人の役に立ちたいなら、まずは自分が楽しむ。元スノーボード日本代表 橋本通代さんに聞く、“自分らしい生き方”の見つけ方
Hanako.tokyo / 2024年1月31日 18時0分
橋本通代 話を聞いた人
ソルトレイク五輪スノーボードハーフパイプ元日本代表。 特定非営利活動法〈CHILL〉理事。「スノーボードを通じてキラキラと輝く子どもを育てたい」という思いから、2003年子どものスノーボード教室〈KIRARA KAMP〉を立ち上げ、2014年〜2022年オリンピック3大会を通して、8名の卒業生が活躍。現在は、拠点とする長野県軽井沢町で『グリーンリカバリー※』に取り組む。
※グリーンリカバリー:新型コロナウイルス感染拡大からの経済復興にあたり、環境に配慮した回復を目指す景気刺激策のこと。
“幸せとは何か”を探し求めて
「自分とはなんだろう」、「どのようにすれば、人や社会の役に立つことができるのだろう」。情報過多な現代では、「自分探し」がより難しく、そんな思いを抱えている人も多くいるのではないでしょうか。
スノーボードハーフパイプ代表として五輪出場をし、現在は子どもの育成をはじめ、スノーボードを通した様々な事業を行い、自分らしい生き方を見つけた橋本通代さんも、同じように悩んでいたひとり。
現在51歳の橋本さんは、自分探しをした子供時代、スノーボードに打ち込んだ選手時代、そして結婚、出産を経て、“自分を生きる”ことができる今にたどり着いたのでしょうか?
「私の人生は、13歳の時が大きなターニングポイントで、その時に真剣に“幸せとは何か”を考えたんです。自分の幸せは自分の心でしか決めることができないし、他の人には分からない。だから、自分を知るところからはじめようと思って、そこから、自分探しを始めました。」
「私の母はいわゆる“教育ママ”で、『大学に行かないと苦労するから絶対に行かないとだめだ』と言われていました。でも、たまたまその時の仲のいい友達がやんちゃな子で、母と両極端だったんです。お母さんにはエリートを目指せと言われ、でも友達は社会のレールから外れることを勧める。どっちいいの?と最初は迷ったのですが、『自分がどうしたいのか』よく考えたら、どっちを選んでもハッピーじゃないと思ったんです。」
スキーを通して、初めて全細胞が喜んでいる感覚が得られた
左からインタビュアーのKIKIさんと橋下通代さん。
13歳にして自分の意思がすでにはっきりしていた橋本さん。では、どのようにして「自分探し」をしたのでしょうか。
「真っ白なスケッチブックに、毎日自分の心の声を全部、文章にしていくことから始めました。ルールは無く、例えば『今日はピンクのこんにゃくの気分』とか、そのまんま書くんです。『今日のあれは嫌だった』と感じた時は『それはなんでかな』ということも書いていきました。
そうすると、自分の好きなこと、苦手なこと、嫌なことがどんどんわかってきたんです。それがすごく楽しくて、中学3年間はそれをしていましたね」
自分の内省をたくさん行った中学3年間。高校時代はたくさんの人に出会い、素敵な大人や大学生に刺激をうけ、大学進学を決意。そして、大学在学中に出合ったのがスキーでした。
「初めて『全細胞が喜んでいる!と感じるものに出合えた』と感じ、いつしかスキーの上達が自分の夢になっていました。大学の長期休みは自分の練習も兼ねて、白馬にこもってスキー場でアルバイトをしていました。その時、一緒にアルバイトをしていた女の子2人から、私が夢に向かってがむしゃらに練習する姿を見て『勇気をもらえる』とラブレターもらったんです。
『自分が自分のために頑張っているのに、人が喜んでくれるなんて!すごい!』と思いました。当初は、就職するか迷っていたのですが、自分が頑張ることで人が喜んでくれて、しかもそれを仕事にできると思い、就職活動をせずにスキーで食べていこうと決めました」
自分が輝くことで始まる好循環に気づけたから
卒業後、お金を貯めてカナダ・ウィスラーに24歳で移住。スノーボードに転向してからはトントン拍子に活躍の場を広げていった橋本さん。3年目にはプロ資格取得、ナショナルチーム入り。4年目からワールドカップ出場、6年目にはソルトレイクシティーオリンピックに出場を果たした。しかし、オリンピック出場後、燃え尽き症候群に。
現役時代の橋本さん。
「オリンピック直後、頚椎損傷の怪我をしてしまいました。怪我をしてから首の骨がくっつくまでの半年間の間は、全てから解放された気持ちで、『次は何しよう』と考えていました」
もともと子どもが好きだった橋本さん。自身の経験を子どもたちに伝えたいと思い、子供向けスノーボードの合宿〈KIRARA KAMP〉を開始。8人のオリンピック選手を輩出しました。
そして、2011年の震災をきっかけに軽井沢に移住し、スクールを開始。
「これまでは自分が誰かをキラキラさせたい、というつもりでやってきましたが、今は、スノーボードスクールをきっかけに、スノーボードを教える先生たちも輝くことで、自分が不在でも自動的に“スパイラルアップ”をサポートしていけたらと思っています。“スパイラルアップ”というのは、一人ひとりが自分色に輝く状態のこと。
うちのスクールで働く人は、クラスのはみ出しものみたいな、ユニークな人が多いんですが(笑)、みんなに自信を持ってもらうような言葉がけや、こうしたらいいんじゃない?ってもっと自分らしさを引き出すような工夫をしています。
人に必要とされるということが、彼らの自信になっていると感じますね。私自身、頼りぐせがあるので自然と人に頼ることができる。それがみんなの自信に繋がっているのかなと思ったりします。そんなこと言ったら調子いいこと言うな!ってなるかもしれないけど(笑)」
自分自身が輝くことでその輝きが周囲にも当たり、それがスパイラルとなって人が集まり、更に輝きが増す。橋本さんはそんなふうに考えています。
「“誰かのために何かをしてあげよう”ではなく、まずは自分がまっすぐに生きることが大切だと思います。実は、以前は『自分が楽しんだらいい』って言われてもそれが理解できずにいました。
自分が楽しむだけなんてダメなんじゃないかと。でもようやく気づけたんです。自分が楽しんでまっしぐらに突き進んでいっていたら、周囲の人達を自然と巻き込んでいて、その人たちも自然と輝きだすと。たまに迷惑かけることもありますけどね。たまにじゃないかもしれませんが(笑)」
「影響を与えたい」「何かしなきゃ」と思う必要はなく、自分が自分らしく生きることで人にいい影響を与えることができると気づいた橋本さん。その気づきが自分らしい人生へと導いてくれたといいます。
「だから、まずは自分が自分を満喫して生きるんです。その結果、人にいい影響を与えられたらいいなと思っています。自分がやりたいことは、“自分を生きる”ことだし、私ができることは、多くの人達が“自分を生きる”ことをサポートすることだと腑に落ちました。だから、今の活動ではそれを日々全力で体現しています」
自分が楽しんで、“自分を生きる”ことが何より人のため、社会のためになる。“自分を生きる”ことを精一杯頑張っていれば、それがスパイラルアップして社会にいい影響を与える。
他人がどう思うかではなく、自分自身の心に問いかけて、「自分を生きて」いればそれが社会貢献に繋がる。そんなみんながハッピーになる循環を橋本さんの言葉や活動から感じるとることができました。
KIKI(深井瑛子) 起業家、ヨガインストラクタースポーツ、旅関連を中心とした企業のマーケティングサポートを行う傍ら、ヨガインストラクターとしても活動。日本語の他、英語と中国語を話すトライリンガル。ハナコラボパートナー。Instagram:@vitamin_kiki
KIRARA KAMPの公式サイトはこちらtext&photo_KIKI 取材依頼、情報提供はHanako編集部にご連絡お願いします。問い合わせはこちらから外部リンク
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