「シンプルだからこそむずかしい、トマトと卵の炒め物」|真佑のお弁当奮闘日記
Hanako.tokyo / 2022年11月17日 12時0分
料理研究家のウー・ウェンさんを義母にもち、ウー・ウェンさんのクッキングサロンでアシスタントを務める井上真佑さん。ウー・ウェンさんとの日々の仕事と著書から学び、義母としてのウー・ウェンさんのアドバイスを受けながら、井上さん自身の工夫を加えて作ったお弁当の中身とは?
私とお弁当箱
私がこの連載のお話をいただいたとき、1番に「人に見せられるようなお弁当なんて作っていない!」と思いました。お子さんや旦那さんなど、人に渡す、人に見られる前提のお弁当は見映えを気にするかと思いますが(私もデートのときや、姪っ子のお弁当を作るときは気合いを入れます)、どうしても「自分のためだけ」「誰にも見られない」「日々のお弁当」となると、やる気も気合いもおきません(この想いに味方がいることを祈ります)。
いままでは、高校生のときから使っている、食べ終わったら重ねてコンパクトに持ち帰れる年季の入ったパステルカラーのお弁当箱に、適当にぼん!ぼん!とおかずとご飯を詰めていました。しかし、どんなに頑張って撮っても食欲がわかない見た目。
どうしようかな、と悩んでいたところに「私が大好きな作家・赤木明登さんにお弁当箱を作っていただけるようにお願いしましょう」と先生(ウー・ウェンさん)。実は先生、「私はお金持ちではないけど、お皿持ちなんですよ」と宣言するほど器が大好き。中国の器はもちろん、作家さんの物など色々持っています。
「わーい!」とうれしい反面、実は器がどんなにいいものでも、中身が私の料理だからなあ…と不安になっていました。
作っていただいたお弁当箱。作ってくださったのは赤木明登さん。
この子を見ていると、なんだかきゅっと抱きしめたくなります。
ドキドキしながら届いたお弁当箱にストンとおかずを入れてみたら、なんとも美人!器を変えるだけでこんなに変わるのか、と驚き。なんだか食欲も違う。
実は私、赤木さんの作品はこれが初めてではなく、以前先生から結婚祝いに、と赤木さんの赤と黒の三つ椀をいただき愛用しています。お椀に汁物をいれ、手に持って飲むととてもしっくりきて温かみを感じます。
漆器は扱いづらいのかな?と思っていましたが赤木さんのぬりものは日常使いに、と考えられているので、難しい手入れはなく私みたいな初心者には助かります。
馴染みのないものは自分で選ばないことが多いですが、飛び込んでみると意外としっくりくるものですね。器の世界は奥深く、沼だと聞いているので少しずつ勉強していきたいなと思います。
今月のお弁当はこちら!
【1】鶏団子スープ、玄米、キムチ、トマト、梨。
【2】豚キムチ、ゆで卵、黒米入りご飯、梨入り豆乳スープ。
【3】鶏肉のほったらかし焼き、かぼちゃ、トマトと卵のスープ、白米。
【4】牛肉のクミン炒め、ゆで卵、蒸し小芋、カブの葉と卵とわかめのスープ、黒米入りご飯。
【5】豚の薄切り肉の酢豚、きのこのスープ、ブロッコリー、白米。
【1】鶏団子スープは思っている以上に簡単で、しっかり味もついているので満足感が高いです。
【2】元々豆乳はあまり好きではなかったのですが、先生の豆乳スープは大好き!しっかりと、くつくつ煮るのがポイントです。すりおろした梨が入っています。
【3】私の好きなお肉ランキングでは残念ながら最下位の鶏肉。理由は鶏鶏しい味とぱさぱさ感。でもこの鶏肉はとってもおいしくて、ポイントは一晩塩麹につけ込むこと。苦手なぱさぱさ感はなくなり、味もしっかりついているのが最高。皮目を下にしてじゅわじゅわと焼き、脂が出てきたらローズマリーやタイムなどの香草を置いて蓋をして10分くらい放置。簡単!
【4】私はパクチーが苦手なのですが、この牛肉のクミン炒めは、パクチーが唯一無二で必要不可欠な存在であることを初めて感じた思い出の1品です。小芋は先生からそのまま蒸すと剥きやすいしおいしいと教えてもらい作ったもの。想像以上においしすぎました。塩、胡椒、オリーブオイルでいただきました。
【5】きのこの酸辣湯スープは作りやすくておいしくて大好きなスープ。鶏ガラスープに冷蔵庫にあるきのこをぽんぽん入れ、黒酢と醤油と塩、そして胡椒で味を整えるのみ!日によって卵を入れてみたり。豚肉と酢、揚げ物が大好きな私にとって酢豚は最高そのものなのですが、塊肉を切り、下味を付け、揚げて煮絡めるのは腰が重いしカロリーが気になる…と思っていました。そんなときに先生の黒酢のレシピ本に薄切り肉の酢豚があるのを発見。なんと揚げではなく茹で。早速、作ってみたら簡単でおいしかったです。定番になりそう。
今月の問題作「トマトと卵の炒め物」
トマトと卵の炒め物、豚しゃぶ、黒米のお粥、ヨーグルト+枸杞の実。
先生はよく「手軽に作れて自分を助けてくれる」「子供も大人も大好きなメニュー」と紹介しています。確かに、トマトと卵とにんにくさえあれば作れる簡単レシピ。おかずとしてはもちろん、ご飯の上にのせて丼にしてもおいしいという何とも罪深きメニューです。しかし行程や準備が少ないレシピだからこそ腕が試されるこのメニュー。私がレシピ通りに作ってみるといつも卵がぺたぺた。
これでもうまくなりました。
片栗粉がダマになっています。
先生の卵は中身がぎっしりなのに軽やかで、いつもぺろりと食べてしまいます。卵の厚みがポイントだと思うのですがまだまだ修行が必要そうです。そして、そして、トマトと卵の一体感が足りない。片栗粉がいつもダマになってしまう。トマトの水分が出るタイミングの見極めや絡め方に問題があると分析しましたが、実際のところはわからず。先生の炒め物は本には書ききれない、細かいポイントがたくさんあるので、しっかり観察して吸収しなくてはいけないなと思いました。
今月の義母とのひとコマ「平井かずみさんのお花教室」
先生からのご提案で、定期的に2人で色々な習い事をしています。今月はお花の教室に行ってきましたので、そのときのひとコマを。
お仕事でご縁があった平井かずみさんの教室に何度か通わせていただいています。平井先生のお教室では自然のお花を使い、自然に、気負わずに、リラックスしてお花を生けてみましょうという素敵な考え方。また生徒さんも優しくて困っていると助けてくださる素敵な方ばかり。最初は緊張していましたが、平井先生のお人柄とお教室全体のあたたかい雰囲気のおかげで、最近はのびのびとお花を生けています。
先生はいつも生けるのが早く、「そんなに触ってもね」と。いつも「そんなかちゃかちゃ触らない!」と言っている先生の料理スタイルと同じで、余計なことはしない、素材を活かすという考え方が根本にあるのだなと感じました。
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