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「人に頼ったほうがむしろ迷惑をかけない」#08 犬山紙子さん (イラストエッセイスト) 前編

Hanako.tokyo / 2023年12月29日 19時0分

「人に頼ったほうがむしろ迷惑をかけない」#08 犬山紙子さん (イラストエッセイスト) 前編

「最初の出会いは、私と峰なゆかさんのトークイベントの場に、友人がつるちゃん(劔さんの愛称)と来ていて紹介されて。その後はずっとほかの友人も含めて遊んでいた時期を経て、お付き合いをして、結婚しました。

その頃の私は、自分にも他人にも“自己責任論”を強く持っていて。母の介護をする時も、「決めたのは私だから弱音を言っちゃいけない」「辛い気持ちも私の責任だ」と自分を責める毎日。私自身も苦しくて、周りに向ける目もすごく冷たかった」

そう当時を振り返る犬山さん。ロックバンド「神聖かまってちゃん」の元マネージャーでもあり、漫画家、ダブエレクトロバンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」のベーシストでもある夫の劔さんとは、同棲を経て結婚したが「つるちゃんは私と真逆なんです」と話す。

「私が以前『ホームレスの人に自己責任の部分もあったりしないの?』と言うと、それまで一度も怒ったことのなかったつるちゃんが『絶対に違う』と静かに怒ったことがあって。夫は大学でホームレスの方々の研究もしていたので、高度経済成長の中、物のように消費された人たちのことや人には不公平な出来事が降りかかることを話してくれました。他者の事情がわからないのに断定する私に対して、本気で怒ってくれたことが本当に身に染みて。

その頃は、女友達を見ていても『彼女たちは“女だから”という理由でしんどい思いをしていることが多いな』と気づいたこともあったんです。なので、自己責任論やジェンダーの問題にしても、30代前半から40代前半の今までにいろいろと価値観が変わっていったところがあります」

時代が平成から令和へと移り変わり、世の中の価値観も変わっていった。若者ケアラー(18歳から30歳代のケアラー)として20代を過ごした犬山さんは、介護の時の経験が育児にも役立ったという。

「子育てにおいても本当に自己責任論が多いと感じています。私は介護をやっている時に自己責任論を持っていましたが、ヘルパーさんや姉と弟など助けてくれる人がいなかったら、どうなっていたかわからなかった。人に頼って、やっとなんと生きてこられた経験を踏まえて、

子育ての時は『人に頼ったほうがむしろ迷惑をかけないし、迷惑はかけても、かけられても良い』と考えています。ひとりで抱えて爆発したり、孤立したりするもっと手前でSOSを出せることが、きっと自分にとっても周りにとっても子どもにとっても、最善のこと。

SOSを出すと完璧なママじゃないとか、人に頼ると迷惑をかけるという考え方をしていると、本当に追い詰められてしまいます。私は介護でその気持ちを経験したので

だからこそ、家庭の状況に合わせて夫の劔さんは兼業主夫となるなど、夫婦で「家事や育児のバランスを話し合う」のだと言う。

「つるちゃんも私もフリーランスで仕事をしているので、結婚前に同棲していた時から経済的なことや、結婚後の今は子育てについてもよく話し合います。同棲していた時はまだつるちゃんの仕事量が少なかったので、家賃や生活費や食費を私が払うから、そのぶん家事をお願いしますと頼んで、料理や洗濯などいろいろとやってくれた時期がありました。その後、出産の頃には、つるちゃんの仕事量が増えていて、以前のように家事や育児を頼るとかなりの負担になってしまう。それは明らかに不公平だと妊娠中に思って、

おたがいの1日の仕事量が同じくらいになるよう、そして自分の時間も同じくらい持てて、眠ることができる。そんな暮らし方ができるやり方に整えようと2人で話しました

家事や育児のことを柔軟に話し合える犬山さんと劔さん。どちらか一方だけが家庭を背負うのではなく、夫婦2人で子どもや家庭を守っている様子が窺える。

「おたがいの考え方は共通しているところが多いので、子育てについてぶつかることはほとんどないですね。以前、

夫から自己責任のことで諭された時点で私の考え方がガラッと変わって、それからはリベラルな考え方になったと思います」とのことだが、場合によっては、親として子どもに注意しなければいけない場面もある。

「私が娘に怒る時は、『2人で言うと逃げ場がなくなるから、子どもの味方についてね』と話していて。まだ小学校一年生ですが、最近は勉強や進路のことで、つるちゃんと話すことが多いですね。私が子どもの頃、母はきっと愛情と将来のことを考えて、自分の力で歩ける子になってほしいという気持ちから、すごく勉強をするように言われました。「当時の女の子の幸せな生き方とされていた」女子高やお嬢さんが通う女子大に入れて、箱入り娘にして、お見合いでもして良いところの男性と結婚して……というルートを考えていたと思うんです。そういう意味では、私は進学について自分で選んでいないから、行かされた、という感覚。だからこそ、私の娘には、考えを押し付けたくないですし、人生の道を自分で選んでもらいたい。ただし、将来の道が広がる選択肢をたくさん紹介してあげたいです」

自分自身の子ども時代を思い出しながら、実際に今度は母親の立場になり、子どもへの愛情のかけかたを真摯に考える犬山さんだが「

これも私の人生のやり直しなのかもしれないと思うと、難しいですよね。私が自分の人生を選びたかったから今こうしているのかと思うことも……。ですが、今は自分で仕事も選べてやれているので、現状を考えると、そんなことないのかな。コンプレックスはもう強くはないのかもしれません。わが家では、子どもの意志が尊重されるなかで育ってほしいという方針で子育てしています

photo_yoshimi text_Amiri Kawamura 犬山紙子・いぬやまかみこ イラストエッセイスト、コラムニスト、コメンテーター

1981年、大阪府出身。大学卒業後、ファッション誌の編集者に。2011年にイラストエッセイ本『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス)でデビュー。以降、TV、ラジオ、雑誌、Webなどで活動中。2018年、児童虐待防止チーム「#こどものいのちはこどものもの」を発足。著書に『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)、『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)など。マガジンハウスの雑誌『anan』では「SanPaKuちゃんのわがまま気まま愛のRoom」を連載中。

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