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寿木けいの 「一から家具を作ってもらうということ」#3

Hanako.tokyo / 2023年8月7日 18時0分

寿木けいの 「一から家具を作ってもらうということ」#3

「自分のために家具を作ってもらうことは自分の物語を描くこと。それには自分はどう生きるのかを決める力が必要でした」。
エッセイストの寿木けいさんはテーブルやキッチン、照明を家具職人やアーティストの方に一から依頼して作ってもらった。大変だけど、豊かで、おもしろくて、楽しい。その制作と思考の過程を聞きました。寿木さん書き下ろしのエッセイも。

#1はこちら

鈴木さんと最終打ち合わせ。細かなサイズや仕様を確認。

鈴木さんと最終打ち合わせ。細かなサイズや仕様を確認。

栗材の表面を削っているところ。なめらかな木肌が現れる。

栗材の表面を削っているところ。なめらかな木肌が現れる。

直径150センチのテーブルの「型紙」を、丸太から切り出されたままの姿の栗材に合わせてみる。

鈴木さんのアトリエ。家具のサンプルを見ながら打ち合わせができる。

それから、こんな出会いもありました。
 
さまざまなキッチンのショールームに出かけましたが、既製品にはなかなか気に入ったものがありませんでした。私がキッチンに合わせるのではなく、キッチンが私に合わせてほしい。こんな簡単なことがなぜ叶わないのだろうと、行き詰まっていたそのとき、

「作っては?いい職人さん知ってますよ」
建築家の坂野さんが教えてくれました。こうして、鈴木岳さんを紹介してもらい、私のキッチン計画が動き出したのでした。結局、キッチンカウンター、作業台、そして、直径百五十センチのテーブルを作ってもらいました。
 
なかでも、幅約二メートルの作業台は、私が最初にリクエストしたものでした。この台で調理をする私の前で、子供が座っておやつを食べたり、宿題をするイメージが、私のなかにはっきりあったのです。

ある打ち合わせで、機能や使い勝手に意識が向いていた私に対し、鈴木さんはバランスという視点で改良を加えてくれました。なぜそこに手を加えるのかと聞いた私に、「このほうが家具として美しいです」
 
こんなまっとうな言葉、従うしかありませんでしたし、これを聞けてうれしかった。
 
職人はすべて、美しさの追究のために技術を磨き、経験を積むのでしょう。
 
家具や作品をオーダーするということは、自分の一部を職人に委ね、跳ね返された光、つまり打ち返された作品を、家に迎え入れるということだと思います。それは、生活をおもしろくしてくれる、心強い存在なのです。

寿木けい

すずき・けい/エッセイスト、料理家。昨年春に山梨に移住し、築130年の古民家をリノベ中。本誌でエッセイ「ひんぴんさんになりたくて。」を連載中。

鈴木岳 〈 wood bell furniture 〉

すずき・がく/飛騨国際工芸学園で家具の設計、制作を学ぶ。現在、山梨県笛吹市にて、オーダー家具、雑貨の製作・販売を行う〈wood bell furniture〉を運営。

photo : Koichi Tanoue

No. 1222



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