「誰かのために」と始めたら、いつのまにか「自分の愉しみ」になっていた | 私がボランティアをする理由
Hanako.tokyo / 2024年2月7日 19時0分
「ボランティア」。興味はあるけど、いざやるとなると、どう探せばいいのか、そもそも自分にできるものなのか、最近自分の生活で精一杯だしな…など、なかなか行動に移せない人もいるのではないでしょうか。Hanako編集部Sもそうだったのですが、数年前思い切って、軽度の知的障害の青少年たちとリクリエーションや学習体験をする、目黒区青少年プラザ「ステップアップ講座」に参加してみたのです。そうしたら、あら、これ、誰かのためじゃなく、むしろダメな自分のための学びであり愉しみの場なのではないか、ということに気づきまして。でも私だけではサンプル1つ。そこで同じ場で活動する3人の女性ボランティアの方々にどんなきっかけでこのボランティアを始め、どんなことを思っているのか聞いてみることにした次第。
目黒区 青少年プラザ「ステップアップ講座」
軽度の知的障害のある青少年が、様々な体験をしながら楽しく学ぶ社会教育講座。活動日は、5月から3月までの第2、第4日曜日。ボランティアも随時募集中。
公式サイト
「活動は日曜日、月2回。スポーツ、工作、近隣の美術館を訪れたり、散策など。何をするかも大切だが、参加者主体の活動や、参加者同士、また、参加者とボランティアとの交流も重視している。写真提供・目黒区青少年プラザ「ステップアップ講座」
編集部S:
私も含めて4人、この「ステップアップ講座」のボランティアスタッフをしているわけですが、意外とちゃんと話したことがないですよね。まずはみなさんがボランティアを始めたきっかけを教えてください。
森田紗弓さん:
私は昨年(2023年)の5月からこのボランティアを始めました。コロナ禍も少し落ち着いてきて、少し人生を振り返ったとき、自分のためだけにひたすら生きてきたような気がして、なにか社会のためにできることがあったらいいな、と。ちょうどその頃、仕事の担当が「障害者雇用の推進」に変わったことで、学びにもなるのでは、と申し込みました。
堀川絵未さん:
私は社会人一年目で、その前は中国やフランスへ短期留学していたのですが、海外の学生や友人の多くがボランティアをしていて、自然とその話になるんですね。それを聞いていて、私もやってみようかな、と思ったのがきっかけです。
安藤雅美さん:
私はもともとNPO法人バディチームというところで有償ボランティアをしています。ここでは家庭訪問型の支援活動を行っていて、貧困や障害などさまざまな事情で子育てが大変なご家庭に私たちスタッフが訪問して、お掃除から料理、宿題を一緒に見る、プリントの確認など、親子がゆったり気持ちよく過ごせることなら何でもいろいろやるという感じです。そもそもボランティアを始めたきっかけは私自身が子供のころ、接する人や共同体が少なかったせいか、生きる上での選択肢や情報にあまりアクセスできない環境で育ったんですね。で、大人になってから「え、困ったら頼ったり相談できたりする人や行政やサービスがこんなにあるのか」と驚いて。支援を受けるべき人たちに選択肢や情報が届いていないこの状況を少しでも改善するには私たちは何ができるんだろう、と思ったとき、いろんな大人が子供たちと関わってそれぞれが知っている知恵や知識を教えていくのがいいのでは、と思って、この家庭訪問型の支援活動を始めました。そうして乳幼児から高校生くらいのお子さんに関わってきたのですが、このステップアップ講座は参加者が今まで関わってきた世代と違うということで、また違った視点や体験ができるかな、と思って2021年7月から参加しています。
編集部S:
初日のことって覚えていますか。
堀川さん:
障がいのある方ときちんと向き合うということが初めてで、不安はありました。新人のボランティアは1名の参加者を担当する、いわゆるペアになります。人見知りする方も多いと聞いていたので、相手にどんな風に話しかけよう、沈黙になったらどうしよう、とかいろいろ考えたり。ただ、始まったら、好きな芸能人が一緒で話が盛り上がったり、年も近いせいかいつもの友達といるような感覚になることもあって。「障害」という言葉だけが自分の中にあって、その中身にあまり触れたことがなかったので、少し視野が広がったような。
森田さん:
何回か通ってみて、「あ、これ、誰かのためじゃなくて、100%私のためのものだ」って気づいて。毎回、帰り道がポカポカというか癒された気持ちになるんです。工作や絵、社会見学や運動、参加者のみなさん、一所懸命なんですよ。あと、次にグループで何をやるか、話し合う時間が楽しくて。私、こういうピュアさにしばらく触れてなかったんだな、って。月2回ほどですが、もうほんと貴重な時間です。
約7〜9名ほどの1グループに分かれて活動、次回の活動内容はみんなで話し合って決めるのがルール。写真提供・目黒区青少年プラザ「ステップアップ講座」
こちらがオープンになると、参加者もオープンになる。
編集部S:
ここでの話し合いを見ていると何度もはじめの方に戻ったり、最終的に決まらなかったりもするんですが、参加者の顔がなんだか楽しそうで、豊かに見えるんですよね。
安藤さん:
自分の気持ちを素直に出しますよね。そういうのって大人も、子供も、障害がある、ない、関係なくみんな持っているものなのに、ずっと自分は忘れていたな、と。私ももっと自分の気持ちを時にはきっきりと出していくことも大事だな、と思わされます。
堀川さん:
自己開示というか、こちらがオープンであるほど、参加者さんもオープンに接してくれるので、最近はまずは私自身が楽しむことを心がけてます。逆にこちらがクローズドだと伝染するように向こうもクローズドになるので(笑)。仲良くなってくると、「この前話してた雑誌、これだよ」とわざわざ持ってきてくれたり、「昨日、彼氏とごはん食べた」とか教えてくれたり。また、すごく楽しそうに話す表情がいいんですよね。森田さんと一緒でほっこりします。
編集部S:
私は参加者に対してまだまだ壁を作ってしまっていて、表層的な部分だけでコミュニケーションしてしまっている感があるんです。だからもはや「自分のダメなところを変えるための場」になっているかもです…。でも本来、「お世話する人、される人」みたいな一方通行的なものではなくて、「与えたり、与えられりする」、双方向的なものだと思うんですね。もっと言えば、「損得」や「効率」「生産性」みたいな価値観を持ち込む場ではないというか。ここに来ると、普段自分がどれだけそうした考えにどっぷりつかってしまっているかを嫌というほど思い知らされます(笑)。と、長々と自分語りをしてしまったのは、読者の方に「わりと不真面目で、コミュニケーション力がない私のようなものでもなんとかなっているので、興味があったら気軽にどこか地元でボランティアを探して、一度試してみてください」ということです。
一度ボランティアをするとどんどんおかわりをする!?
堀川さん:
このボランティアをやってみて、私にも何かできるんだ、という手応えみたいなものを感じたせいか、実は他にもボランティアを始めたんです。欧州文化首都という文化事業の運営ボランティアで2週間ほどルーマニアのティミショアラに行ったり、あと赤十字語学奉仕団という赤十字本社のボランティア団体でアジア各国の高校生が交流するイベントを手伝ったり。
森田さん:
すごい、羽ばたいてる(笑)! 私は渋谷区にあるNPO法人の余暇活動支援の一つとして、障害者の方たちと一緒に劇団を作って公演するという活動があって、団員として参加しています。
安藤さん:
私は5年ほどいくつかのボランティアをやってきて、将来は人の居場所を作りたいな、と思っているんです。子供だけじゃなくて大人も誰でも来られて、そこに来たら誰かがいる、という場所を作りたくて。ごはんを作ったり、夫が本屋をしているので選書してもらって小さな図書館を入れたり。そのスキルアップのためもあってボランティアをしている部分もありますね。
編集部S:
ボランティアってやり出すとハマってきて、どんどんおかわり、というか増えていくのかもしれないですね。私は…まだここだけですが。
運営スタッフKさん:
Sさんはまずはこの「ステップアップ講座」の出席率を増やしましょう。最近、来てないですよね(笑)。
編集部S:
はい…。
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