高島平をぶらり。圧倒的スケールと生活の息遣い|花井悠希の「この街この駅このパン屋」
Hanako.tokyo / 2023年4月6日 16時0分
ヴァイオリニストの花井悠希さんがお届けする、新しいカタチのパン連載。1つの駅、1つの街にフォーカスを当て、ここでしか出会えないパン屋さんを見つけていきます。
とあるパン屋さんに行きたくて、降り立ったのは「高島平駅」。降りるとまず目に入るのが高島平団地です。昭和40年代の建設当時は東洋一といわれた、総戸数約一万戸を誇るマンモス団地。その規模の大きな景色に圧倒されます。街には犬の散歩をしている人、子ども連れでお散歩している人、家族連れで賑わっています。
今回の街…高島平駅周辺
かぶりつけば気分はディニーランド?
閉園後の〈こども動物園〉。
子どもたちの楽しそうな声を聞きながら。
モルモットとインコだけは見られました。
この日は土曜日だったからか、子どもたちの遊ぶ声があちらこちらから聞こえてきます。パン屋さんの場所を確認していたら、近くに〈こども動物園〉があるらしい。寄ってみると、あいにく閉園時間を過ぎていて動物は見られなかったけど、ベンチがたくさんあるので、日暮れまでサッカーをする少年たちの姿を眺めながらパンにかぶりつきました。
1軒目:パン屋という概念を超えていく!?〈下田流〉
パン屋さんと気付かず一回通り過ぎました。
ひいたらさらに何屋さんかわからない。
でも一歩足を踏み入れたらそこは〈下田流〉ワールド。
魅力的すぎて絞れないトレイの図。
“とあるパン屋さん”とはこちら。久々にブルッと痺れたパン屋さんでした。あえて褒め言葉として言わせてください。店構えからして“イッチャッてます”!パン屋さんでここまで簡素なしつらえといいますか、外観にも内観にもパン屋感を感じない店は初めてです。
店内でパンと向き合うと、あまりに魅力的な、唯一無二のラインナップに武者奮いが。私にいいチョイスが出来るのか!?というプレッシャーと、食べたくてはやる気持ちが抑えきれず、体は前のめり、息は切れ切れ、目はキョロキョロと完全なる挙動不審で店内を右往左往。そんな私にも店員さんは優しく、店内の写真もOKしてくれました(感謝)。てっきり、こういう尖った佇まいのお店だから、写真NGとか色々厳しいのではと思ったよ。みなさまも安心してお邪魔してください。
「柚子コショウ香る骨付きソーセージフランス」
一口目は柚子胡椒が!!この見た目に引っ張られて、てっきりディニーランドの某ターキーレッグ的な味かと勝手に構えていたら、まさかのソーセージと柚子胡椒のびっくりな出会いを提供してくれて、一口目から心掴まれます。ソーセージはワイルドな燻製の香りがぷんぷんで、私はいま肉を喰らってるんだぜ~?ワイルドだろう~?って酔いたくなる感じ(ギちゃん?)。
そしてそして、負けず劣らずその肉汁をぎゅぎゅんと吸いこみジューシーさを放つフランスパン生地の懐の深さよ。もちもちでぐんとひきのある豊かな弾力の波から繰り出される肉汁のパンチ、小麦のパンチであっという間にやられます。
「下田流明太子フランス」
お椀サイズの王冠。
のりがいい仕事しています。
おっきな王冠のようなパンは、明太フランス。見た目通りエッジがしっかりと焼けていて、焦げはカリッカリの絶好調です。
パン・ロ・デブの生地らしい水分量の高いもっちもちの生地に明太子の粒々感と辛さ。明太子ご飯にも負けない相性の良さを見せつけます。そこにカリカリという香ばしい付加価値をもたらすのだから、もう降参です。
「コーンのリュスティック チョリソーとちぢみほうれん草」
トマトがフレッシュな甘酸っぱさで、これまたいい仕事しています。
ありゃーこれはどういうことか!こちらのお店のもちもち感はすでに感じていたのに、さらに驚いてしまいました。水分量がすごいです。もちもちを通り越してしとしと。パクりと頬張ればもっちりと微笑み返してくれます。
そして、ふっといチョリソーの存在感がすごいです。そして真剣に辛い。チョリソーも本気出せば辛いのよ?とこちらを挑発します。チーズのまろやかさはクッションに。とうもろこしのプチプチは甘く、生地のもちもち感と相まって異次元の食感!セミドライトマトがきゅいーんと甘酸っぱくにこやかに笑いかける。辛いも甘いも酸っぱいも、色々なテイストがスパークする楽しいパン。
「下田流塩パン」
クロワッサンのようで、味わいは塩パン。
見たことない塩パンの形!子どもなら剣にして遊んじゃいそうなスティック型です(ダメ、ゼッタイ)。こちら噛めば噛むほど豊かなバターの風味がじゅわんじゅわんとほとばしる。
表面はペキペキ、パリパリ、そこからじゅわじゅわ。わたしお得意の擬音語ラッシュでお伝えしちゃうもんね(という名の逃げ)。クロワッサンにも似たパリパリ感とバターの豊かな風味。が表面の塩はきらりと口内で光り、内側からはバターにのってじんわりと塩の波がやってきます。そう、あなたはただ身を委ねるだけで良いのです(誰?)。
「下田流生食パン~ココアver.~」
シトシトな生地とココアが溶け合います。
コッペパンかと思ったら食パンとな?自分が食パンとはこういうものという枠をいかに勝手に作っていたか思い知らされます(大袈裟)。水分量が高くシトシトとした口当たりでふわふわかつしっとり。言葉にするとありきたりになってしまいますが、これは初めて出会うような個性を感じる食感です。ふかふかとした軽やかな入り口を抜けると、歯切れ良く、ぷかぁとソフトタッチで押し返してくる弾力に出会い、最後は水分が満ちてビロードのようななめらかな口溶けの余韻を残す。チョコレートの味わいは濃いのにキツくはないバランス、柔らかく届く甘さからはちゃんとご褒美的な甘さも感じられる絶妙な匙加減です。
「バキバキベーグルバナナクリームオレオダイスチョコアーモンド」
生地に寄り添うチョコクリームさん。
ネーミングのクセ強!バキバキベーグルの名に恥じない表面のパリパリ感(そこはバキバキ感やろ!)に歓喜。そこからパワー漲る弾力が押し返してきます。しっかりきっちり押し返す弾力があるのに威圧的ではないのは何事か。餅のようなねちっとした絡みつき方なのに、歯切れの良さも感じさせてくれるのです。そんなベーグル生地に巻き込まれているのは、みんな大好きバナナチョコ。チョコはペースト状になっているから主張しすぎず、生地のゆたかな小麦の味わいになじみます。
2軒目:温かな光に誘われて。〈Do monsieur(ドゥ ムッシュ)〉
駅前をポッと照らす〈Do monsieur〉
夕方に差し掛かり、駅前に灯つ暖かな光に吸い寄せられるように立ち寄ったこちらのパン屋さん。たくさんの方が続々と訪れ、街の人に愛されているのが伝わります。
「カマンベールチーズ」
カマンベールを包む軽やかな生地。
見た目よりもずっと軽やか。けしの実のプチプチつぶつぶした細かいアタックの連続を受け止める、軽やかで繊細な口当たりの生地。カマンベールチーズのまろやかなコクを縁取ります。
甘いに傾くことも、しょっぱいに傾くこともなくお食事パンにもおやつパンにもなれる柔軟性の高い子。
「目玉フレンチ」
実は卵の下にハムも隠れていますよ。
人気商品のこちら。フレンチトーストに、卵、周りにはマヨネーズという甘じょっぱい系代表なテイスト。第一印象は甘いフレンチトースト。がっつりとハムエッグがオンしたところに、焼けてとろりんと緩んだマヨネーズがジャンキーな油脂感と酸味で、黒胡椒が待っていました!とキリリと冴える。これ一つの充実感たるや。朝に食べてシャッキリ出かけたくなるパン。
日もすっかり落ち、駅に向かうと、どこまでも均一に並ぶ灯りがきれいでふと足を止め魅入ってしまいました。子供一人で自転車にのって公園に遊びに行く光景があちこちで見られて、東京だけど故郷に帰ってきたようななんだか懐かしい気分になる街。時代は流れ、子供の遊びも多様化してきているように思っていたけど、私が子どもの頃見てきたものと変わらない姿がそこにはありました。なんだか安心するなぁ。
ふとメランコリックな気持ちになったら、またここに帰ってこよう。
![prf_Yuki-101](https://img.hanako.tokyo/2017/06/prf_Yuki-101.jpg)
三重県出身。三重県四日市市観光大使。3歳よりヴァイオリンを始める。 2010年4月21日コロムビアよりデビュー。〈1966カルテット〉メンバー。http://columbia.jp/hanaiyuki/
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