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多くの後進を輩出した人気店オーナーと一番弟子が語る「いま、日本ワインを選ぶ理由」

Hanako.tokyo / 2023年11月14日 15時0分

多くの後進を輩出した人気店オーナーと一番弟子が語る「いま、日本ワインを選ぶ理由」

〈ザ・コンランショップ〉のレストラン〈ORby〉のプロジェクトに参加し、改めて日本ワインを掘り下げている紺野真さん。一番弟子で繁盛ワインバー〈サプライ〉の店主・小林希美さんと、ナチュラルワインと日本ワイン、これまでとこれからを語り合います。

いま、日本ワインを選ぶ理由

住宅街の小さなビストロから、麻布台ヒルズに開業する〈ORby〉(※)へ活動の場を広げる紺野真さん。「箱が変われば、出すワインも変わる?」という話から、愛弟子・小林希美さんと日本ワインについて語った。
ORby 紺野さんがプロデュースを手掛ける〈ザ・コンランショップ〉のレストラン。開業は2023年11月24日予定。

紺野真(以下、紺野)

ラーション(小林さんの愛称)はどんな日本ワインを出しているの?

小林希美(以下、小林)

〈ドメーヌ・オヤマダ〉、〈共栄堂〉、〈ドメーヌ・ポンコツ〉は長いお付き合いです。〈ファットリア・アル・フィオーレ〉も。ドメーヌ・オヤマダ山梨県笛吹市〈ルミエール〉で栽培醸造長を務めた小山田幸紀さんが2014年、農地の継承・活用や農業従事者の育成のためのペイザナ農事組合法人を設立し、立ち上げたワイナリー。共栄堂 山梨県山梨市〈四恩醸造〉の元栽培醸造長・小林剛士さんが2016年に設立。山梨市などの自社畑のほか契約農家のぶどうで造る、低価格高品質のデイリーワイン。ドメーヌ・ポンコツペイザナ農事組合法人所属、静岡県〈中伊豆ワイナリー〉で15年ワイン造りに携わった松岡数人さんのドメーヌ。2015年設立。ファットリア・アル・フィオーレ 宮城県仙台市でイタリア料理店を営んでいた料理人、目黒浩敬さんが2015年、宮城県川崎町で設立したワイナリー。

紺野

全部、人気生産者だね。今回二人で話をすることになった経緯を僕から説明するとね、Hanako編集部に〈ORby〉で出すワインについて訊かれて「日本ワインも扱いたい」と答えたのがきっかけなんだ。

小林

私が〈uguisu〉で働いていた頃から、いくつか日本ワインを扱っていらっしゃったけれど、やはり紺野さんはフランスワインというイメージで。

紺野

ラーションは岩倉久恵さんの下で働いていたから、日本ワインは僕より詳しいでしょ。岩倉久恵 浅草〈ラ・メゾン・ド・一升ヴィン〉店主。2004年、神泉に開業した〈BUCHI〉(現在は閉店)を筆頭に数々の繁盛店を率い日本ワインの普及に尽力。生産者からの信頼も厚い。

小林

いえいえ。ただ岩倉さんは、生産者を招いた試飲会を精力的にやっていらして、たくさん飲ませていただきました。なぜ次の店で日本ワインを?

紺野

少し長く複雑な話になるけれど。僕は〈uguisu〉を開いた18年前からナチュラルワインを扱ってきた。それは「マスの対極でありたい」という店の思想みたいなものと密接で。

小林

個のつながりで成り立つコミュニティのような店。昔からおっしゃっていました。

紺野

だから無名でもおいしかったり、愛すべき人間が造っていたりする、小規模生産のワインを扱いたいと思ってナチュラルワインに行きついた。

小林

当時は今のようなブームじゃなかったですものね。

紺野

そう。今やナチュラルワインは世界的なブーム。日本も、勝山晋作さんや、多くのインポーターさんの尽力があって、東京は世界中でもっともナチュラルワインが充実した都市とさえいわれる。そして同時期に、日本ワインも劇的に変わってきたのは肌で感じていて。勝山晋作 日本のナチュラルワインの第一人者。ナチュラルワインの祭典「フェスティヴァン」を開催し、造り手やインポーター、飲食店を巻き込んで、ワインの裾野を広げた。2019年に他界。

小林

ぶどう栽培から手がける小規模生産者が増えました。

紺野

〈ボー ペイサージュ〉や〈金井醸造場〉などが先駆けとして知られているけれど、彼らに影響を受けた世代がワインを造り始めている。その世代は、同時にナチュラルワインの影響も受けている。ボー ペイサージュ 現代日本ワインの父と呼ばれる浅井昭吾氏の薫陶を受けた岡本英史さんが2006年、山梨県北杜市に設立。農薬、酵母や亜硫酸に頼らない栽培・醸造を貫き、料理人やソムリエにも影響を与える。金井醸造場 山梨県山梨市で1962年に創業。1996年に三代目の金井一郎さんが加わり、ワイナリーを刷新。国内でもいち早く自然なワイン造りを進めてきた。

小林

海外のナチュラルワインの生産者の下で修業をした、日本の生産者も増えています。

紺野

ナチュラルワインと日本ワイン、二つの流れがあるところで交差したというか。〈ヴァンクゥール〉のような有名インポーターが、日本ワインの卸しを始めたのも大きかった。販売を委託することで、生産者は、ワイン造りに専念できるという。ヴァンクゥール フランス中心のナチュラルワインインポーター。勝山晋作さんとともに「フェスティヴァン」を主催するなど、シーンの礎を築いた。

小林

〈uguisu〉でワインに出会った私は、その〝交差〞の中でワインを覚えた世代。好きなナチュラルワインの中に、日本ワインが自然に含まれていた。

紺野

飲み手の嗜好も完全にクロスオーバーし始めた。僕自身も「日本ワインが話題だし、飲んでみよう」なんて気持ちでワインを探したことはなく。長く店を続けるうちに、ありがたいことに日本の生産者の方々が食事に来てくださったり、お客様が造り手を紹介してくれたりと、さまざまな縁で日本ワインを少しずつ置くようになったんだ。

小林

人と人とのつながりで成り立つ関係性。店の成長もワインのセレクションの変化も、個のつながりが大切なんですね。

紺野

だから日本ワインは、ごく限られた生産者のものだけだった。ここで話が〈ORby 〉に戻るわけだけれど。都心の商業施設内、〈ザ・コンランショップ〉という企業が経営する店で、50席規模の大箱と、僕がやってきた店と対極にある。

小林

はい。最初に聞いたときはとても驚きました。

紺野

そこで今まで通りのコミュニティ的な店を成立させることができるか、勝負したいんだよね。一方で、ワインは、より自由でいいと思っている。

小林

自由?

紺野

これまでの店は料理にせよワインにせよ「フランスに根ざす」ことを柱にしてきた。だから日本ワインも、ごく限られた生産者のものだけだった。けれど〈ORby 〉は、国に縛られなくていい。むしろ今の東京を表現する店が求められていて、するとワインは世界の産地から選べるし、海外からのゲストも多い店になるはずだから、日本のワインももっと紹介したい。

小林

なるほど。それで日本ワインなんですね。

紺野

そう。ラーション先生に教えを乞おうかと。

小林

やめてください(笑)。

紺野

問題は、新規生産者の多くがマイクロワイナリーだから、生産量が少なすぎてなかなか買えないという。脱インダストリアルで品質は向上しているけれど、痛しかゆしというか。

小林

確かに。

紺野

まあ、それは仕方ないとして、今、注目している産地や造り手、教えてほしいな。

小林

〈南向醸造〉は、ぜひ。ジュラの〈ミロワール〉でも研修されたようで、そのニュアンスを感じます。紺野さんが気になる産地や造り手も伺いたい。南向醸造 小山田幸紀さん門下生の曽我暢有さんが2021年に開いたワイナリー。ドメーヌ・デ・ミロワール 鏡健二郎さん・真由美さん夫妻による仏ジュラ地方のワイナリー。世界中で人気。

紺野

注目というか、ご縁が深いのが新潟。中でも〈フェルミエ〉と〈ドメーヌ・ショオ〉は、真逆の個性を持ちながら、それぞれに僕がワインに求めるものが詰まっていて。新店の開業前に、改めて一度お邪魔したいと思っていたけれど、一緒に行く?

小林

ぜひ、お願いします!紺野 真 (〈uguisu〉〈organ〉オーナーシェフ)

こんの・まこと/大学時代から10年をアメリカ・ロサンゼルスで過ごし、カフェに憧れ食の道へ。2005年開業の〈uguisu〉、2011年開業の〈organ〉から多くの後進を国内外に輩出。

小林希美 (〈サプライ〉オーナーソムリエール)

こばやし・のぞみ/学生時代、アルバイトで働いたカフェで飲食の楽しさに開眼。〈uguisu〉スタッフ第1号、その後〈BUCHI〉で5年勤務し、2019年、料理人の夫と現店開業。

photo_Satoshi Nagare text_Kei Sasaki

No. 1226



No.1226 『もう少しだけワインのことを知りたい』 2023年10月27日 発売号

今日も町のレストランやワインスタンドには人があふれ、そこにはにぎわう場に欠かせないアイテムとなったワインが。楽しく飲む!が正解。でも、楽しければ楽しいほど、後日“この前飲んだおいしかったワイン、何だったっけ”となることはありませんか?それはとてももったいないことだと思うのです。今よりもう少しだけワインのことを知ることができたら、自分にとっての“おいしいワイン”を忘れずにいられるようになるかもしれません。 教科書は、町のグラスワインにワインショップに並ぶボトル。必要な知識・教養をまとめた「ワインがもっと楽しくなる基礎 …



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