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三部作を通して、「ジェンダー観」の移り変わりが見えてくる | 『マジック・マイク』シリーズ

Hanako.tokyo / 2023年12月11日 16時9分

三部作を通して、「ジェンダー観」の移り変わりが見えてくる | 『マジック・マイク』シリーズ

2012年にパート1が作られ、続編が2015年に、そして最新作が今年公開された『マジック・マイク』シリーズ。男性ストリッパーのマイク・レーンがシリーズを通しての主人公で、マイクを演じるチャニング・テイタムの実体験に触発されてパート1の物語は描かれている。シリーズの最新作『マジック・マイク ラストダンス』も配信サイトやサブスクでも見られるようになった。

この作品のテーマが毎回、少しずつ違っていて面白い。パート1は、

マイクや仲間のストリッパーたちの男性としてのアイデンティティ探しに焦点が当てられていると思ったら、パート2では男性ストリッパーは、

ステージで魅了することで女性たちを癒し、自らも癒されるのではないかという気付きが描かれている。この目線は、

現代の"推したり推されたり”という関係性にも繋がっていると言えるだろう。またパート3では、彼を舞台の演出家に抜擢する資産家の妻が登場することで、

抑圧された女性の解放やフェミニズムに、より焦点を当てた作品になっている。

なにものかになりたいのに、なれない。『マジック・マイク』パート1

シリーズのパート1で、マイクはフロリダ州のタンパに住んでおり、いつかはオーダーメイドの家具店を経営することを夢見て、昼は洗車サービスや、日雇いの仕事をこなし、夜は「Xquisite」というクラブで男性ストリッパーをしていた。

マイクは、どこかストリッパーという職業を仮のものだと思っているふしがある。女性と絡み合う"ラップダンス”といった肉体表現で人々を魅了する仕事だけに、若さが重要視される世界であると自覚しており、安定していないという考えがあるのだろう。もっと言えば、ストリッパーという職業自体に偏見を向けられることもあって、そこから脱却したがっているように見える。

また、ステージでチップをもらっていて、お金に不自由していなくても、社会的な信用がないのだ。夢であった家具店を起業をしようと、スーツを着て金融機関に融資の申請をしに行っても、信用度が低いとして融資を断られてしまう。それどころか、かなりの現金を持っているのにも関わらず、担当者の女性から“財政的に困難なお客様”とみなされてしまう。

そんなマイクは自分がスカウトした新人ストリッパーの姉であるブルックという女性に惹かれている。しかし、彼女から自分たちとは住む世界の違う「ヴァンパイア」と例えられたり、ケンカをした際には、「あなたは大ウソつきの30歳のストリッパーよ」となじられたりすることも。マイクは、「ステージの俺は俺じゃない」とブルックに告げ、刺激的なステージで踊るよりも、彼女とのまっとうな暮らしを選んだところで映画は終わっていた。

パート1では、

「なにものかになりたいのに、なれない」マイクの姿が描かれ、同じようなことに悩むことの多かった2010年代の自分を思い出させるものもあった。また、女性を魅了するストリッパーという職業に誇りが持てるかわからず、実業家になって愛する女性と暮らして社会的に認められたいという、まっとうな男性性を求めるマイクの焦りも描かれていたと思う。

マイクの変化と成長が見えた『マジック・マイク XXL』

続編である、『マジック・マイク XXL』では、また別のことが描かれていた。マイクは、夢を叶えて家具店を開いていた。しかし、仕事場で家具を作っている最中にSpotifyからストリッパー時代に踊っていた曲(Genuwineの"PONY")がかかり、ひとりでにからだが動き出してしまう。マイクは彼女と別れ、今の生活に物足りなさを感じていて、踊って人を魅了するという魔力に逆らえなかったのだ。

ちょうどこの頃、昔の仲間たちがストリップ大会に出場するということを知り、マイクもマートル・ビーチで行なわれるその大会に合流するため、会場までの旅をすることになる。

マイクは3年もストリップとダンスから離れているからこそ、心からやりたいパフォーマンスとは何か、目の前の女性たちが本当に楽しめるパフォーマンスとは何か、ということを考えるようになっていた。

ストリップを見ている女性の個々の背景も見えるようになっている。彼女たちにだって、日々の悩みがある。共にストリップ大会に出場する仲間の一人は、「彼女たちは日々男に耐えてるんだ、彼女の意見にも望みにも聞く耳を持たない男どもに、俺たちは聞いてあげて、”ステキだよ”と言ってあげる。まるでヒーラーか何かさ」と語り、マイクたちもその言葉に納得するのだった。

パート1でベテランストリッパーは新米ストリッパーを奮起させるため、「魅力で女を支配しろ」と助言していたが、パート2では、「女性を魅力で支配しろ」などという、

ミソジニックでひとりよがりな理論は出てこない。「自らのダンスの技術とそこから溢れ出す魅力で女を楽しませ、そのことで自分自身のアイデンティティも見つけ出せる」というスタンスに変わっているのだ。

パート1では、マイクは愛する女性と家具店を経営するという道を選んだため、映画の最後にストリップのシーンはなく、ダンス映画としても少々消化不良なところがあったが、パート2では、旅の途中で出会った女性たちに向き合うことで気付きを得て、更に高みを目指したパフォーマンスを見せる。マイクが心の底から楽しみ、すべての観客と呼応したパフォーマンスがこの映画のクライマックスの最大の見せ場となっていた。

しかも、以前のマイクは、ストリッパーとしてダンスを踊り、女性を魅了することにも、どこか自信が持てていなかったのだ。そこには、ストリッパーに向けられる偏見に抗う気持ちもあっただろう。性的なラップダンスを提供することで、女性に「消費」されるような気持ちもあったのかもしれない。

しかし、

観客の女性がストリップショーを楽しみたいという、その気持ちの根底には、彼女たちのそれぞれの生きづらい状況などがあるとわかり、また女性が欲望を露わにすることに対しても、男性と同じことなのだという理解ができれば、自ずと観客との対話ができ、自分の職業やダンスに対しても自信が持てるようになるだろう。パート2では、マイクの変化と成長が見えた。

パーミッション(同意)こそがセクシー。『マジック・マイク ラストダンス』

パート3である『マジック・マイク ラストダンス』の舞台は、アフターコロナの世界だ。マイクは経営していた家具店をパンデミックの影響による経営不振で畳み、マイアミで暮らしていた。ある日マイクは資産家の女性・マックスの豪邸でバーテンダーの仕事をしていたところ、彼女の部屋に呼ばれることになる。

彼女はマックスに対して「いくら?」と聞くのだが、これが性行為をすることなのかラップダンスをすることなのかが曖昧で、マイクも「何を買ったのか理解していなくても、俺はそれを提供する。やりすぎた場合は…」と言うと、マックスは「ひっ叩く」と答え、ダンスは始まる。

結局マイクはマックスと合意の上での性行為に至るのだが(つまりひっ叩かれることがなかったのだ)、マイクのかつての仲間たちはマイクに「セックスワークは恥じることではない」と言っていて、この映画のスタンスが感じられる。

その後、マックスはすっかりマイクを気に入り、ロンドンの歴史ある劇場でストリップのショーを成功させてほしいというビジネスを依頼。お金持ちの男性が女性に洋服を買ってあげるというシーンは『プリティ・ウーマン』を始めとしてたくさんあるが、ここではマックスがマイクを”リバティ”(ロンドンの老舗百貨店)に連れていき服を選ぶ。

しかし、いざ舞台の稽古が始まるとマイクとマックスは意見の相違でケンカしてばかり。しかもマックスは資産家の夫とは別居状態で夫は舞台を何かと妨害してくる。マックス自身も激しい性格な上に、何かを始めては飽きてやめてしまうことを繰り返してきたような人で、今回の舞台にも暗雲がたちこめるのだが……。

マイクは最終的にはマックスへの思いをダンスにこめて踊り、歴史ある劇場でのストリップ・ショーを成功させる。パート3では、マイクは、女性とラップダンスをするときには必ず「触っても?(いいですか?)」と尋ねるのだが、女性に必ず合意があるか聞くのが2023年の映画らしい。パート3のテーマには、女性の解放があると書いたが、

女性の解放には、男性側が女性を尊重する姿勢も不可欠であり、それは「パーミッション=許しや合意」とも無関係ではない

この映画には、

「一番従順でセクシーな行動は、ちゃんとパーミッション(同意)を得ること」というセリフがある。世間的には、同意を得ることは、ラブシーンでは野暮なことであるとか、気分がぶち壊し、などと言われることも多い。私もそう思っていたところもあるが、この映画を見ていると、

「パーミッションこそがセクシー」という考えに全面的に同意できる。

このシリーズは、

マイクが自分自身のアイデンティティを探していたところからスタートしたが、それは「男性とはこうであるべき」という独りよがりな性質もあった。しかし、

女性たちの話に耳を傾け、ダンスで対話し、癒すことで、自分に自信を持てるようになり、最終的には、どこか生きづらさを感じている女性を解放することを手伝える人になっていた。そんな変化が三部作を続けて見て感じる面白さだ。マイクを通して、ジェンダー観の移り変わりが見えてくるし、マイクは、三部作を通して、どんどんセクシーになっている。

text_Michiyo Nishimori illustration_Natsuki Kurachi edit_Kei Kawaura

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