。


富士:ふふふ(笑)。お茶、どうぞ。


寿木:いただきます。


富士:これは白茶。茶葉が散茶なので、水出しして冷たくしました。


寿木:中国茶ですか?


富士:雲南省。大雪山の山奥で摘んだ野生のお茶。フルーティな味わいが特徴なんです。


寿木:ほんとだ、果物の味。ライチやスイカみたいな。おいしい!


富士:カクテルなどのアレンジティーにもよく使います。これは野生のお茶なので開封したてがおいしいけれど、中国茶って開封してしばらく置いておくと発酵し味わい深くなるものが多いんです。日本人は「劣化する」と言うけれど、中国では「熟成」。今日用意している凍頂茶も30年もの。おじいちゃんの代から受け継ぎ、何年かに1回焙煎したりしながら熟成させているもので。


寿木:すごい! ワインみたい!


富士:25年もののヴィンテージ普洱(プーアール)茶とかもあるの。それこそワインなんです。水色(すいしょく)もルビーを砕いてお茶にしたのかと思うほど美しくて。


寿木:飲む宝石ですね。

お茶は淹れるたびに味が変わる。

一煎淹れるごとに茶葉をひっくり返し空気に触れさせ、葉っぱを開かせる。「こうすれば10煎くらいは全然いけちゃうんです」



富士:次は、岐阜の和紅茶。去年摘んで炭火で焙煎したものを、熟成させました。台湾風に蓋碗(がいわん)で淹れますね。


寿木:富士さんのお茶の淹れ方は美しくて、惚れ惚れします。


富士:中国や台湾ってダイナミックにお茶を淹れるけど、日本人の場合、しとやかなほうが美しい。例えば、日本舞踊って派手に動かず、指先や目線で表現する。私も踊りをやるので、そういう仕草はいいなって。


寿木:どんな踊りをやってるの?


富士:フラダンス。もう10年やってる。だから、顔の角度、目の伏せ方、姿勢、フラの動きを結構意識してるんです、実は。茶杯もこうして受け皿ごと手渡しするのが好き。指先がちょっと触れ合ってつながる感じがいいなって。和紅茶、どうぞ。


寿木:わ、すごくおいしい!


富士:スープみたいじゃない?


寿木:旨味がある。でも匂いは紅茶。富士さんはカクテルも得意だけど、これを使ってカクテルを作るなら?


富士:焼酎で割るのがいいかな。


寿木:いい! 絶対おいしい!

鉄瓶は毎日、機嫌が違うんです。

富士さん愛用の南部鉄瓶。湯はこれで沸かす。その日の天気、気温、湿度、さまざまな条件で鉄の「機嫌」は変わるそう。「心を読むのが難しい」と富士さん。



富士:じゃあ次は、キラキラしたアイドル茶、鳳凰単叢(ほうおうたんそう)。なぜキラキラかというと、樹齢10年の若い茶木の葉っぱだから、エネルギッシュな味なんです。(茶葉にお湯を注ぎつつ)うん、いい。飲まなくてもわかる。お湯もいい。鉄瓶の機嫌もいい。


寿木:鉄瓶がご機嫌(笑)。


富士:鉄って気分屋で、結構わがまま。なかなか心が通じないんです。


寿木:確かに、ほかの道具とは違って人に合わせてくれなさそう。


富士:以前、お茶のレッスンにお坊さんがやってきて。シャンシャン音が鳴る錫杖(しゃくじょう)を持ってて、お茶を淹れたら、それを突然鳴らしたんです。「え、この部屋なんか居ます?」って聞いたら、「いえ、茶を飲むときに鳴らすんです」と。いい音色だなと思ったら、鉄瓶がうっとりしてたの! 鉄同士で共感して。うちに来て半年、なかなか心が通じなかったのに。見た目もセクシーになって、味もまろやかにおいしくなって。


寿木:富士さんは直感がするどい?


富士:お化けは見ないけど、宇宙人はある(笑)。宇宙人って駅に結構いて。よく見たの、20代の頃に。


寿木:それはどこの駅?


富士:新宿駅。駅でしか見なかった。人のフリをした宇宙人で足が3本あって。隠せてない! って(笑)。どうですか? アイドルの味は。


寿木:とってもいい匂いがするし、味が若くてフレッシュ。やっぱり樹齢は味に関係するんですか?


富士:します。樹齢が高いほうがコクが深くなる。根が深く張るので、若木が届かない養分を摂れるんです。


寿木:でも、育っていくことで、失ってしまうものもありますよね。


富士:私もキラキラしてたから宇宙人を見たのかしら(笑)。

オリジナルティーも開発中。

桶柑(たんかん)にお茶をつめて熟成させるなどいろん なオリジナルティーを開発している富士さん。唐辛子も直感でひらめいた。台湾の凍頂茶と相性がいいそう。



富士:では、どんどんいきます。次は、台湾の凍頂烏龍茶に唐辛子をブレンドしたオリジナルティー。唐辛子をお茶にしたらどうかなと思って作りました。


寿木:唐辛子、お味噌汁には入れたりするけれど。そうか、お茶かあ!


富士:お味噌汁にはね、お茶を入れるとおいしい。あまったお茶をちょっとだけ垂らす。コクがでるんです。


寿木:以前、ハマグリだしでラーメンを作って。でも、おだしの味がなにか足りない。たまたまそのとき、ほうじ茶で豚肉を煮ていたので、ほうじ茶にハマグリを入れてみたんです。すると、すごくおいしいスープになった。お茶の力はすごいなって。


富士:そういう場合、普洱(ロンジン)茶もいいと思う。あと、龍井茶のパスタも。


寿木:パスタ? どう入れるの? 


富士:茶葉を野菜みたいに入れるだけ。龍井は茶木の芽を摘んだお茶なので、お浸しとして食べたりするのもいい。あと、カニや貝を大紅袍(だいこうほう)という岩茶で蒸すと最高ですよ。


寿木:お茶はやっぱり奥が深い!


富士:じゃあ唐辛子茶をどうぞ。


寿木:わ、スパイシーな香り。そして……おもしろい味! カッとして、体がすごくあったまる。


富士:これを使ったハイボールもおいしいんです。炭酸とウィスキーで。


寿木:めっちゃいい!

寿木さんが持参した甲府の名物菓子「かすてら紅梅」。素朴な味がクセになる。

竹川菓子店の甘い小麦粉せんべい「紅梅」は、90代のおばあちゃんが毎朝焼く。富士さんお手製の梅のシロップ漬けとともに。

大人のお茶会の最後はカクテルを。

富士さんは「マティスの絵のようなカクテルを作りたくて」と、さまざまなお茶カクテルを考案。「このグラスはバザーで購入。1つ50円でした」



富士:じゃあ、最後はカクテルを。白茶に桃とパッションフルーツの皮を入れ、リキュールを少し。カサブランカの街をイメージしました。


寿木:私、食の仕事っておばあちゃんになってもできるのがいいなって、改めて思うんです。富士さんの今後はどんなことを考えてますか?


富士:老人になったら老人ホームでフラを教えようとは思ってる(笑)。でも、目標はないんです。茶人になったのも、たまたま中国茶の魅力に惹かれてそうなっただけ。いつも流れに身を任せてきた。だから目標は、人生を生き抜く。それだけですね。

photo:Shinsaku Yasujima text:Izumi Karashima

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