韓国、高学歴貧困の現状。「幼い頃の夢を叶える人なんていない」

HARBOR BUSINESS Online / 2019年4月11日 15時31分

写真

ソウルのノリャンジンには就職予備校がひしめき、就活浪人が溢れる。中には10年選手も

 日本の労働市場が人手不足に悩まされる一方、韓国では若者の失業率の上昇が問題となっている。’17年には青年失業率(15~29歳)が過去最悪の12.3%を記録し、その後も劇的な改善は見せていない。’97年のアジア通貨危機以降、韓国では少なくとも’00年からこの状態が続いており、解決に至っていない。

 ’05年の82.1%から下降線を辿っているものの、大学進学率は70%台で推移しており、国民の約8割が大卒にあたる。しかし、大卒者であっても財閥系大企業に入れなければ30歳で年収200万円台が妥当な金額。そのため、高学歴貧困者の数が世界トップレベルにあると言えるのだ。そんな韓国の実態に迫った(通貨レートは’19年3月現在)。

◆地域別青年失業率が11.1%の都市の若者

 前回はソウルの若者について取り上げたが、地方在住の若者はどうか。’18年4月時点で地域別青年失業率が11.1%とダントツに低い蔚山に赴いた。蔚山は財閥・現代グループのお膝元であり、捕鯨も盛んなことで有名な都市。蔚山青年政策フォーラム常任代表のキム・ウソン氏は「蔚山は現代自動車の工場がありますが、労組が強く雇用の流動性が低い。そんな『既得権益層』と呼ばれる親世代がある程度経済力を持っているので、無職でも生活に困らない背景があると思います」と話す。ただ、昔は親子二代で現代グループ傘下の職を得られたが今はそうではなく、若者は自力で働き口を探すか、親元で暮らすことになるという。

 蔚山出身のキム・ユネさん(仮名・32歳)は韓国では上の中レベルの大学の経営学科を卒業後、民間企業でマーケティングの職を得た。年俸は2400万ウォン(約236万円)だった。

「私は最初から地元での就職を希望しました。お金よりも、自分に合う仕事がしたかったので」

◆実務に関係のない資格ばかり取るためのムダな時間

 だが、ほどなくして迷いが生じた。超過労働を課すブラック企業だったこともあるが、就職のために経営学を選び、職に収まったことに対し疑問が生じたという。

「昔は貧しさから逃れる手段が学問でしたが、今は手段が目的と化し、学問の価値が下がっていると思います。それに韓国ではいかなる会社も学歴とは別に、実務と無関係の資格を過度に要求します。そのせいで明らかに過剰で無駄な勉強をさせられています」

 彼女自身もTOEIC700、IDCL、MOS、韓国史検定と4つのスキルや資格を取得しているが、就職して役立ったと思えるものはない。現在は会社を辞め、国史編纂委員会への就職を目指して大学院で国史学を学んでいる。

「今度こそ実のある勉強をし、それを生かせる仕事に就きたいです」

◆高学歴ゆえのプライド、親世代からの圧力

 起業も推奨されず、副業も日本ほど浸透していないため、貧困を打破する手段が限定的な韓国。韓国の若年層の失業問題に詳しい、梨花女子大学経済学部のホン・ギソク教授は次のように話す。

「韓国の青年失業問題はあらゆる要素が絡み合い、原因を特定するのが困難です。人口的要因と景気変動的要因から述べるならば、韓国でベビーブームが起きた’91~’96年生まれの世代が成人し、雇用市場を圧迫していることが挙げられます。さらに、労働市場の両極化と、高学歴者のインフレが起きている点も考慮しなければなりません。特に韓国は大企業とその他の中小企業の賃金格差が非常に大きく、そのうえ大企業の数が全体の1%しかないため、当然ながら大量にあぶれる人が出てきます。また、似たようなスペックばかりのため区別がつかない。それで政府からは、経歴を開示せずに選考する案が出ましたが、そうなるとさらに混乱が生じるでしょう」

 また、ホン氏はこうも指摘する。

「多くの韓国の若者は、大卒者であることの自負があります。韓国の貧しい時代を生きた親世代が、そう仕向けたからです。特にソウルの大学出身者はプライドが高く『自分にはもっとふさわしい仕事があるはずだ』と仕事をえり好みする傾向があるかもしれません」

◆生活のために夢を諦める人も

 青年労働問題に取り組む市民団体「参与連帯」労組委員長イ・ジョウン氏は「変わる余地はある」と話す。

「韓国の労働市場の問題の一つが、ミスマッチです。就職に時間がかかるので、食いつなぐため望まぬ仕事や苦しいアルバイトをする。生活のために夢を諦める人も多いです。そこで政府の経済社会労働委員会で、就職活動中の学生が就業するまで1か月50万ウォン(約4万9500円)を最大半年間支給する案が決定されました。また文政権発足後、最低賃金が30%上昇。それにより、アルバイトだけで生計を立てるのも不可能ではなくなりました。Uber宅配などの特殊雇用者(※業務委託と同意)も活性化されてくるでしょう。大企業に就職できなければ終わりといった硬直化した視点を脱し、働き方に多様性が出ると思います」

 韓国の高学歴貧困は、ほとんどの国民が該当するというパンチの効いた結果となった。デモで政権を転覆させるパワーがあるだけに、ぜひ起死回生を成し遂げてほしい。

<取材・文・撮影/和場まさみ 小野田衛 安宿緑 安英玉>

― 超絶格差社会 高学歴貧困in韓国 ―

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング