くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #8神田葡萄園のワインとクラフトジュース
Hanako.tokyo / 2023年11月30日 18時30分
岩手はワインもジュースもおいしい。きょうはその話をしたいと思う。
ワインを貰うのはうれしい。いいジュースを貰うのもうれしい。割れ物だし、重いし、持って帰るためのハードルは高いかもしれないけれど、その分貰ったときのうれしさもずっしりと来る。
わたしは職業柄いただきものが多い人と話す機会が多いのだけれど、実はみな「しょっぱいものか飲み物がうれしい」と口を揃えて言う。甘いものを貰うことが圧倒的に多いので、しょっぱいものや飲み物を貰うことのありがたみが増すのだそうだ(賞味期限が長いものが多いのも、うれしいポイントとのこと)。
そうならば、しょっぱいお土産と飲み物のお土産にもっと詳しくなりたいなあ、とこの頃は思っている。
わたしはお酒がだいすきだけれど、一向に詳しくなる様子がない。毎度「おいしい!」とにこにこして、翌朝には何を飲んだのか全く覚えていない。だから、ワインを紹介するのもすこしだけ緊張するのだけれど、これだけは自信を持っておすすめできる。
〈神田葡萄園〉の飲み物は、どれもすっきりとおいしくて、見た目もかっこいい。わたしが何度もいただいたことがあり、その都度ばんざいしてよろこぶのが、この〈神田葡萄園〉の飲み物たちだ。貰ってうれしかったので、誰かへプレゼントすることも多い。
〈神田葡萄園〉は岩手県沿岸部の陸前高田市という場所にあって、明治38年から続く老舗の会社だ。東日本大震災で工場と葡萄畑に大きな津波の被害を受けたものの、いまはワインづくりを再開している。
〈神田葡萄園〉は創業者の熊谷福松さんの「地に根付き、飾らず日常に溶け込む商品でありたい」という言葉を大変大事にされているのだが、わたしは〈神田葡萄園〉の、伝統と「いま」を両方同じくらい大事にしている飲み物づくりと、それを反映させたようなラベルのかっこよさにメロメロなのだ。
と、いうわけで、まずはワイン。「ナイアガラ2022」。
まずちょっと良いでしょうか、これ、この開け口~!
ガラス栓になっているので指だけで開けることができて、もし飲み残してもそのまま栓をすることができるので、わたしは全部のアルコールがこの栓になってくれたらいいのになと常に思っている。(コルクを開けるのがとっても苦手なので……)
栓を開けると、びっくり。
なんと芳醇な葡萄の香り!
昔、祖母の大きな畑の中に葡萄の棚があって、小さい頃、そこに実っている白葡萄を蜂から逃げまどいながら取って食べるというスリリングなことをしていたのだが、その時の記憶がぶわっと蘇った。白葡萄の畑の真ん中に立っているかのような、葡萄の濃い香りがする!
名前こそ覚えていないものの、さまざまな場所でいろんなおいしいワインを飲んできたわたし。しかし、こんなにワインの香りで感動したのははじめてのことだった。
メロメロになるような白葡萄の甘い香り。ひとくち飲むと、すっきり!もっと甘ったるいことを想像していたけれど、とってもさわやか。葡萄の香りだけが鼻に抜けて、なんともスマートな味。そうかい……そんなギャップがあるだなんてずるいじゃない。
HPを読むと「おすすめのペアリングはエスニック。生春巻きやトムヤムクンなど。また春には山菜の天ぷらなどとも良い相性です。」とある。へえ!エスニック!というわけでカルディの煮込むだけのペーストを使ってトムヤムクンを作った。
これがねえ、ちょっと、本当においしい。パクチーやナンプラーの癖のある味わいのあとにに、すっきりとしたナイヤガラが通ると、「むふ~」。タイ料理には薄めのビール一択だろうと思っていたわたしには衝撃。山菜にも合うんだろうな。
カンダクラフトジュース
続いて、こちらはカンダクラフトジュース。ノンアルコールで食事を楽しむ人のために用意されたスペシャルなジュースが多数ある中で、今回は「県産りんごと北限のゆず」と「赤」を購入してみました。
まずは「県産りんごと北限のゆず」。陸前高田特産の「北限のゆず」の果皮を、岩手県産ふじの果汁に数時間漬け込みボトリングした100%りんご果汁とのこと。いただきます。
わ。わ、わ、わ!
ちょっと~!おいしいんですけど!
甘くなくって、ゆずのちょっとした苦みも効いていて、これはたまらない。実はわたし、シロップのように甘いりんごジュースがどうしても苦手なのですが、これは全然違う。果汁100%なのが信じられないくらい、絶妙に調整されたんじゃないかというくらいお洒落な味がする。それなのにお子さんでもごくごく飲めるような親しみやすさもある。かっこいい。
冬はホットでも?そんな~、とくねくねしながら、マグカップに入れてレンジで1分温めてみました。
はあ、おいしい。しあわせな冬すぎる。温めることで甘みがすこし強くなって、柚子の香りも立つ。どんな失敗をした日でもあったかい「県産りんごと北限のゆず」を飲めばほっとできそう。
続いて、「赤」。自社畑産を含む岩手県産キャンベルとマスカットベーリーAを使用している葡萄のジュース。いただきます。
「こ、れ~は」と、仰(の)け反(ぞ)ってしまいました。うまい。こちらもしつこくなく、濃さを売りにした葡萄ジュースによくある、ほっぺの内側がぎしぎししてくるような渋みのようなものが一切ない。いくらでもごくごくいけちゃいそう。赤ワインのような気品を感じさせるさわやかさがありつつ、酸味と甘みのバランスがとてもちょうどいい。
もしかするといま、「でも、お高いんでしょう」って思っていませんか。こんなにおいしくて、かっこよくて、贈り物にもピッタリなのに、手に取りやすいお値段なのです。「地に根付き、飾らず日常に溶け込む商品でありたい」という意気込みが、価格からも伝わってきて、余計に購入したくなるブランドです。
ご褒美は毎日あっても足りない。年末も近づいてきたいま、おいしいドリンクはいかがでしょうか。
神田葡萄園の商品は、盛岡市内では肴町の「from」で購入できる。オンラインショップもおすすめ。
神田葡萄園住所:岩手県陸前高田市米崎町字神田33
公式サイトはこちら
作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。現在講談社『群像』にてエッセイ「日日是目分量」連載中。近著に『桃を煮るひと』(ミシマ社)がある。
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