わたしたちの無加工な「独立」の話 #2 kasiki店主・藤田澄香さん
Hanako.tokyo / 2023年9月11日 18時0分
どのように働くかを考えるとき、選択肢の一つとなるフリーランスや起業などの「独立」という働き方。では、実際に独立して働いている人たちは、どのようにその働き方を選び、「働くこと」に向き合っているのでしょうか。さまざまな状況のなかで「独立」という働き方を〈現時点で〉選んでいる人のそれぞれの歩みについてお話を伺っていきます。
第2回目は、アイスクリームのお店、kasikiを昨年10月、東京・幡ヶ谷にオープンした、藤田澄香さん。「らしさ」にとらわれない、のびやかなアイスクリームを提供するkasikiの立ち上げに至るまでを伺いました。
1990年、茨城県生まれ。大学を機に上京後、様々な飲食業に携わる中でアイスクリーム制作に目覚める。2019年に「kasiki」を立ち上げ、ポップアップを中心に活動。
添加物は一切使わず、旬のフルーツにハーブやスパイス、お酒などを組み合わせ、四季の香りをアイスクリームで表現する。コーヒーやワイン、ファッションとコラボしたイベントも行うなど、これまでにないアイスクリームの魅力を伝えている。2022年に店舗オープン。
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「料理の延長」の感覚で行き着いた、アイス屋さん
─どのようなきっかけで飲食の道に進んだのですか?
藤田:大学時代に飲食のアルバイトを始めて。とにかく飲食の仕事が好きでしたし、魅力的な大人との出会いもあって、バイトばかりして4年間過ごしました。
藤田澄香さん
─大学を卒業後はどうされたんですか?
藤田:就職氷河期で周りが一生懸命に就職活動をしていたこともあって、自分も一度広告代理店に就職したんです。でも、働き方のスタイルが合わなくて3ヶ月で辞めました。震災もあって、不安定な道かもしれないと迷いましたけど、結局、楽しくないと続けられないと思って、飲食に戻りました。
─その頃から調理のお仕事をされていたんでしょうか。
藤田:はじめは主にサービスの仕事をしていました。いろいろなジャンルの飲食店で働くなかで、イベントの企画をさせてもらう機会があって、そろそろ自分で表現をしてみたいという想いが出てきたんです。シェフの手伝いなどもするなかで大体の流れはなんとなくわかっていたんですけど、ほとんど独学で身につけながら、ポップアップや出張料理を引き受けるようになりました。
─なんらかの形で表現をしたいという気持ちはもともと持っていましたか?
藤田:特別意識していたわけではないんです。ただ、集団行動が苦手ですし、人と違うことをやりたい気持ちもあって、誰かのもとで働き続けることが合わないだろうとはずっと思っていました。だとしたら、飲食の世界で生きていくためには、料理ができなくちゃだめだろうと。
─そこからどうやってアイスに行きついたんですか?
藤田:当時働いていた飲食店で、デザートとしてアイスクリームをつくってみたんです。もともと自分自身はそれほど甘いものを食べないので、料理の延長の感覚で、ハーブやスパイスを入れたりして。その時にアイスクリームって、すごく自由だと感じたんです。白いキャンバスに絵を描いていくような感覚がありました。それからアイスにはまって、ポップアップの形でkasikiを始めて、去年店舗をつくりました。
─kasikiさんはワインやコーヒーも出されていたり、いわゆるアイス屋さんとは少し趣が異なりますね。フレーバーも想像を掻き立てられるような変わった組み合わせが多いように思います。
藤田:味の想像がつきづらいアイスも多いので、よくおすすめを聞かれますけど、あまり言いたくなくて。何を食べたいか自分で考えて、それぞれに新しい発見をしてほしいんです。自分で考えて味わうからこそ、きっと美味しいし楽しい。そういう時間を提供できたら幸せです。
─最近は「SNSで見たのと同じものを食べたい」という楽しみ方をしている人も多いですよね。
藤田:そういう流れをわかってはいても、性格的に逆らいたくなるんです(笑)。どこかにあるようなものをつくっても仕方がないので、流行りは意識しないようにしていますし、周りのこともあまり見ないようにしています。
河内晩柑ラムレーズンと無花果ローズマリー
コーヒー豆や焼き菓子の販売もしている
「5年後、10年後にどうなっているかはわからないし、それでいい」
─実際にお店をやってみて感じたことはありますか?
藤田:今まで一人だったので、お店が始まってからスタッフが増えて、自分のプロジェクトを誰かと一緒にやるのはすごく不思議な感覚です。もちろん難しい場面もありますけど、スタッフがいることによって、一人ではできないことができていますね。自分にない経験をしてきたみんなから、刺激や学びをもらえています。
─今のお仕事を続けてこられたのはどうしてだと思いますか?
藤田:とにかく飲食の仕事が好きですし、新しい味や食材について考えたり、生み出すことには飽きないんです。自分の中だけで完結せずに、食べて喜んでくれるお客さんがいることも大きいです。
─アイスという枠の中でも新しいチャレンジを続けていることが大きいんですね。
藤田:とはいえ、20代前半の自分はアイス屋をやっているとはまったく思っていなかったですし、目の前のことを次々にクリアしていくなかでたまたま今ここにいるという感覚なんです。だから、5年後、10年後にどうなっているかはわからないし、それでいいと思っています。
─では、今後藤田さん自身のキャリアとして「こうしていきたい」という思いはありますか。
藤田:もちろんこのお店を守っていきつつ、見る世界が広がるほど、表現できるものが増えていくので、自分の中の芯をもっと太くしていきたいですね。「一度世に出たら下がったらだめだ」とパートナーが常々言っていて。早く独立したくて焦っていた時期もありましたけど、地に根が張っていないと大きな木になって花が咲かないから、まずは自分を深めて、地に足をつけて立つことが大切だと思うんです。
─前に進んでいる人を見ると焦ってしまうこともあるけれど、人それぞれの進み方がありますよね。
藤田:失敗したり、恥ずかしい思いをした時期もありましたけど、そういう経験が今になっていい形で返ってきていると思うんです。たくさん失敗して、自分を磨いて、エネルギーを貯めていると、来るべきタイミングは必ず来ますし、その時期は人それぞれなので、焦らずにいることが大事かなと思います。
text:Yuri Matsui photo:Mikako Kozai edit:Kei Kawaura外部リンク
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