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淡路町『菓子と老舗の三角地帯』/高野ユリカ 第8回 だれかの住む街と菓子

Hanako.tokyo / 2022年12月14日 15時0分

淡路町『菓子と老舗の三角地帯』/高野ユリカ 第8回 だれかの住む街と菓子

写真家の高野ユリカさんが写真と文で綴る新連載。街や建築についてのお仕事をフィールドワークとする高野さんが、街を歩いて見つけたスイーツを切り口に“街と菓子”を語ります。

三角地帯の角にある建物。三角 を意識せざるを得なかった設計 者の思いが見える。三角に反射 して集まる光のパワー…?

昌平橋からは真上を通る総武線と中央線、さらには奥の聖橋の下を通る丸ノ内線までクロスして見える奥行き感。神田川に映る街の風景綺麗。

三角には不思議な魅力がある。ピラミッドだったり、宗教的・宇宙的モチーフ、注意や警告の標識…単純なのに美しくて奥深くて、人間が三角形に惹かれてしまうのはよくわかる。三角地帯と呼ばれているような場所は、東京だとお酒好きが集まるエリアのイメージだけれど、淡路町の三角地帯は、菓子好きの興奮が止まらない三角。

〈近江屋洋菓子店〉明治創業の老舗洋菓子店。東京都千代田区神田淡路町2-4 03-3251-1088

淡路町を歩いていると、ビジネス街なのでサラリーマンとよくすれ違う。スーツを着たおじさまが、〈近江屋洋菓子店〉の袋を片手に持っているのを見ると、あの白い袋の箱の中身は苺の載ったショートケーキだろうか、それとも桃のケーキかな、カップアイス、焼き菓子…? なんて、考えるだけで胸がいっぱい。店名が美しく入った重めのガラスのドアをゆっくり開けると、真っ青な天井にシックな木目調の壁面、手ぎわよく注文を受ける青と白の正装を纏った店員さんたちがテキパキと動き回っている。入った瞬間に全部が美しくて「これが近江屋洋菓子店ですよ」と体現されていて、夢が売られているみたいだ。

季節の味を詰め込 んだフルーツポンチ、アップルパイなど、懐かしくも丁寧な品々にファン多数。

ガラスケースに綺麗に並べられたケーキやフルーツポンチの瓶たちに、逆にこちらが見られているような気持ちになって背筋が伸びる。断面が一際美しいシャインマスカットのタルトを購入。黄緑色の大きな粒の断面が、透明なゼラチンで固められていて宝石のよう。どこから食べようか一瞬迷ってしまうけれど、三角のものは先端からって決めてる。シャインマスカットの瑞々しい甘さと、しっとりしたタルトの生地がよく合ってすごくおいしい。

〈竹むら〉東京都の歴史的建造物にも指定されている見事な店舗も必見の、老舗甘味処。東京都千代田区神田須田町1-19 03-3251-2328

連雀町と呼ばれる三角地帯の一画は奇跡的に戦災を逃れたそうで、創業百年を超える味の老舗たち(蕎麦屋、あんこう鍋専門店、鳥すき屋…)が古い街並みを残していて、歩きながらいろいろな老舗の看板を見るのも楽しい。昭和五年創業の〈竹むら〉はお蕎麦屋さんのような木造の建物の甘味屋さん。

名物揚げまんじゅうは1人前(2個)520円。テイクアウトも可能。

雰囲気のいい店内で注文すると、あつあつの揚げたてがお皿に載って出てくる揚げまんじゅう。天ぷらみたいなじゅわっとサクサクした衣の中から、ふわふわの白い生地に包まれた甘い餡あん子こがほろっと出てきて罪の味。おかず!コロッケやメンチと同じ立ち位置。ここでも一人、スーツを着たサラリーマンの方が、店内でサクッとあんみつを食べた後、お土産に和柄の化粧箱に入った揚げまんじゅうを買って行った。淡路町には菓子好きの井之頭五郎さん(『孤独のグルメ』)のような男性をたくさん見かけるね。

都内初の台湾伝統豆花専門店として誕生。防腐剤や香料を使わず、丁寧に作られた豆花に、好きなトッピングを添えて。

〈東京豆花工房〉(とうきょうとうふぁこうぼう)東京都千代田区神田須田町1-19 03-6885-1910

〈東京豆花工房〉は三角地帯の中でも新しいお店。本場の味を再現するために台湾人の奥さんを持つ店主が台湾で修業をして完成させた東京豆花。温かいと冷たいが選べて、その場で好みのトッピングを聞いて入れてくれるのが嬉しい。赤米がもっちもちでおいしくて、温かい豆花は朝ごはん感ありますよね。黒蜜の効いたシロップは綺麗で透き通っていてやさしい味。テイクアウト豆花もあるみたいで、手土産に豆花は持って行ったことないけれど、今度はそれもいいな。帰りは昌平橋を通って神田川を眺めつつ、秋葉原方面へ抜ける。こんな狭い三角の中で、菓子や老舗めぐりの完璧な散歩ができてしまう。淡路町の三角のすごさ。

写真と文 高野ユリカ

こうの・ゆりか/写真家。新潟生まれ。ホンマタカシ氏のアシスタントを経て、2019年に独立。建築、環境、街などの分野を中心に活動。 https://www.yurikakono.com/

No. 1215

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