鉄道3社が協力。観光列車はJR北海道再建の切り札になるか

HARBOR BUSINESS Online / 2019年2月27日 8時31分

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伊豆急行2100 系「アルファリゾート 21」改造車を使用する東急電鉄とタッグを組んだROYAL EXPRESS(プレスリリースより

 去る2月12日、JR北海道にまつわるビッグニュースが飛び込んできた。JR北海道とJR東日本、東急電鉄などが協力して観光列車を走らせるというものだ。

◆観光列車戦国時代に独自性を発揮できるか

 先述の3社とJR貨物が発表したプレスリリースによると、JR東日本が観光列車「びゅうコースター風っこ」をJR北海道に貸し出して、今年の夏に宗谷本線で運行。さらに、東急電鉄が伊豆半島で運行している観光列車「THE ROYAL EXPRESS」を2020年夏に道東エリアを中心に走らせるという。

 前者はJR北海道が販売から運営、運行までを行い、後者は東急電鉄が販売や車内サービスなどを提供してJR北海道が運行面で協力、いずれもJR貨物が北海道までの車両輸送に協力するという仕組みになっている。

 このニュース、経営難に喘ぐJR北海道にとっては久々の“前向き”な話題。もとより北海道は国内有数の観光地であり、四季を問わず日本内外から多くの観光客が訪れる。そうしたところで流行りの観光列車が走るのだから、期待するのも当然だ。

 ところが、「遅すぎる」という厳しい指摘をする専門家もいる。鉄道ライターのM氏は、「5年、いや10年は遅かった。経営面への好影響は限定的でしょう」と話す。

「今回の観光列車の取り組みは、以前国交省がJR北海道の経営再建に関して、観光列車の運行もしなさいと指摘をしていたことを受けたもの。JR北海道はほとんどノウハウを持っていないし、コストの負担も厳しいので、他社の力を借りることになった。事実上、車両を貸し出すだけのJR東日本はともかく、東急電鉄はもともと『THE ROYAL EXPRESS』も自社線ではなくJR東日本と伊豆急行という他社の線路上を走らせていたわけで、北海道までの車両輸送をクリアできれば今回の企画は魅力的でしょう。ただ、JR北海道について言えば、他社の力を借りなければこうした列車の運行ができないという段階になる前にやらなければ意味がなかった」

 たしかに、こと“観光列車”として考えればJR北海道は後進と言わざるを得ない。多くの観光列車が走ることで知られるJR九州では、その看板たる「ななつ星 in 九州」を‘13年秋から走らせている。さらに車内で食事を楽しむ観光列車というスタイルの嚆矢ともされる肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ食堂」も同年3月から運行していて、いずれも5年以上たった今でも人気の高い観光列車だ。

 さらに、JR各社はもとより、地方の中小私鉄や第三セクター路線も精力的に観光列車を走らせており、車内での食事や作り込まれた車両デザインなどが注目されることも多い。こうした動きは大手私鉄にも広がっており、先述の東急電鉄「THE ROYAL EXPRESS」や西武鉄道の「旅するレストラン 52席の至福」、東武鉄道の「SL大樹」、加えて今春からは西日本鉄道が「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の運行を開始する。時代は観光列車百花繚乱、競争も激しい戦国時代なのである。

「先行する観光列車のなかでも人気が高い列車を見ると、車窓や車両デザイン、食事、乗務員の接客などすべてにおいて高いクオリティを持っている。さらに、沿線地域の人たちが自主的に乗客の出迎えを行うなどの動きもあって、こうした点も観光列車の魅力のひとつになっています。そんななかで、JR北海道でも“観光列車を走らせた”という実績作りだけでは意味がないし、端から勝負にならないでしょう。だから他社の力を借りるのでしょうが、それは逆に“自社では何もできません”と宣言しているのに等しい」

 かなり手厳しい意見だが、大ブームになっているからこそ、自社性や独自性が問われているということなのだろう。

◆再建の切り札は「オープンアクセス化」

 しかし、北海道ほどの観光地を走るだけに、それだけでも充分ライバルたちに対抗しうるインパクトを持っているはず。たとえば、食事面で言えば、それこそ北海道はどこに行っても魅惑的な食材の宝庫だ。

「それはそのとおりですが、だったらなぜこれまでその豊富な観光資源を活かしてこなかったのか。今でも富良野線や釧網本線など、一部の路線では観光色の強い列車を走らせていますが、北海道の魅力を充分に活かしているとは言えないし、利用促進にはほとんどつながっていません。あれだけ他の地域がうらやむ観光地を走っているのですから、本来なら観光列車で他社に先行していてもいいくらい。それが他社の後塵を拝しているというのが残念です」(鉄道ライター・M氏)

 度重なる不祥事や経営難もあって、車両の新造も取りやめるほどのJR北海道。当然、観光列車への投資もままならないという事情もあろう。また、観光列車は地域活性化などの効果はあっても、直接的な利益はほとんどないという見方もある。しかし、もっと早い段階から“観光”に手をつけて、そのブランド化に成功していれば今日のような経営難を招くことはなかったかもしれない。

「もちろん、なにもやらないよりはマシです。JR北海道に期待をするというよりも、今回の観光列車の取り組みをキッカケに“オープンアクセス”、つまり他の事業者がどんどん北海道に乗り入れて観光列車を走らせるようになればいい。JR北海道は直接的な運行(運転など)と線路の保守をして使用料を受け取ればリスクも少なく収益になりますし、他社は培ってきた観光列車のノウハウを北海道で存分に発揮できるわけですから」

 JR北海道は、自社でも2020年までに特急型を含む観光列車を新造することを発表。すでに’18年には「北海道の恵み」なる列車も導入している。ただ、M氏が話すように観光列車は“作って走らせればOK”というシロモノではない。いかに良質なサービスを提供しつづけるかがすべてのカギを握るのだ。

 観光列車を走らせている某事業者の関係者は、「天気が悪くて車窓がまったく楽しめないときこそ腕の見せどころ。お客さまの満足度を天候のような外的要因のせいにせず、どんなときでも100%喜んでもらえるようにしなければ意味がない」と話す。

 はたしてJR北海道の“観光列車”はどんなものになるのか? そしてJR東日本・東急電鉄との協力はどんな効果をもたらすのか? 国交省の考える“JR北海道再建への秘策”は先述のオープンアクセス化だとも言われている。数年後、北海道を観光列車が縦横に走るなか、JR北海道が運行する列車はゼロ……などということにならないことを願いたいものである。

<取材・文/境 正雄>

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