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【SDGs A to Z: O (Ocean animals) 】海の生き物が教えてくれる、プラごみの危険性。 (後編)

Hanako.tokyo / 2023年7月3日 12時35分

【SDGs A to Z: O (Ocean animals) 】海の生き物が教えてくれる、プラごみの危険性。 (後編)

豊かだったはずの海が今、「プラだらけの海」になりつつあるという。海とプラごみ問題に詳しい三人が、危機的状況にある海とその生き物について語り合う。

前編はこちら

高田秀重 プラスチックごみ研究

たかだ・ひでしげ/1959年生まれ。東京農工大学農学部教授。海洋プラスチック問題研究の第一人者で、20年間ラップを使わないなどプラスチックフリー生活を実践中。『プラスチックの現実と未来へのアイデア』(東京書籍)など著書多数。

ココリコ 田中直樹 お笑い芸人/生きもの好き

たなか・なおき/1971年生まれ。お笑いコンビ・ココリコのボケ担当。動物マニアで、特にサメやクジラ好きが高じて海にまつわるドキュメンタリーやイベントにも多数参加。共書に『図解 生き物が見ている世界』(学研パブリッシング)。

田島木綿子 海獣学者

たじま・ゆうこ/1971年生まれ。国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹。筑波大学大学院生命環境科学研究科准教授。最新刊に『クジラの歌を聴け 動物が生命をつなぐ驚異のしくみ』(山と溪谷社)。

Talk theme #4 クジラは海のかき混ぜ屋さん。生態系を守っている。

Photo by EXTREME-PHOTOGRAPHER/iStock



ただ生きている、けれど海をつなぐクジラの偉大な役割。

田中:僕、死ぬまでにシロナガスクジラを見たいんです。スリランカへのツアーも組まれていますが、クジラにしたら、家に土足で入ってきて周りにごみを捨てられるようなこともあるみたいで。きちんと配慮したツアーを組み、気をつけながら見ないといけないなと。

田島:クジラは魅力的ですよね。

田中:はい。でも海の生き物を見ていると、どの生き物も魅力があるんですよ。魅力がない生き物はいない。若手の頃とか、むしろ今でも自分には才能がないと感じることがありますけど、生き物を見ているとただ生きて生活できているだけでもOKだなとか、自分では気づかない魅力が自分にもあるのかもと思わせてくれるんですよね。それにあのサイズの生き物を普段見ることがないから、理由は関係なく圧倒されます。それが心地いいというか、生き物すげえなあ!って。

田島:そうですね。クジラはただ大きいだけでなく、大きいからこそ果たしている海の役割があります。ホエールポンプを知っていますか? 潮流や季節風、地形などによって下から上へと水が湧き上がる「湧昇流」というものがあります。深層水の栄養が上まで届くことでプランクトンが繁殖でき、漁場ができます。実はクジラは、餌を求めて深海から上まで、北極から南極へと移動することでこの湧昇流や水の循環をつくっているといわれるんですね。栄養豊富な深海とのつなぎ役でもあるんです。クジラなど大型の生き物が海の中をかき回してくれている役割はすごく大きいかもしれないんです。

田中:かき混ぜてくれていると。

田島:でもその湧昇流が機能しなくなっているといわれているんです。

田中:どうしてですか?

田島:海底にプラスチックが溜まって、流れが起きていないようなのです。流れが起きなければ、海底の栄養が届かず、食物連鎖の源のプランクトンが繁殖できなくなります。魚やクジラはプランクトンを餌にしていますから、食物連鎖のピラミッドが下から崩れ、高次捕食者まであっという間にいなくなる。海洋プラは、海中の酸素も減少させます。

田中:生態系の危機ですね。

田島:もう直接的に海洋生物の生存環境を脅かす存在になっています。

田中:流れの起きない海になると、具体的に人間にはどんな影響が出ると思われますか?

高田:生態系が崩れていき、究極は私たち人間にとってのタンパク源もなくなりますね。

田中:人間も決して無関係ではいられないですよね。

Talk theme #5 地球の7割を占める海を元気にしてカーボンオフ。



温暖化対策として今注目されるブルーカーボン。

田島:また森林などによる「グリーンカーボン」が推奨されてきましたが、はたと見たときに地球の7割は海です。そこで最近は「ブルーカーボン」に注目する人が増えてきました。ブルーカーボンとは、植物プランクトンや海藻、海洋植物の働きで地球上の炭素を分解したり海洋生物の体内に蓄積してくれること。グリーンカーボンより二酸化炭素を吸収する量が多いとして、温暖化対策の面からも海を守る活動が活発になっています。

田中:近年東京湾の漁師さんたちなども、海藻にがんばってもらえるような活動をされています。日本は海に囲まれていますしね。

田島:海藻って今まですごく影が薄かったけど、実はこの子たちの力はすごいんですよ。海藻だとかマングローブ林、干潟はたくさん二酸化炭素を吸収してくれているんです。

田中:海を守ることが、温暖化対策になるんですね。

田島:プランクトンによっても酸素が生み出され、二酸化炭素が吸収されるので温暖化対策にもなるんです。それにクジラ自体も、炭素の吸収源です。

田中:海や生き物に関する仕事を多くさせていただく中で、この5、6年の間で危機感を持たれている方がすごく増えたと感じます。でも日本ではまだ、環境を守ることは自分が我慢しないといけないことのように考えがちで。でも海外に行ってみると、すごくポジティブに捉える人が多くてびっくりします。高田先生みたいに楽しんでいらっしゃるのは本当に素晴らしいなと。

高田:できるだけ循環するものを探して使うのは楽しいですよ。

田中:そういうものを選ぶと、自分も気持ちよく生活できるんですよね。あと僕は、信じることを大切にしています。自分がやっているちっぽけなことがこの大きな海にどれくらい影響を与えられるかなんて、考えたらキリがなくて。これがつながるんだって信じることが大事かなって。

高田:大げさではなくて、全部につながると思いますよ。

田島:もし今の危機的状況が自然の摂理で起こっているのなら絶滅を待つしかないのだけど、全部人間社会の影響だと思うと、心が痛むんです。豊かになりたいがための発展が、海を汚しているならば、一度立ち返る必要があるのでは? と思うんです。叡智で私たちは豊かになりましたが、人間だけがゴールを飾っても、その先に良い未来があるでしょうか。多様性がなぜ大事かといえば、人間以外何もいなくなってしまったら、人間自体も生き残れないですから。

田中:昆布ひとつも大切なんですね。

田島:そうです。昆布のような海の森も、生物多様性を守っています。楽しみながら、海のためにできることをぜひ探してほしいです!

使い捨てプラを減らすための、お気に入りアイテム。

高田秀重さんのItem
調理&再加熱用の陶器や食器用のヘチマスポンジ、〈ラッシュ〉の固形シャンプーやソープ、買い物袋になる風呂敷、カトラリー。「吉祥寺の〈クレヨンハウス〉で手に入れます」

田中直樹さんのItem
札幌市円山動物園のエコバッグや美ら海水族館のボトルなど、ロケ先で手に入れたものたち。「スーパーには必ずエコバッグを持参します。いただきものが多いです」

田島木綿子のItem「〈サーモス〉のボトルを持参」。先生の仕事ぶりとプラごみについて、詳しくは『海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~』(山と溪谷社)を。

田島木綿子のItem
「〈サーモス〉のボトルを持参」。先生の仕事ぶりとプラごみについて、詳しくは『海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~』(山と溪谷社)を。

photo : Kenya Abe text : Miho Arima edit : Nao Yoshida

No. 1221



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新生活が落ち着いた今、より心地よく暮らすためには?働くこと、誰かと話すこと、自然を身近に感じること…など、自分にとっての心地よさが、誰かにとっての心地よさにもつながるアイデアやヒント26個をA to Zで紹介します。そしてHanakoは今号で創刊35年。なかでも「スイーツ特集」は、代名詞的特集の一つとして人気コンテンツに成長しました。特別付録では、ティラミス、ナタデココなど熱狂的なファンを生み出したスタースイーツや、今や世界を舞台に活躍するスターパティシエたちへのインタビュー、懐かしのスイーツ特集アーカイブなどをた …



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