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スイーツ仕立てのザクザク食感デニッシュに、甘い想いを忍ばせたシューマンの一曲を添えて。

Hanako.tokyo / 2024年3月2日 12時0分

スイーツ仕立てのザクザク食感デニッシュに、甘い想いを忍ばせたシューマンの一曲を添えて。

香ばしい匂い、ふんわりと口いっぱいに広がる弾力、食材を引き立てる小麦粉の優しい味。味覚、触覚、嗅覚…

あらゆる五感をもって、体中を幸せで満たすパンと在る時間に音楽があったなら、それはシネマシーンを切り取ったような特別な時間になるはず。

そろそろクラシックを学びたいと思っている大人の女性に、ヴァイオリニストの花井悠希さんが、パンと楽しむクラシックの魅力を伝えます。今回は、

心ときめくデニッシュと愛の告白に溢れる

シューマンのピアノ協奏曲を紹介します。

花井 悠希 ヴァイオリニスト

三重県出身。三重県四日市市観光大使。ハナコラボパートナー。3歳よりヴァイオリンを始め、東京音楽大学在学中2010年にメジャーデビュー。クラシックのテクニックをベースに、洋楽アーティストのカバーを行う《1996カルテット》のメンバーを務めている。現在はヴァイオリニストとしての活動の傍ら、演奏家としての視線でデザインした演奏家のためのドレスをコンセプトに提案するレディースファッションブランド《PANORMO》のデザイナーとしても活躍。インスタグラム:@hanaiyuki

ショーケースで輝く〈Laekker〉の鮮やかなデニッシュ

バレンタインという大きなイベントの余韻からなのか、2〜3月はいつにも増して

甘いものが気になります。これからホワイトデーも訪れますし、そういえばHanako3月号もスイーツ特集でしたね。こんな時、決まって伺いたくなるのが

代官山にある

デニッシュ専門店

Laekker〉(レカー)です。

小道に佇むお店のドアを開ければ、ガラスケースの中に

キラキラと輝く色とりどりの

デニッシュ

ジュエリーが並ぶショーケースのような煌めきに、思わず「わあ!」と声が漏れてしまいます。

季節のフルーツがのったデザートデニッシュから、

お食事系デニッシュまで勢ぞろい。土台となる

デニッシュ生地

クリーム

組み合わせる具材に至るまで、全て

オーナーシェフの小出さんお一人で作られています

〈Laekker〉のデニッシュは、

出来立ての食感が損なわないような

サクサク

パリパリ感を楽しめるのが特徴。相反するように

とろけるクリームの柔らかさ

フルーツのみずみずしさにも驚きがあって、初めて食べた時の衝撃を今でも覚えています。

その秘密は、

水分を減らしザクザクになるように振り切った

生地の焼き方。そうすることで

柔らかいクリームとのコントラストが生まれ、持ち帰った後も

美味しい時間が長続きするように

おまじない(という名のロジック)をかけているんですね。

左上から「フロマージュルージュ」「エルタタン」「キャラメルノア」「苺のデニッシュ」



ベーコン

ベシャメルソース

ラグーソースなどを組み合わせた

お食事系デニッシュは、

ワインと合わせて召し上がるお客様も多いそう。「

グリーンオリーブ黒胡椒」は開店当初から

定番

人気の高い逸品です。

グリーンオリーブ黒胡椒(右端)ほか、日替わりなども。

オーナーシェフの小出さんは、パティスリーで7〜8年ほど勤めた後、レストラン、ベーカリーと歩んでいた経歴の持ち主。

パティスリーではカスタードなど

クリームの製法

レストランではホワイトソースやベシャメルなどの

ソースを、

ベーカリーでは

生地の扱いなどを学び、ご自身にあったものを選び極めて、その全てをデニッシュに落とし込んでいます。そして、できるだけ

日本の生産者さんに還元したいという気持ちから、デニッシュ生地は北海道産の小麦とバター、フルーツなどの具材も国産の食材をメインに使っているそうです。

これからの季節にぴったりなのは「

苺のデニッシュ」。どこからいただこうかと迷ってしまう

完璧なルックスを前に、心を鬼にして(!?)、端のデニッシュ生地があらわな部分にかぶりつく。サクサクを通り越し、ペキペキペキと

小気味良い音。崩れるデニッシュは今何層壊れたか把握できそうなほど、

一枚一枚のエッジが立っていて、ここにいるよ、と主張をします。

中のカスタードクリームは

波打つようにトロトロで、表面に見える

いちごのソース

果実味

甘酸っぱさを口いっぱいに弾けさせます。水分量の高いさらっとしたフレッシュのいちごソースを、カスタードクリームと共にパイ生地と

一緒に焼き込むことで、水分が飛んで

ぎゅっと濃縮された味わいになるんだそう。
甘さ控えめなデニッシュ生地に、カスタードクリームのとろりとした口どけとトッピングされた

生の苺が甘く微笑んで、いつまでも

心を離さない余韻に包まれます。

次の時季まで待ち遠しい「

エルタタン」は

紅玉りんごが旬の

秋から冬だけのお楽しみ。焼き込んだ生地の

強い香ばしさが立ちのぼり、そこから舌の体温で溶かされていくようにバターが

じゅわりじゅわりと滲み出てきます。こんなに可愛い姿を留めている事が不思議なくらい柔らかくなったりんごは、カスタードクリームと一体になってもおかしくないほど、とろんとろん。大きな紅玉りんごを

キャラメルソテーし、170分じっくりじっくりと焼き込んだ故の

深みのある苦味、キャラメルの絡みつく風味、奥に見え隠れする果実の甘酸っぱさ。キュートの見た目とは裏腹に甘さも控えめで、

リッチでふくよかな味わいの渦に落ちていきます。

このお店のデニッシュは、お上品且つ綺麗に食べようなんて考えるのはやめましょう。勢いよくガブリといけば、極限までとろとろに仕立てられたクリームやフルーツソース、パリパリのデニッシュ生地の

鮮やかなコントラストと、

究極のバランスに出合えるのだから。
シェフの

経験が全て

注ぎ込まれ、一つ一つ

丁寧に仕立てられた作品のようなデニッシュたち。それ故、1日に生産できる数に限りがあり

売り切れ次第終了となってしまうそうですが、

予約も受け付けているとのこと。そんな尊いパンをぜひお迎えに行ってみてください。

今回訪れたベーカリーは…〈Laekker〉

住所:東京都渋谷区代官山町9-7 サインビューハイツ代官山
Instagram:@laekker_daikanyama

秘密の暗号で愛を語りかけるシューマン作曲「ピアノ協奏曲」

突然ですが、「

この曲聞いてくれるかな?君のための曲だよ」と言われたらあなたはどう受け止めますか?私はおそらく両手あげて喜べないタイプです(笑)。ですが、こんな

粋な演出だったなら

キュンとしてしまうかも…と思ったドイツ・ロマン派の騎手、

ロベルト・シューマンのエピソード。

バレンタイン

ホワイトデーと続いている季節、こんな

ロマンティックな楽曲はいかがですか?



ロベルト・シューマンは、

愛妻クララ・シューマンへの愛を、

楽曲という形でたくさん残しました。クララは小さい頃から“

神童”と言われ、

女性版モーツァルトとも呼ばれるほど

才能豊かなピアニスト。シューマンとクララの出会いは、元々ピアニストを志していたシューマンがピアノの師フリードリヒ・ヴィークの元へ通い始めたのがきっかけでした。そのご令嬢がクララだったのです。父ヴィークは二人の関係に猛反対。数々の妨害を繰り広げ最終的には法廷闘争にまで発展しますが、二人は無事勝訴し、晴れて1840年9月に結婚が許されました。
シューマン作曲の「

ピアノ協奏曲」はそんな

二人の愛を感じられる、妻クララへの

愛の呼びかけが織り込まれている作品です。

クララの愛称は、キアーラ(CHIARA)またはキアリーナ(CHIARINA)でした。クララはシューマンが考えだした架空の音楽仲間集団である「ダヴィット同盟」の一員でもあり、同盟員としてのクララの名前も「キアリーナ CHIARINA」。

第1楽章の冒頭、オーボエから始まるメインテーマのメロディは、クララの頭文字「C(ド)」音からC-H-A-A (ドーシーラーラ) と下降します。「キアリーナ CHIARINA」の綴りから、ドイツ音名に変換可能な4文字を抜き出すとC-H-A-A(ドイツ語の発音でツェー・ハー・アー・アー)となり、つまりド・シ・ラ・ラ。この「ドーシーラーラ」の

メロディの形こそ、

暗号のように散りばめたシューマンからキアリーナことクララへ向けた

愛のメッセージであり、

メインテーマとなるメロディなのです。

この

愛の暗号

第2楽章から

フィナーレへの橋渡し部分にも。

曲の中に暗号のようにそっと

彼女の名を忍ばせる…なんてロマンティックなのでしょう。ちなみに第一楽章の最初に書かれた「

affettuoso.(アフェトゥオーソ)」という音楽用語は「

愛情を込めて(演奏しましょう)」という意味。シューマンのクララに対する深い想いが伝わり、こちらの胸もときめいてしまいます。
公式な初演は1846年1月1日、ライプツィヒのゲヴァントハウスで行われ、指揮はこの作品を献呈したドイツの作曲家フェルディナント・ヒラーが、ピアノ独奏はもちろん妻のクララ・シューマンが務めました。

今回紹介した一曲「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」



作曲者:ロベルト・シューマン(1810~1856)


作曲年:1845年


演奏者:エレーヌ・グリモー(ピアノ)、ドレスデン国立管弦楽団、エサ=ペッカ・サロネン(指揮)


楽曲詳細:シューマンが妻クララのために書いた唯一の完成されたピアノ協奏曲。クララと結婚した翌年の1841年に書き上げた「ピアノとオーケストラのための幻想曲」を基に第1楽章を、1845年に第2、第3楽章を作曲し完成した。
フランス出身のエレーヌ・グリモーの繊細でありながら鮮やかで芯の強さを感じさせる名演が、クララの弾いた初演を想起させるよう。

text_Yuki Hanai photo_Hiroyuki Takenouchi

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