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パントレンドのキーワード“サワードウ”って知ってる?

Hanako.tokyo / 2023年10月18日 12時0分

パントレンドのキーワード“サワードウ”って知ってる?

パントレンドのキーワード“サワードウ”。歴史ある製法のパンが注目された理由は、一軒のパン屋が発信したこだわりが詰まったパン作りへのフィロソフィー。そのクラフトマンシップへの共感からでした。

人気のサワードウとは!?

サワードウとは、発酵種のこと。パンを膨らサせコンプレックス(複雑)な風味を醸す、酵母菌や乳酸菌など多様な菌が共生する。歴史は古く、紀元前のエジプトではすでにサワードウを用いてパンが作られていたそうだ。その後ヨーロッパに伝播していった。それが今、改めて注目を集めている。
 
ブームの火付役となったのは、サンフランシスコに2002年にオープンした〈タルティンべーカリー〉だ。

「発酵種のサワードウは、小麦粉やライ麦粉といったパン種の原料や、その土地の気候や風土によって生育する菌のバランスが変化します。サンフランシスコではゴールドラッシュに沸いた1800年代半ばから〝サンフランシスコサワー種〞を用いたサワーブレッドがあった。〈タルティンべーカリー〉はその系譜とはまた別の新しいサワードウの流れを作ったところがひとつの大きな革命だったんです」

そう教えてくれたのはロサンゼルスの名店でシェフベイカーを務め、アメリカ西海岸流のパン作りを日本で実践する久保田英史さん。現在は、群馬県前橋市で〈クロフトベーカリー〉を営んでいる。

久保田さんのサワードウは大阪の修業時代に種分けしてもらった30年もの。そこに塩麹などを加え、独自の「カントリーブレッド」を生み出している。

「彼らの特徴のひとつは、ローカルな原材料を使用したこと。カリフォルニア州には厳しい州法があり、賃金や労働時間などに関してさまざまな制約が課せられています。だからパンを作る工程や種類の厳選など、常に高効率な選択を考慮しなくてはいけなかった。その中で彼らが自分たちの商品に付加価値をつけるためにとった手段がパンの高品質化でした。小麦粉は大手製粉メーカーのブレンド粉でなく、地元の小さな製粉所で挽いた単一品種かつトレーサビリティのとれた粉を挽きたてで取り寄せる。ほかの食材もできるだけローカルのものを選ぶ。当時、〈ブルーボトルコーヒー〉や〈フォーバレルコーヒー〉などサードウェーブ系コーヒーカルチャーもサンフランシスコで盛り上がりましたから、品質のいいものに対価を払うことには理解があった。リーマンショック後のアメリカでは、今手にしている1ドル札を何に使うかが問われていました。同じパンでも生産者の顔が見える付き合いの中で地域の素材を使い、地元の循環・活性化に繋がる〈タルティンべーカリー〉のパンは価値があるよね、と買う側の意識を高めた。それがこの店が一気に注目を集める起爆剤となりました」

米・西海岸の「カントリーブレッド」への憧れを込めたというカントリー(1玉1,260円)。モチモチの軽い食感。

看板商品「カントリーブレッド」は、粉と水をかけ継いだ種を使った高加水の生地を高温で焼き上げたどっしりとしたサワードウブレッド。種由来の風味や酸味が強く、パワフルなインパクトを残す。もうひとつ、このパンがブレイクスルーした理由はその製法を〝門外不出〞とはしなかったこと。

「カントリーブレッドは作り方がシンプル。職人的なパンだけれど安定して作りやすく、家庭でも試せる。彼らは自分たちのレシピを公開し、惜しみなくその技術を伝えたんです。それがSNSなどを通じて広がり、一軒のパン屋の発信にとどまらぬ勢いで世界を席巻した。ここ日本にも当然そのムーブメントはやってきました。ローカルの特性を活かす〈タルティンべーカリー〉的サワードウの〝哲学〞は、実は日本の風土にとても合っていると思います。小麦の生産は日本各地で根付き、在来種や現代品種など多様性がある。その土地でしか味わえないパンを生んでいます。また、各地にそれぞれの特徴を持った醸造文化もある。ただ、日本は惣菜パンや菓子パンがまだまだパン食文化の主流。その中でサワードウのパンをどう食事と共に食べるかということがもっと発展する必要がある。それが叶えば日本は世界のパントレンドをリードする存在にもなれると思います」

CROFT BAKERY

住所:群馬県前橋市日吉町2-5-1 みずき館1F
TEL:027-257-9052
営業時間:11:00~18:00 日月木休
Instagram:@croft_bakery

2012年オープン。地元の生産者や製粉所とのつながりを大切に国産小麦を主に使用し、パン作りをする。地元食材を活かした惣菜パンや「みそパン」も人気だ。

「サワードウ」ブームのきっかけとなった〈タルティンベーカリー〉

トーストやホットサンドなどセイボリーメニューも充実している。

タルティンベーカリー工房の中。パンがどんどん焼き上がる

チャド・ロバートソンと妻のエリザベス・プルーイットによりサンフランシスコのミッション地区に2002年に開店。2008年に食のアカデミー賞とも呼ばれる「JAMES BEARD FOUNDATION AWARDS」を受賞する。2010 年にカントリーブレッドをはじめ、自身のパン作りへの背景や思いを込めたレシピブック『TARTINE BREAD』を発売し、瞬く間にベストセラーに。NYタイムズでは「これまで出版された中で最も美しいパンの本」と評され、名実ともにサンフランシスコを代表するベーカリーに。2016年〈タルティン・マニュファクトリー〉を開店したほかソウルなど国内外に系列店を展開。信念を持ち、20 年以上研究を続けるチャドは多くのベイカーに影響を与えている。※写真は2020年に撮影したものです

タルティンベーカリー

住所:600 Guerrero Street San Francisco, CA
TEL:415-487-2600
営業時間:8:00~17:00
定休日:無休
HP:https://tartinebakery.com/

よりよいパン作りの追求を今も続ける。現在、サンフランシスコに3店舗、ロサンゼルスに5店舗、ソウルに6店舗を構える。

photo_Kenya Abe text_Kana Umehara coordination_Hiroko Kato

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No.1225 『美味しいパンには、理由がある』 2023年09月28日 発売号

リニューアル二冊目は、まるごと一冊、パンの特集です。 朝、昼、夜に、おやつの時間と、美味しいパンは私たちの必需品。 探究心と遊び心を持つパン職人のおかげで、日本のパン文化は今日も進化しています。 生産背景がわかる国産小麦にこだわり、地方では薪窯でパンを焼く人が増え、 室町時代から続く麹屋の麹を採用した発酵パンも作られています。 活躍シーンも広がり、ワインに、ビールにぴったりなパンも登場。 お取り寄せできるお店も増え、食べ方も、買い方も、多種多様になりました。 北海道から沖縄まで、評判のパン屋を巡り、美味しいパンが生 …



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