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元五輪選手に聞く、女性アスリートと生理の向き合い方とは?

Hanako.tokyo / 2023年10月24日 18時30分

元五輪選手に聞く、女性アスリートと生理の向き合い方とは?

10月19日は「国際生理の日」。多くの人々に「生理」に関わる問題に気づきを与えるための記念日で、変化を生み出すために、過去にはアメリカ全土で大規模なデモが行われたり、世界各地で生理や女性特有の健康問題に関して考えるキャンペーンが実施されたりしている。そんな「国際生理の日」を前に、女性アスリートにとっての生理やPMS時の向き合い方をテーマにしたオンラインイベントが行われました。

取材した人:五月女菜穂

朝日新聞社に入社し、約4年半記者として活動。退社後はフリーのライターに。演劇にまつわる記事を執筆するほか、ハナコラボパートナーとしてSDGs関連の取材も多く手がける。海外旅行が趣味で、旅した国は40カ国以上。

女性アスリートと生理の向き合い方を考える

10月19日は「

国際生理の日」。多くの人々に「生理」に関わる問題に気づきを与えるための記念日で、変化を生み出すために、過去にはアメリカ全土で大規模なデモが行われたり、世界各地で生理や女性特有の健康問題に関して考えるキャンペーンが実施されたりしているそうです。

そんな「国際生理の日」を前に、2度の五輪出場を経験した

元競泳選手の伊藤華英さんをゲストに招き、

女性アスリートにとっての生理やPMS時の向き合い方をテーマにしたオンラインイベントが行われました。

聞き手は、オンラインピル診療サービス「メデリピル(mederi Pill)」や妊娠・出産準備に自宅でできるメディカルケアブランド「メデリベイビー(mederi Baby)」などを提供している

〈mederi〉の代表取締役・坂梨亜里咲さん

左から、〈mederi〉の代表取締役・坂梨亜里咲さんと元競泳選手の伊藤華英さん。

北京五輪出場の際にぶつかった“生理の壁”

ベビースイミングから水泳を始め、15歳で日本選手権に初出場した伊藤さんは「小さい頃から友達に会いに楽しく水泳をやっていたら、タイムが伸びてきて。特に将来のことを考えることもなく、目の前の水泳を楽しんでいました。ただ、

日本代表になった瞬間に少しずつ意識が変わりました。試合後にコーチや他の世界的な選手から『今、どんな気持ち?』と聞かれて、『緊張した』と答えたら、『

それがプレッシャーだよ』と言われて。遅いんですけど、そこから

少しずつ自覚を持ち始めましたね」。

2004年のアテネ五輪の出場を逃すも、2008年の

北京五輪では女子100メートル背泳ぎ決勝に出場(結果は8位)。当時23歳だった伊藤さんは、

生理の課題にぶち当たります。

「やっと人生最高の舞台に立って、ここで一生懸命頑張ればいいことあるぞという気持ちでやってきています。しかし、

月経が重なることが自身のストレスになりました。つまり、自分の月経のコンディションもあまり知らなかったのです。

月経が重なる=調子が悪くなるという自分の経験からのイメージがありました。自分のメンタルコントロールはほぼできていなかったなと思います」

現役当時を振り返る伊藤さん

4年後のロンドン五輪では、ひざと腰の怪我のため背泳ぎから自由形に転向。「人生の中で2回オリンピックに行けたらと思っていて、

ロンドン五輪で引退を決めていたので、引退後のことを人知れず、多くの時間をかけて考えていました。同年の岐阜国体で引退したんですけど、清々しい気持ちでした」。

伊藤さんは27歳で引退後、マットピラティスコーチの資格を取得し、早稲田大学でスポーツマネジメントの修士課程、順天堂大学でスポーツ心理学領域で博士課程を取得。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会で職員を務め、現在は

「生理スポーツ」の課題に対して向き合う「

スポーツを止めるなの1252プロジェクト」を進めています。また、プライベートでは妊娠・出産も経験しました。

生理のことを悩んでいても、誰にも相談できなかった

イベント後半では、改めて伊藤さんが

アスリートとしてどう生理と向き合ってきたのかが語られました。

「初経が13歳ぐらいで来てから10代は特に大変だなという意識はなかったんですけど、アテネ五輪を逃して、

ホルモンバランスの変化に相当悩みました。月経が来る前は本当にイライラしたり、練習がうまくいかなかったり、人間関係で落ち込んだり......。19歳ぐらいから生理に翻弄されたかなと感じます。痛みには耐えられる自信があったんですけど、気持ちの変動にどう対処していいか分からず。それが一番大変でした」

生理について悩んでいたものの、

婦人科を定期的に受診することはしていなかったそう。「生理は月に1回来るもので、来月も再来月も来るのが当たり前で、生理のことを人に言って何かが変わると思っていませんでしたし、

何か言ってはいけないこととも思っていました」。

実際に〈mederi〉が行った女性アスリートに行った調査でも、「生理/PMSのトラブルをコーチに相談していますか」という設問について、

64.6%の人が「相談しない」と答えています

〈mederi〉の代表取締役・坂梨さんは「痛みが生じて当たり前だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、

生理痛や生理不順は当たり前ではありません

放置しているとさまざまな婦人科疾患のリスクに繋がっていく可能性があります。産婦人科医にぜひご相談いただければと思います」とコメント。

産婦人科にかかることの重要性を訴える坂梨さん

伊藤さんは生理の課題に直面するなかで、

超低用量ピルや中用量ピルを服用したり、

子宮内避妊器具のミレーナを挿入したり、ケアをしてきたそう。また、メンタル面に関しては「現役中は自分のコンディションを繊細にキャッチするので、PMSになったときは『

このメニューだけは頑張ろう』と決めたり、

周りからの叱咤激励をシャットダウンしたりして、試行錯誤をしてきました」といいます。

「ライバルのことがすごく気になって、『自分の頑張りは足りないのではないか』と不安になることがありました。振り返ると、それは自分が弱いからではなくて。

実はきちんと自分の生理周期を把握できていたらケアできていたことかもしれないなと思うんです。今の若いアスリートたちには

周期を気にした方がいいよと伝えたいです。強さや弱さは周囲が決めることではないし、

大事なのはしっかり頑張れる/しっかり休めるというコントロールができることなんです」

イベントでは女性の生殖能力、妊娠する力の「

妊孕力(にんようりょく)」のことにも言及。

人間の平均寿命がのび、外見が若々しく美しい女性も増えていますが、生殖適応年齢は時代が進んでも変化せず、年齢と共に妊娠する力は低下し、速い人では40代前半、遅い人では50代後半に閉経を迎えます。

伊藤さんは「自分には月経が来ているから安心と思っていたんですけど、

実は排卵していなかった。やはり

ちゃんと産婦人科医に診てもらった方がいいなと思いました」と自身の体験を語り、「アスリートは限られた人がなって、さらに限られた人が競技を長く続けられていると思います。大事なのは、

自分自身の健康と自分自身の人生。今、健康に楽しく向き合えているか、向き合えていないか振り返っていただいて、今の自分の選択が絶対とは言わないまでも

正しいと思える選択をしていただきたいなと思います」と締め括りました。

text_Naho Sotome

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