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くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #12中松屋の栗しぼり

Hanako.tokyo / 2024年3月29日 19時0分

くどうれいんの友人用盛岡案内 〜手土産編〜 #12中松屋の栗しぼり

岩手県盛岡市在住の作家のくどうれいんさんが、プライベートで友人を案内したい盛岡のお気に入りスポットと、手土産を交互に紹介します。

お土産にはさまざま気を巡らせないといけない。何個入りか、要冷蔵か、日持ちはするのか、配りやすいか。本当はこれを食べてほしいけれど、日持ちしないからなあ、と断念するおいしいものが岩手にはたくさんある。でも、日持ちしないものはおいしい。自分で食べるためでもいいから、何か一つでも気になるものを買って帰ってほしい。

今回はわたしが冬の期間、気合の入った出張のときに盛岡駅で必ず買うお土産を紹介する。

それは、〈中松屋〉の「栗しぼり」というお菓子。

〈中松屋〉は岩手県岩泉町の老舗“栗菓子処”である。栗のお菓子のことをずーっと考えているお店なのだ、すごい。その〈中松屋〉の看板商品である「栗しぼり」こそが、栗好きのわたしが最も好きな栗のお菓子なのだ。各地の栗のお菓子をさまざま食べる機会があっても、結局は岩手のこの「栗しぼり」に戻ってくる。

「栗しぼり」は栗の実と砂糖だけで出来ている、とてもシンプルなお菓子である。種類で言うと「栗きんとん」なのかもしれないが、個人的にはまったくの別物でこれはもう「栗しぼり」としか言いようのないお菓子だと思う。
高級感のある箱と和紙に包まれて、きゅっと結ばれたフォルムも愛おしい。

栗を練り、きゅっとまとめただけのごくシンプルなお菓子。
食べると栗のおいしさが口いっぱいに広がって、食べてすぐに(おいしい!)と目を大きくする人をわたしはたくさん見てきた。

しっとり、ほろり。栗の味がじわじわと押し寄せるようにして来る。舌ぜんぶが栗になる。栗本来の味を全く損なわない砂糖の甘さ。謙虚すぎない、上品な中の素朴さ。そして驚くほどのなめらかさ。栗を練ってまとめただけ。だからこそ、きっとその中にたくさんのこだわりが詰まっているのだとひとつ食べただけでわかる。

わたしは栗菓子としてはモンブランが大好きなのだけれど、これはモンブランが大好きな人にはぜひ一度食べてもらいたい。そして肩を抱き合って「なにこれおいし~!」と言い合いたい。「栗ッ!」と強さもあるのに「栗でございます」という気品もある(伝わるだろうか、伝わってほしい)。早口で語りたくなるおいしさに対して見た目のこの素朴さよ。なんてかっこいいんだ。

この「栗しぼり」、秋冬限定なので、寒い季節に岩手に来てもらえることがあればぜひ買って帰ってほしい。もし夏だったら? その時は栗あんの入った「水まんじゅう」が夏季限定であって、それはそれは美しく上品でおいしいのでおすすめ。

盛岡駅で購入できる通年商品としては「焼きマロン」がある。こちらはバターを使っており、「バター使うとこうか~!これはこれでおいしいな~!」となる。栗のプロ、本当にすごい。栗のことはもう〈中松屋〉に任せよう。

ほかにも〈中松屋〉には「はぜ栗」「饗(あえ)の山」「いせんさか」……さすが“栗菓子処”だけあって、栗のお菓子がずらり。それぞれのアプローチで栗の良さを最大限に生かしている。どれを食べても間違いなくおいしいので、ぜひ気になったものを手に取ってみてほしい。

帰ってお土産を食べながらお茶を飲むまでが旅。

中松屋

住所:岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉字下宿37
TEL:0194-22-3225
営業時間:8:30~18:00(無休)
HP:https://nakamatsuya.co.jp/

くどうれいん

作家。1994年生まれ。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』(BOOKNERD)、『虎のたましい人魚の涙』(講談社)、絵本『あんまりすてきだったから』(ほるぷ出版)など。初の中編小説『氷柱の声』で第165回芥川賞候補に。現在講談社『群像』にてエッセイ「日日是目分量」連載中。最新刊に『桃を煮るひと』(ミシマ社)がある。

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