国領に革命を起こしたイタリアン〈Don Bravo〉の平 雅一さん|星子莉奈のMeet the Chef
Hanako.tokyo / 2023年3月14日 12時0分
レストランのプロデューサーやディレクション、PR、ライターとして活躍する星子莉奈さんが、気になる店のシェフをクローズアップする短期連載。第4回は、国領にあるイタリアンレストラン〈Don Bravo(ドンブラボー)〉の平 雅一さんの登場です。
〈Don Bravo〉の平 雅一さんにインタビュー
自然体な笑顔が眩しい平 雅一シェフ。
みなさんこんにちは。ポカポカ陽気に包まれて、毎日眠気との戦いを強いられている私です。お気に入りのコーヒーたちを常備して、朝から晩まで彼らに頼りっぱなし…。健康を害さない程度に、しばらくコーヒー漬け生活を楽しもうと思います。
さてさて、本日はちょっぴり遠出して東京都調布市国領へ。この地で革命を起こした〈Don Bravo〉の平 一雅シェフに会いに行ってきました。
コンクリート打ちっぱなしのシンプルで予感に満ちる外観。
都心から少し距離のある立地にも関わらず、グルマンたちがこぞって通う東京随一のディスティネーションレストラン。〆にピザが登場するというユニークなコース構成が話題に。国内外の有名店を渡り歩いた平シェフのクリエティビティが光るイタリア料理とオリジナルピザに魅了されて通い詰めるファンも少なくないとか。
「実家はこの場所でお好み焼き屋をやってました。母親の実家も浅草で中華料理店を、父方の祖母の実家は群馬でうどん屋を営んでいて、幼い頃から料理人以外の道を考えたことがなかったですね」。
生粋の料理人家系で育った平シェフ。しかしながら幼少期は食が細く、食事の時間が苦痛だったと言います。そんな少年時代に唯一毎日食べたいと思う程大好きだったのが、スパゲッティ。とにかくゾッコンだったそうで、この原体験からイタリアンの道に進むことを決意。
料理人としてスイッチが入ったターニングポイントは、〈ボッコンディビーノ〉のシェフを任された時だという。
名だたる有名店や本場イタリアで経験を積んだ後、独立前には三宿のイタリアン〈ボッコンディビーノ〉でシェフを務め、有名グルメサイトの東京ピザランキングで堂々の1位を獲得。客足の途絶えないお店へと成長させました。
「駅から10分以上かかるようなちょっと不便な場所にあったのですが、それでもお客様はちゃんと来てくれて。美味しい料理さえあれば、それが目的地となって人は集まってくるんだなと実感しました」と、当時を振り返りながら語ってくれました。
〈Don Bravo〉という店名の由来は、ドン(首領)に感嘆詞の「ブラボー!」、最上級のハッピーといったニュアンスで、お店での食体験にぴったりなネーミング。
ワイン好きにはたまらない圧巻のラインナップ。
2012年、ついに実家のお好み焼き屋さんを畳んで〈Don Bravo〉を開店。
「この場所での挑戦にはもちろん不安もありましたが、前身のお店での経験もありましたし、ピンチはチャンスじゃないですけど、ここでこんな料理が食べれるのかという意外性に興味を持ってもらえたので結果オーライでした」。
お話しの通り、東京の外れに何やらすごいお店ができたと話題はすぐに広まり、瞬く間に予約の取れない人気店に。
「お店としてはありがたい状態が続いていましたが、地元のお客様が来店できる機会が減ってしまったことや、予約をお断りすることにもどかしさを感じていました。そこで、お店のシグネチャーであるピザにフォーカスし、より気軽に食事を楽しんでもらえる新業態の〈クレイジーピザ〉を同じ国領に立ち上げました。」
〈Don Bravo〉と同じオリジナルのピザ生地をベースに、マヨコーンなどの茶目っ気たっぷりでジャンキーな味わいのピザを楽しめる同店。15歳未満のお子さんには一切れ100円でキッズピザを提供。幼少期においしい味を知る事は将来の財産になるという平シェフの想いからスタートした取り組みは、子供たちの豊かな笑顔を生んでいます。
昨年には待望の2号店を神楽坂にオープンし、今年の夏には虎ノ門に3号店を構える予定だそう。
料理に没入し、表情が変わる平シェフ。
「お店を続ける中で、変わらずに大切にされている事はありますか」という私の問いに「自分たちが100%美味しいと思ったものを出し続けること、何よりそれが大事」と、語気強めの回答が。「実は昨年、日本人が選ぶ世界の人々のための日本のレストラン『DestinationRestaurants2022』を受賞し、ローカルレストランという位置づけで捉えられる機会が増えたんです。でもここは地方の自然と一体化したレストランのように綺麗な海や山がある訳でもなく、地の食材を使った料理でもない。その中でどうお客様を感動させられるかと考えを巡らせて方向性に悩んだ時期もあったんですが、根本的には積み上げてきた自分たちらしさを続けたいなと思って。自分たちがいいと思うものを胸を張って続けていくことで尊いレストランを目指して行きたいと思ってます」と内に秘められた想いを明かしてくれました。
生地そのものに旨味があるので耳までペロリです。
シグネチャーのピザ生地はお店のオリジナル。ホエイと玉ねぎ水を混ぜ込み、塩味を抑えながらも生地そのものにしっかりとした味わいと香りがあります。
王道マルゲリータとしらすのハーフ&ハーフ。
「これはどえらいピザに出会ってしまった…」と心震えたマルゲリータ。
王道マルゲリータとしらすのハーフ&ハーフをお願いしました。
「しらすは和歌山県にある山利の釜揚げしらすを使っているのですが、塩味が控えめなのでこのぐらいどっさり豪快にいくのが正解なんです」と、平シェフ。食材と何度も相談しながらドンピシャな味わいを研究されているのが伝わります。
仕上げに散りばめられた官能的な味わいのカラスミがピュアな味わいのしらすと見事にマッチ!強烈な美味しさで言葉を失います。
お次は私のピザドラフト会議で一位指名を獲得し続けるマルゲリータ様。トマトの爽やかな酸味とコクのあるチーズのバランスが完璧で別格の美味しさです。
クラシカルなトリッパの煮込みが様変わり。
「これは間違いなく貴族が食すトリッパだ。豪華すぎる!」と、高揚しっぱなし。
こちらはコースの4品目に出てくるトリッパ。トマトソースで煮込んだハチノス・ギアラ・センマイに、芽キャベツ、プンタレッラ、羊のチーズ、北イタリアのフォンティーナチーズを組み合わせた未体験のトリッパが登場。
しっかりめに味付けされたホルモンはそれ単体でも無茶苦茶に美味しいのですが、ミルキーで深みのあるとろとろチーズを纏って旨さに拍車がかかっています。プンタレッラの苦味もアクセントになって最高!と、思わず膝を打ちたくなる美味しさでした。
記憶に刻まれる個性的なお料理の裏側にある想いを伺い、ますます〈Don Bravo〉の、いや、平シェフのファンになってしまいました。今後はおいしい幸せを全国の人々に届けるため、地方での店舗プロデュースや冷凍ピッツァに挑戦される予定だとか。アクティブに新しい価値創造に挑戦する平シェフから目が離せませんね。上質なカジュアル空間で大人の好奇心を美味しく満たしてくれる〈Don Bravo〉、これからもせっせと通いたい名店であります。平シェフ、ありがとうございました。
〈Don Bravo〉
東京都調布市国領町3-6-43
042-482-7378
12:00~15:00(14:00LO)、18:00~23:00(22:00LO)
水、月2不定休 ※休業日はHPでご確認ください。
![星子さん](https://img.hanako.tokyo/2022/12/14192330/FotoJet-15-10-300x300.jpg)
“食”をメインに、レストランプロデューサーやPR、ライターとして活躍。普段からホテル暮らしをするほど、旅行が好き。Instagram:(@hoshiko_0607)
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