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児玉雨子のきょうも何かを刻みたくて|Menu #10

Hanako.tokyo / 2023年3月17日 16時15分

児玉雨子のきょうも何かを刻みたくて|Menu #10

「生きること」とは「食べること」。うれしいときも、落ち込んだときも、いそがしい日も、なにもない日も、人間、お腹だけは空くのです。そしてあり合わせのものでちゃっちゃと作ったごはんのほうがなぜか心に染みわたる。作詞家であり作家の児玉雨子さんが書く日々のできごととズボラ飯のこと。

大根とにんじんを食べたい分だけすりおろし、越前そばをゆがく。おろした大根とにんじん、かつお節、とろろ昆布、そしてタンパク質も摂りたかったので、おみやげのサバ味噌缶も開けてトッピング。

ケアレスミス、再び。越前そばに救われる。

福井県のあわら温泉に行ってきた。コロナ禍が始まってから初の旅行!旅行当日の朝までできるだけ仕事を済ませて、コンセントを抜く時間がなかったので、ブレーカーを落としてから空港へ。あわら温泉に着いてから、二泊三日の間にふやけるほど温泉に浸かり、越前そばや越前がに、ご当地B級グルメのソースカツ丼を食べ、少し足を延ばした東尋坊の岸壁に圧倒され、楽しい温泉・観光旅行になった。
 
さて、そんな旅を終えて自宅に帰ってくると、キッチンから少し変な臭いがする。そういえば、旅行へ行く前に水回りを掃除してなかったかもしれない……と、排水溝に泡ハイターを振り、簡単な荷解きをして、その日の夜はお世話になっているアンジュルムというアイドルグループの日本武道館公演を観て、外で夕食を済ませた。
 
翌朝、帰ってきてすぐにハイターで排水溝を掃除したはずのキッチンから、まだこもった臭いがする。旅行中はたくさん食べたので、胃を休めるためバナナジュースを作ろうと冷凍庫を開けると、切り分けて保存袋に入れておいた冷凍バナナは黒ずんでドロドロに、今日の夕食にと思っていた冷凍サーモンは真空パックの中で白っぽくなり、全体的に変な臭いが……。旅行前に節電のためにすべてのブレーカーを落として出て行き、冷蔵庫への通電も切ってしまっていたのだ。そのため冷蔵庫の中身の多くが腐ってしまっていた。
 
冬だったので一部の野菜や納豆は無事だったり、冷凍庫の氷が解けて水が溢れ、床が水浸しになってしまうような大事故にまでは至らなかったりと、不幸中の幸いもあった。それでも食べ物を大量に腐らせた後味の悪さで、掃除を終わらせてもしばらく天井の壁紙クロスの継ぎ目を呆然と見つめていた。
 
しかし、こんなどうしようもなく情けない状況でも腹は減る。買い物に出るほどの気力が残っておらず、とりあえず食卓の椅子に腰掛けると、おみやげを入れた袋が食卓に置きっぱなしになっている。適当に食べられるものを探してみると、越前そばの半生麺があるではないか。そうだ、これで旅行後の思い出をおいしさで上塗りしよう!と、冷蔵庫から奇跡的に生き残っていた大根とにんじんを出し、記憶を辿りながら見よう見まねで越前そばを再現。家にあった大根では現地で食べたように辛くならなかったけれど、胃にもやさしくおいしいおみやげ食になった。それにしても前回から続くケアレスミスの多さ、いい加減にしようね……。

こだま・あめこ

作詞家、作家。アイドルグループやテレビアニメなどに作詞を提供。小説『誰にも奪われたくない/凸撃』(河出書房新社)。

photo & text : Ameko Kodama edit : Izumi Karashima

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