超マニアック!フランスワインが2倍おいしくなるエチケットの小話10選
Hanako.tokyo / 2023年11月14日 16時0分
ワインボトル表面のラベル=エチケットは、ワインの顔であり、開ける前にその一本を知るための唯一の手がかり。4人の「飲み手」のプロが惹かれた、フランスワインのエチケットを紹介します。
ワインの履歴書とも言えるエチケット【フランスワイン編】
ワインにおけるエチケットは、飲み手にそれがどんなワインかを伝えるいわば履歴書。出自が記載されているのが特徴だ。「基本要素は『いつ』『どこで』『誰が』造ったか。加えて、フランスの原産地統制呼称制度(A.O.C.)を筆頭に、各国で地域ごとのワインの個性を守るための法律が定められており、その土地の高品質ワインの認証を得るキュヴェ(銘柄)には様々な表示義務が課されます」(ワイン輸入会社営業/齊藤誠也)。
4人の飲み手が惹かれたフランスワインのエチケットを10組紹介します。
1. ディディエ・ダグノー(ロワール地方)
ソーヴィニヨン・ブランの名手ともいうべき造り手。
「ヴィンテージ(ブドウの収穫年)によって全く味わいが異なるのも面白く、いずれも酸が綺麗。『ブラン・フュメ・ド・プイィ』のエチケットに描かれているのは友人の作曲家が『悪い噂』と名付けた前衛的なメロディー。不協和音も楽しみたいという芸術家肌のダグノーらしいデザインです」(医師/金由梨)
2. パスカル・シモニュッティ(ロワール地方)
有機栽培農法を中心としたブドウ栽培に力を入れる造り手。ガメイは樹齢の高い株を切って接ぎ木したものを使う。
「ガメイ100%で造られた『オン・サン・バ・レ・クイーユ・ペティアン・ナチュレル・ロゼ』は、キュヴェ名もエチケットも、セックス・ピストルズのアルバム『勝手にしやがれ!!』へのオマージュ。熱狂的なファンだそう」(建築家/干田正浩)
3. ジュリアン・クルトワ(ロワール地方)
自然派ワインの先駆的存在であるクロード・クルトワを父に持つ造り手。
「幼い頃からワイン畑で育ち、現在も自らの農園で様々な果樹を植えたり、動物を飼ったりと、多様性のある生態環境作りを目指す彼らしく、エチケットにはトンボや蝶、亀などの動物が描かれています。アーティストの妻による白と黒が印象的なデザインにも惹かれます」(医師/金由梨)
4. バティスト・ナイラン(ブルゴーニュ地方)
2015年からナチュラルワイン造りをスタート。
「比較的新しい造り手ながらも、特にガメイは古木を引き継いで栽培しており、複雑で旨味のある味わいが特徴。飲み手に、エチケットを見て楽しい気持ちになってほしいとの想いから、キュヴェごとに異なるアーティストに依頼するのも魅力的。そのセンスには出会うたび心を射抜かれています」(酒屋店主、パラレルワーカー/飯田明)
5. ヴィニ・ヴィティ・ヴィンチ(ブルゴーニュ地方)
ブルゴーニュの中でも特に北部のアヴァロンという村を本拠地とする造り手。
「冷涼なテロワールを反映して酸が豊かでチャーミングなスタイル。遊び心あふれる味わいは、かの有名な将軍カエサルの名言『来た、見た、勝った』に由来するドメーヌ名、そしてエロティックでキテレツな生き物をモチーフとしたエチケットにも反映されています」(医師/金由梨)
6. ドメーヌ・ボールナール(ジュラ地方)
標高400m以上の高原に囲まれた小さなピュピラン村に総面積12.5haの畑を持ち、ピノ・ノワールや土着品種のサヴァニャンなどを栽培。
「造り手の名前である“ボールナール”は、フランス語で、ボー=美しい、ルナール=狐の意となることにちなんで、狐が描かれた遊び心あふれるエチケットです。右向きなら赤ワイン、左向きなら白ワインです」(建築家/干田正浩)
7. フィリップ・ジャンボン(ボジョレー地方)
1997年よりボジョレーでワイン造りをスタート
「豚の絵が目を惹くエチケットが特徴。元来ハムを意味する造り手の名字ジャンボンに、ワイン名としてスライスを意味する単語を据え、“ハムの薄切り一枚”と読ませるジョークを効かせています。あえてふざけたエチケットで産地や格にこだわる人を皮肉っているそうですが、実際ハムに合います」(建築家/干田正浩)
8. ジェラール・シュレール・エ・フィス(アルザス地方)
アルザスにおけるナチュラルワインの先駆者
「『リースリング ル・ヴェール・エ・ダン・ル・フリュイ』というキュヴェは、本来“グラン・クリュ”のワインにもかかわらず、あまりに個性的なため格付けを認められなかったそう。ゆえに果実を虫が食う様をエチケットに描き、“組織のなかには虫が食うような体制がある”との皮肉をこめています」(建築家/干田正浩)
9. ルイ・ジャド(ブルゴーニュ地方)
ブルゴーニュ有数の大規模生産者。ネゴシアン業(買ったブドウでワインを生産する)に加え、特級や一級を含む有数の自社畑から造られるワインは秀逸
「スーパーでもお目にかかれる定番ですが、淡い黄色が目を惹くエチケットに、ローマ神話の酒の神様“バッカス”を掲げるだけあり、正統派であり実力派。樽香も魅力的で熟成にも向きます」(医師/金由梨)
10. ラルザン(コート・デュ・ローヌ地方)
2013年設立のレミ・ボヌトンと妻のパトリシアによるドメーヌ
「自社ブドウを使った“ドメーヌもの”には、画家でもあるパトリシアさんが、周囲への感謝をこめて“握手”の絵を描いています。一方、友達のブドウを使ったシリーズは、ブドウ同様エチケットも友達のアーティストに依頼。緑とピンクが美しい『ポティヨン』がお気に入りです」(酒屋店主、パラレルワーカー/飯田明)
ワインをこよなく愛する4人の「飲み手」のプロ
齊藤誠也(さいとう・もとなり) ワイン輸入会社営業ソムリエを経てインポーターに勤務。最近は日本ワインに熱視線を注ぐ。
飯田 明(いいだ・めい) 酒屋店主、パラレルワーカー夫婦で酒屋を切り盛り。ナチュラルワインを中心にストーリーのあるワインを好む。
金 由梨(きん・ゆり) 医師成人祝いにもらった1990年のアマローネを機にワインの世界へ。クラシカルな銘柄好き。
干田正浩(ほしだ・まさひろ) 建築家ワイナリーの設計も担当。ワイン醸造にも携わり、ブドウの収穫期は大忙し。
illustration_Natsuko Yoneyama text & edit_Emi FukushimaNo. 1226
No.1226 『もう少しだけワインのことを知りたい』 2023年10月27日 発売号
今日も町のレストランやワインスタンドには人があふれ、そこにはにぎわう場に欠かせないアイテムとなったワインが。楽しく飲む!が正解。でも、楽しければ楽しいほど、後日“この前飲んだおいしかったワイン、何だったっけ”となることはありませんか?それはとてももったいないことだと思うのです。今よりもう少しだけワインのことを知ることができたら、自分にとっての“おいしいワイン”を忘れずにいられるようになるかもしれません。 教科書は、町のグラスワインにワインショップに並ぶボトル。必要な知識・教養をまとめた「ワインがもっと楽しくなる基礎 …
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