写真家・長島有里枝が提案する、今こそ大切にしたい〝ケア〟の方法とは?
Hanako.tokyo / 2023年2月3日 15時0分
「 その価値が現代社会で軽視され過ぎていると思うんです 」
昨年、金沢21世紀美術館で自らキュレーションを務めた「ぎこちない会話への対応策―第三波フェミニズムの視点で」展で、フェミニズムは女性だけのものであるべきでないと問いかけた写真家の長島有里枝さん。現在、アートプログラムMAT, Nagoyaの企画で個展「ケアの学校」が開催中だ。ケアを学ぶとはどういうことか、話を伺った。
![ながしま・ゆりえ/1973年生まれ、東京都出身。写真のみならず、立体作品、映像、小説やエッセイなど活動は多岐にわたる。近著に『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』(白水社)がある。](https://img.hanako.tokyo/2023/01/24173015/d90f45fb98c8f951baa374d39076bf01-300x300.jpg)
ながしま・ゆりえ/1973年生まれ、東京都出身。写真のみならず、立体作品、映像、小説やエッセイなど活動は多岐にわたる。近著に『テント日記/「縫うこと、着ること、語ること。」日記』(白水社)がある。
今回の展示のキーワードとなるのは「ケア」という言葉。地域の人や来場者と対話や交流をしながら、これまでにない新しい試みにも向き合うと言う。
「フェミニズムやジェンダー研究の文脈では女性の地位や性別役割分業について考えるとき、このケアという言葉は頻繁に登場します。例えば〝ケア労働〟。これはその名の通り他者をケアするような労働全般を指します。主に家庭で担われているような仕事―家事、育児、介護などですね。再生産労働、シャドウワークなどと呼ばれますが、特徴はこれらが多くの場合、家族の女性成員によって無報酬で担われているということ。私も結婚と子育てを経てこうした仕事を引き受ける経験をしました。今は子供も大きくなりこの役割も終わると期待していたのですが、実は社会生活でもケアする役目が求められていることに気づき、息苦しさを覚えるようになりました」
ケアとは誰かを気にかけること。家庭も社会も小さなケアが連鎖することで物事が円滑に進んでいく。しかし、その多くが誰かの親切や優しさ、自己犠牲の上に成り立つことに疑問を感じたと言う。
「あの人はフェミニストだからわかってくれるだろうという認識を持たれるのかもしれませんが、意義深さなどを付加価値とした報酬のない仕事を頼まれやすくなりました。光栄でもそれで貧困に陥る自分がいて悶々とします。そこに女性にケアワークを押し付ける社会の仕組みと同じ何かを感じます。ケアの価値は、現代社会で軽視され過ぎていると思う。英語のCAREには素晴らしい意味があるのに、それがやりがい搾取的になってしまうのはなぜか。ケアはお金を稼ぐより重要な仕事なのに」
ケアワークの地位向上はみんなを幸せにするはずだ。だったらそれをもっと無理なく循環させるためのアクションを起こしたい。しかし、それをどう作品化すればいいのか、悩んだと言う。
「ケアとは何かを再構築できたら、と思います。例えばそれは自分のためと考えるとき自己犠牲ではなく本当に自分の楽しみになったらいいのに、とか。会場では私が在廊し、バレエレッスン、編み物、暗室作業などをパフォーマンス作品として公開します。鑑賞者も参加できるイベントもいくつかあるので、随時インスタで告知をします。ただ、私がいない日や、いても人に会いたくないから控室にこもる日もある。どうなるのかは正直、私にもわかりません」
展示の見どころと“ケア”について考える3つのポイント。
まずは自分のケアとは何かを知る。長島さんは会期中には港まちに滞在し、展示会場の一部を自身のスタジオとして公開。「暗室作業や祖母の写真の整理など、作品に至る前のまとまらない自分をそのままに。何かに没頭する時間は自分をいたわってくれます」
距離は無理して縮めなくていい。スタジオでは一緒に手芸をしたり、長島さんと話もできる。「ただ、隣にいてもいいよ、私も私で自分のことに没頭しているから、という感じ。無理に距離を縮めることじゃない。何かを乗り越える必要はないんです」
自分のために誰かのことをする。地元のコミュニティとの活動も多数予定。子ども食堂で料理を振る舞い、自前の漫画を持ち込み漫画図書館も作る。「誰かのケアが自分のケアに。採算がどうとか損得を考えずにやることも癒しになるのではないかと思います。
![MAT Exhibition vol.12長島有里枝 「ケアの学校」3/11には写真家のホンマタカシをゲストに迎え、パフォーマンスを披露。3/18まで。住所:愛知県名古屋市港区名港1-19-23 Minatomachi POTLUCK BUILDING 電話:052-654-8911 営業時間:11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで) 定休日:日月祝休(2/11は開館)入場料:無料 MAT Exhibition vol.12長島有里枝 「ケアの学校」3/11には写真家のホンマタカシをゲストに迎え、パフォーマンスを披露。3/18まで。住所:愛知県名古屋市港区名港1-19-23 Minatomachi POTLUCK BUILDING 電話:052-654-8911 営業時間:11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで) 定休日:日月祝休(2/11は開館)入場料:無料](https://img.hanako.tokyo/2023/01/24173243/635143a0d85dce80660e5ad76e3f3a4c-300x300.jpg)
3/11には写真家のホンマタカシをゲストに迎え、パフォーマンスを披露。3/18まで。愛知県名古屋市港区名港1-19-23 Minatomachi POTLUCK BUILDING 052-654-8911 11:00~19:00(入場は閉館の30分前まで) 日月祝休(2/11は開館)入場料:無料
MAT, Nagoyaとは?
Minatomachi Art Table, Nagoya[MAT, Nagoya]は名古屋港エリアでまちづくりを推進する「港まちづくり協議会」が母体のMinatomachi POTLUCK BUILDINGを拠点に活動するアートプログラム。
https://www.mat-nagoya.jp/
No. 1217
![マニアの話題をさらう273品!2023年、スイーツ流行予測。/京本大我 (SixTONES)](https://img.hanako.tokyo/2023/01/25095438/2023-4910074070334-1-2.jpg)
2023年、スイーツ流行予測。/京本大我 (SixTONES) 2023年01月27日 発売号
Hanakoの看板特集のひとつ、「スイーツ」号が今年も登場! ピスタチオスイーツやマリトッツォなど、数々のトレンドが生まれた2022年を経て、予約争奪戦のデザートコースの店、フィナンシェブーム、バニラ専門店や発酵スイーツの登場…など、2023年のスイーツ界を彩るトレンド情報を網羅しました。もうすぐ迎えるバレンタインに向けた最新チョコレート情報や、いま話題をさらう焼き菓子情報もみっちりと。スイーツファンなら保存版の1冊でお届けします。
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