沖縄県民投票、結果を捻じ曲げる下地ミキオ議員の呆れた言説とその背景

HARBOR BUSINESS Online / 2019年3月7日 8時32分

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「ミキオ算」が披露された下地ミキオ議員のTwitter

 2月24日に沖縄県民投票、正式には「普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋立てに対する賛否についての県民による投票」が行われました。

 当日の有権者数は115万3591人。投票総数は60万5385票となり、投票率は52.48%となりました。このうち、有効票数は60万1888票で、無効となった票が3497票でした。

 普天間飛行場のある宜野湾市、沖縄市、うるま市、石垣市、宮古島市の議会が県民投票の実施に反対し、最終的に「賛成」と「反対」以外に「どちらでもない」を加えた3択で実施することで折り合いをつけ、このたびの県民投票となりました。そして、改めて結果を振り返ってみると、このようになっています。

賛成 11万4933票(18.99%)

反対 43万4273票(71.74%)

どちら 5万2685票(8.70%)

 わかりやすいように小数点以下を四捨五入すると、ざっくり賛成が19%、反対が72%、どちらでもないが9%ということになります。言うまでもありませんが、沖縄県民が10人いたら7人は辺野古基地の埋立に反対しているということになります。さらに、年代別、支持政党別、地域別に分類しても、すべての年代、すべての支持政党、すべての市町村において「反対」が「賛成」を上回っていましたので、完全に「反対派」が圧倒的多数を占めているということになります。しかし、日本という国は、あらゆるデータが改竄される国です。恐ろしいことに、この数字さえも歪めて解釈する国会議員が複数存在したのです。その代表格が沖縄1区で比例ゾンビ復活の下地幹郎先生です。

◆下地幹郎先生の「ミキオ算」が斬新すぎる

 沖縄の政治家で唯一、靖国神社に参拝することを欠かさない日本維新の会の下地幹郎先生。2017年の衆院選では沖縄1区から立候補し、共産党の赤嶺政賢さんに敗れ、さらには次点の国場幸之助先生からも大きく差を離されているのですが、よりによって日本維新の会に所属しているため、小選挙区ではほぼダブルスコアをつけられて負けているのに、なぜか比例復活するというマジックになっているのです。

[当]赤嶺 政賢  69 共産党 6万0605票

[比]国場 幸之助 44 自民党 5万4468票

[比]下地 幹郎  56 維新会 3万4215票

[落]下地 玲子  59 幸福党   2594票

 投票率は57.36%でした。2014年の選挙では、沖縄1区で立候補した人が全員比例復活するという出来事もあり、これだけ差をつけられていても比例復活してしまう現在のシステムは考え直すべきだと思いますが、そんな下地幹郎先生が今回の県民投票について、こんなツイートをしていたので見逃せませんでした。

“県民投票が終わり、開票も終了しました。

「反対」43万4273票、「賛成」11万4933票、「どちらでもない」5万2682票、これに、投票に行かなかった55万余の県民を加えれば、「反対」は43万人超、「反対以外」が計71万人との結果になりました。”(下地ミキオ氏2019年2月24日のツイート)

 反対43万4273票に対し、賛成は11万4933票、どちらでもないは5万2685票なので、「反対以外」といった場合には、通常、11万4933票と5万2685票を足して16万7618票ということになるはずですが、下地幹郎先生は、あろうことか投票に行かなかった人たち55万人分を加え、計71万票が「反対以外」であることにしたのです。これが「ミキオ算」の始まりです。

”私が申し上げてきた「投票率64%、反対票39万票以上」という基準は超えられず、勝利者の軍配をどちらに上げることもできない状況が生まれてしまう事となりました。最終決着をつけるのは、やはり政治の力だと、改めて感じております”(下地ミキオ氏2月24日のツイート)

 さらに、下地幹郎先生は「投票率64%、反対票39万票が基準である」というオリジナルルールを作り、この基準を超えられなかったので、勝利者の軍配をどちらに上げることもできないと言っています。これは選挙ではありません。沖縄県民の皆さんがどう思っているのかを示すための県民投票なので、どっちが勝つとか負けるとかではありません。

「沖縄県民の7割以上は辺野古基地に反対している」という事実の確認です。そんなことすら分からない人間が小選挙区でほぼダブルスコアで負けていながら国会議員をやっているのですから、一体、どうなっているんだという話です。

 あげくに「最終決着をつけるのは、やはり政治の力だ」と言っていますが、下地幹郎先生は「反対7割」という現実に、投票に行かなかった人を数に加えるという歪んだデータを示し、「反対している人は少ない」とした上で、最後は「政治の力だ」と言っているのです。どう考えても、7割の民意を無視して基地を進める計画なのですが、下地幹郎先生とはどのような人物なのかという話を確認しておく必要があります。

◆下地幹郎先生は辺野古埋め立て受注会社の一族

 下地幹郎先生の父・下地米一さんは、国場組に次ぐ沖縄の大手ゼネコン「大米建設」の創業者であり、兄の下地米蔵さんは大米建設の社長をしている人物です。下地幹郎先生自身も大米建設の役員だった経歴があり、まさに「大米建設」は辺野古基地建設の工事を受注している会社だということになります(参照:「沖縄タイムス」)。

 ズッブズブです。沖縄1区で比例復活している国場幸之助さんは「国場組」の一族ですし、下地幹郎さんは「大米建設」の創業者の息子です。そして、国場幸之助さんは人妻に「パイズリしたい」とLINEを送っていましたが、下地幹郎さんは今回の県民投票で「ミキオ算」という新たな概念を生み出したのでした。沖縄1区で比例復活している先生方は、ろくなものではありません。

◆ミキオ算のおかしさを指摘されて開き直る

 下地幹郎さんが開発した「ミキオ算」は、県民投票の結果、7割の人が反対していると分かっても、投票に行かなかった人たちを「反対以外」に加えることで、「反対以外の人の方が多い」とする斬新な計算式ですが、投票に行かなかった人の中には、足が悪くて投票に行けないという人や、投票に行くつもりだったけど仕事が忙しくて行けなかったという人もいたはずです。

 僕も那覇市内の公園で「ほっともっと」の弁当を食おうとしているビルメンテナンス業のオッサンと話をしたのですが、「自分も投票に行くとしたら反対に投票した」という話をしていました。その時は「行かんのかい!」と思いましたが、「投票用紙をなくした」と話しており、世論調査などで反対が多そうだということはわかっていたので、面倒臭かったのかなと思いました。

 でも、そんな人は意外と多かったような気がします。なにしろ、沖縄県知事選の時にはどちらの陣営も負けるわけにはいかないということで、積極的に投票に行くように呼びかけており、時には、足の悪い高齢者を投票所まで送ったりしていたのですが、今回はそこまでする人はいません。

 また、県知事選の選挙期間は17日間ありましたが、県民投票は10日間です。1週間の差は非常に大きいので、あれだけ大々的に展開されている県知事選ですら63%程度であることを考えると、52%という数字はそこそこ関心が高かったと言ってもいいぐらいで、「県知事選の投票率を超えなければならない」というハードルは、ハードルなのにベリーロールで飛ばないといけないぐらいの高さになっています。しかし、ミキオ算のおかしさを指摘されてなお、下地幹郎先生はこんな投稿をしています。

“①今回の県民投票条例は、最初は沖縄県議会において辺野古反対勢力だけで決議された。私たちは、最高裁判決が出てしまっているこのタイミングでの県民投票には反対だったが、しかし県議会が決議した重みは重く、県民投票に参加することを決めた。”(下地ミキオ氏2019年2月25日のツイートより)

“②県議会が決めた県民投票において、住んでいる場所によって投票できない投票資格者があってはならないと考えたからだ。その事はしっかりと実現できた。この結果によって、辺野古反対の数が多かったことは明らかになった。私たちはこの43万票を尊重し、しっかりと受け止める。”(下地ミキオ氏2019年2月25日のツイートより)

“③ただ投票率が知事選より10ポイント下がった事も事実だ。改めて申しあげるが、辺野古反対が多数である事は否定していない。48%=55万人の県民が投票に行かなかった。「賛成」「どちらでもない」「投票しなかった人」が反対の明確な意思を示さなかった事も事実であり、この事も否定できない。”(下地ミキオ氏2019年2月25日のツイートより)

 下地幹郎先生は、県民投票が県議会の辺野古反対勢力だけで決議されたと言っていますが、下地幹郎先生がフィールドにしているはずの国会では、安倍政権の強行採決に文句の一つも言わず、むしろ決議している側に回っているのですから、自分がそんなスタンスでありながらフォールド外の議会に対して「反対勢力だけ」と口を出す矛盾をどう説明するつもりなのでしょうか。

 日本維新の会は「是是非非」だと言っていますが、実際には「是是是是」であることこの上なしです。また、投票に行かなかった人が「反対」に投票していないからと言って「賛成」と合わせて数えること自体が間違えているのです。意思を示さなかった人は意思を示さなかった人でしかなく、「どちらでもない」に投票した人以上にカウントするべきではありません。強いて言うなら、投票に行かなかった人は自動的に「投票に行った人たちの判断に委ねる」というものになるはずで、「反対以外」にカウントするのはフェアではありません。それを言うなら、小選挙区ではほぼダブルスコアで負けていながら国会議員をやっているご自分を否定された方がいいと思います。

◆都合のいい「ミキオ算」で炎上

“昨日の県民投票を受けて、今日は色々ありました。

 私のツイートが炎上したと聞きましたが、私の言っていることは全く間違いありません。

 反対の43万票を評価し、71万名もの、明確に辺野古に反対を唱えなかった行為に目を向け、自らの考え方で物事を進めない。

 これが当たり前の事だと思います。”(下地ミキオ氏2019年2月25日のツイートより)

「ミキオ算」の頭の悪いところは、投票に行かなかった人たちも加え、「反対」と「反対以外」に分けて計算してしまうため、「反対43万vs反対以外71万」としてしまうところです。しかし、この理論を賛成に置き換えて考えてみると、「賛成11万vs賛成以外103万」ということになるため、この状態で辺野古基地の建設を押し進めることは、反対を理由に工事を止める以上におかしいということになります。県民のおよそ9割が賛成していない基地を建設していいとする解釈には無理があるのです。約9割の県民が明確に賛成していないことについて、どうして考えないのでしょうか。

”今日も県民投票の影響があちらこちらで見られ、インタビューを2つ受けました。

 全県、どこの自治体においても県民投票が行えたことは良かったと思います。

「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択と、「白票を投じる」「県民投票には行かない」の計5つの選択肢が県民にありました。”(下地ミキオ氏2019年2月26日のツイートより)

 さらに、「賛成」「反対」「どちらでもない」の3択以外に「白票」と「投票に行かない」と混ぜるだとすると、「どちらでもない」と「白票」と「投票に行かない」の差は何かという話になります。

 賛成や反対にもグラデーションがあり、積極的に賛成する人と消極的に賛成する人、ガチで反対する人と雰囲気で反対する人がいると思うのですが、そういった意見は1つに集約するのに、どちらにも投票しないものだけ3つも選択肢があるなんて頭がおかしいにも程があります。「どちらでもない」を選んだ人と「白票」にはどんな違いがあるのでしょうか。例えば、「県民投票なんか意味がないわ!」と思っている人がいた場合、その選択は3つあります。県民投票に意味がないと思っているから「どちらでもない」に投票する、そもそも県民投票に意味がないと思っているから「白票」を投じる、そもそも県民投票に意味がないと思っているから「投票に行かない」です。なぜそういう人の選択肢ばかり充実しているのでしょうか。こんな不公平なシステムで「5択」と行ってしまうところが、下地幹郎先生が国会議員をやっていて大丈夫なのかと心配になるところです。

“昨日、「“反対”と“反対以外”」という論調でシンプルに県民投票の事実を述べたところ、批判や反響が多く返ってきましたが、その大部分は、正直私にとっても非常に残念な思いのするものでありました。”(下地ミキオ氏2019年2月26日のツイートより)

“43万という反対の数字は重く、無投票、賛成票、白票、どちらでもないに投じた71万の思い、特に、明確に意思表示しなかった人たちの思いが何であったかを、私たちは真摯に考える必要があると思います。

 43万の思いを決して過小評価してはおりません。

 現実的な話をしたい。

 それが私の率直な思いです”(下地ミキオ氏2019年2月26日のツイートより)

◆足立康史議員さえも呆れたミキオ算

 そして、こんなに論理破綻を起こしているのに、批判や反響の大部分が「非常に残念な思いのするもの」と言っているのですから、そもそも自分が残念な発言を繰り返していることに気付いていただきたいです。わざわざ「どちらでもない」という選択肢があるのに、「賛成」と「どちらでもない」を合体させて「反対以外」と括ることに何の意味があるのかがわからないし、それなら何のために「どちらでもない」に投じたのかが分からなくなります。「白票」まで合わせてしまうと、いよいよ「白票」を投じた意味はなくなります。ましてや投票に行かなかった人たちまで「反対以外」に加え、「投票に行ったら反対に投じていた」という人たちを無視していることが間違えています。こうやって統計が歪められていくんだということがよくわかるエピソードです。

 ちなみに、下地幹郎先生のツイートに対し、同じ日本維新の会に所属する足立康史先生が何を言っているのかを紹介しておきましょう。

”これは、論外ですね。”(足立康史氏2019年2月27日のツイートより)

 足立康史先生にまで「論外」と言われるのは、一体、どんな具合なんだと思いますが、この「ミキオ算」は足立康史先生の言う通りに「論外」です。これを平然と言えるところが国会議員として相応しくないので、最後に「ミキオ算」を使って、下地幹郎先生がどれだけの沖縄県民に信任されていないのかをご紹介しましょう。

 沖縄の有権者は115万3591人で、下地幹郎さんは沖縄1区なので投票できる人が限られているにしても、投票したのはたったの3万4215人しかいなかったということで、ざっくり3%の人しか下地幹郎さんに投票していません。つまり、「97%の人は下地幹郎先生以外」の選択をしているので、くだらない発言をしてドヤっている場合ではないのです。

◆公明党の山口那津男代表まで「ミキオ算」的なことを……

 この「ミキオ算」は、公明党の山口那津男代表も似たようなことを言っていました。支持政党別で見ると、基地に賛成しているのは、ほとんど自民党支持者と公明党支持者に限られるのですが、その公明党支持者でも今回の基地建設には「反対」と言っている人の方が賛成を上回る状態です。

 この民意をストレートに受け取らず、絶対投票率という新理論を持ち出し、基地建設を正当化する。沖縄で創価学会を離反する人が続々と出ていることに対する反省はまったくないようです。こうした民意が国会議員によって打ち消される日本は、果たして、民主主義国家と言えるのでしょうか。

<取材・文・撮影/選挙ウォッチャーちだい(Twitter ID:@chidaisan)>

ちだい●選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材活動を行う。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどをTwitterやnote「チダイズム」を中心に公開中。立候補する方、当選させたい議員がいる方は、すべてのレポートが必見。

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