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【SDGs A to Z: P (Permaculture) 】パーマカルチャーに触れられる神奈川県藤野町が、移住した私にくれたもの。 (後編)

Hanako.tokyo / 2023年6月25日 12時15分

【SDGs A to Z: P (Permaculture) 】パーマカルチャーに触れられる神奈川県藤野町が、移住した私にくれたもの。 (後編)

東京都内から車で1時間ほどの、都心に一番近い里山と呼ばれる神奈川県藤野町(現相模原市緑区)。パーマカルチャーに触れられるこの地へ移住した、文筆家・中村暁野さんの気付きとは?

後編では藤野の空気感に寄与しているパーマカルチャーと藤野について、パーマカルチャー講師を務める設楽清和さんと、移住者の中村暁野さんがトーク。

前編はこちら

設楽清和 パーマカルチャー・ センター・ジャパン代表

しだら・きよかず/新潟県で4年間農業に従事した後、アメリカで環境人類学を学ぶ。帰国後、藤野でNPO法人パーマカルチャー・センター・ジャパンを設立。多様な講座を行う。

中村暁野 文筆家・小商店主

なかむら・あきの/夫・娘・息子と2017年に藤野へ移住。主に家族や環境をテーマに執筆。エシカルショップ〈家族と一年商店〉店主。藤野で食のイベントを主催することも。

パーマカルチャーとは?



農業 Agriculture
家庭菜園でも絵でも歌でも、一人一人何かを生み出すこと。
野菜を育てるだけではない、生産や創造全般のことで、料理を編み出したり、農家を束ねてマルシェを企画したり。ベランダで花を育てるといった些細なことでも消費者から生産者になれて、搾取される側じゃないと気付き、お金中心の社会からの解放が叶う。自立の心があれば、「できることを誰かに分けよう」と思えるゆとりも生まれる。



文化 Culture
自然の理に沿って畑や家、暮らしをデザインする。
時間をかけてできた自然の理や先人の知恵、つまり文化には、効率的で実用的な仕組みがある。例えばパーマカルチャー講座を開く築110年の家は1階に囲炉裏があり、上る熱気を利用して2階を蚕(かいこ)を飼う部屋にしていた。蚕が収入源の生活に合わせた“働く家”のような文化を知れば、サステナブルなデザインを描けるようになる。



永続性 Permanent
より豊かな生命が育めるように自然と対話し続ける。
12,000年前から人が自然の理に反した農業を続けたことで、地球から失われた野生動物はなんと83%、樹木は50%といわれている。この崩れた生態系を元に戻すために、生活の影響を知り、植物の香りや土の感触を感じ取り、問題の解決策を見出す。維持や「しない」ではなく、能動的につくる表現が、自然と人の永続的な関係づくりになる。

サステナブルな社会づくりの一環として、パーマカルチャー農園も。刈った雑草を土にのせ、微生物の分解から栄養豊富な土をつくるなど、自然の仕組みを生かした循環型農法だ。

センター内。囲炉裏のすすで黒く染まった木材の中で明るく見える梁は、元の造りに倣った補強。

台所には梅酒の保存瓶が。家も食も永く生かせるよう、自然の理に沿いデザインしている。

パーマカルチャーとは、人も自然も搾取せず、幸せになること

中村暁野(以下、中村):藤野に住んで感じているのは、自分の中にあるクリエイティビティを目覚めさせられる交流が多いことです。

設楽清和(以下、設楽):歴史的な背景も関係してると思うよ。戦中に芸術家たちが疎開して来て創作活動を行ったのが、今に続く藤野の性格を決定したできごと。1980年頃は道々に芸術作品が置かれたり、イベントが開催されたり、〝芸術の町〞と呼ばれてね。1990年頃からは柔軟な役所の人たちの力もあって、少数派で新しいオルタナティブな社会の動きを受け入れよう、個性ある地域づくりをしていこうという向きに。その頃、オーストラリア発祥のパーマカルチャーにアメリカで出会って帰国した私は、日本型モデルを考えていたんです。縁あって「寛容な藤野でどうぞ」と場を用意してもらえて、1996年に廃屋を利用して〈パーマカルチャー・センター・ジャパン〉をつくりました。視野が開けた町だから、移住者が来たり、触発された地元の方もワークショップに参加したり、人が刺激し合う今の空気感が育っていったんだよね。

中村:それから、人だけでなく、自然からの気付きもありますね。2019年の大型台風で、学校で娘たちがお米を育てていた田んぼが土砂で埋まってしまったとき、みんなで土砂を出して洗って乾かして、大変な苦労がありましたが、台風の後の田園風景がそれはそれはきれいでした。すると子どもたちが「田んぼの神様ありがとう」と口々に言い出したんです。そうか、自然はときに脅威もあるけれど、恵みや今感じている感謝もくれる、私たちは自然に生かされている。パーマカルチャーが目指す、自然と人の共生を思いました。

設楽:そういう長い時間を経てできた合理的ともいえる自然の理(ことわり)に寄り添い、ライフスタイルに合わせてどう空間ややり方をデザインしていくかが、パーマカルチャーの面白いところ。でもその自然の理、動植物の豊かな生態系を、人が今まで壊してきてしまった。だから取り戻して、またサステナブルに循環できる世界にしていこうよ、というのが、パーマカルチャーのメッセージです。

中村:自然を生かし、関わる人も生きやすくなる。私が違和感を持っていた消費とは、離れた幸せですね。

設楽:自然の理に大切な豊かな生態系にはもちろん人もいて、クリエイティブにパーマカルチャーをデザインできるのは人。だから藤野の人の結びつきから生まれるクリエイティビティの伝播や多様な自己表現って、すごく理にかなっているよね。

Permaculture Center Japan(パーマカルチャー・センター・ジャパン) 神奈川

日本のパーマカルチャーの中心的な役割を果たし、国内唯一のパーマカルチャーデザイナーの資格を取得できる施設。座学から、農場で行う実践も。
住所:神奈川県相模原市緑区牧野16
TEL:050-1319-5988

photo : Kenya Abe text : Kyoko Kashimura edit : Nao Yoshida

No. 1221



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