妻を抑圧するモラ夫を選んでしまう女性とは? 30年の離婚弁護事例から読み解く<モラ夫バスターな日々9>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年4月28日 8時33分

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結婚前に相手のモラハラを見抜くのは非常に困難だという

◆弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々」<9>

 夫からのモラハラ被害を受ける女性たちに共通の特徴はあるだろうか。

 優しい、努力するタイプの方が多いようには思うが、日本女性は、概して、優しくて努力家なので、被害妻たちの共通の特徴とはいえない。気の強い女性、聡明な女性でも被害にあう。強いて言うと、奥床しい、自責的な傾向にある女性が被害にあい易いとはいえるだろう。ただし、どんな女性でも、モラ夫を選んでしまう可能性は常にあると言って差し支えないと思う。

 モラ夫は、妻の非(多くの場合、ささいなこと)を執拗に指摘し、妻の控え目な性格、自責的な思いを徹底的に利用する。それは、ハードモラもソフトモラも同じである。妻が何か失敗すると、モラ夫たちは、その失敗をネタに妻を責め続ける。それを繰り返し、妻自身をして、「気が利かない」「ドジ」「私はいつも夫を怒らせる」と思い込ませる。

◆結婚に関するいにしえの教えには、有害なものも多い

 ところで、結婚生活に関する年配者の教えには有害なものも多い。

 例えば、よく言われる「結婚前は両目を開いてよく見て、結婚後は片目をつぶれ」などは、その筆頭格であろう。まず、結婚前は、お互いに欠点を隠す。モラ体質の強い男性も、意識的/無意識的に、モラ夫であることを隠している。離婚事件を多数扱っている離婚弁護士ならモラ夫であることを見抜けるとしても、結婚前の若い女性が、いくら両目を開いていても、相手がモラ夫であることはわからない。

 因みに、「結婚前両目」は、モラハラを受けた妻に対する、「あんたが選んだ男だろう」と反論する伏線であり、それ自体嫌みでしかない。

 そして、結婚後、モラスイッチが入り、日常的にハラスメントを受けても、上記の教えに従えば、「片目をつぶって」我慢することになる。他方、モラ夫は、結婚後は両目を見開いて妻のあら捜しをし、モラハラを行う。結局、片目の教えは、妻に我慢を強いるだけの結果をもたらすのである。

◆モラ夫には「立ててあげる」は通用しない

 モラ夫は、妻が逃げられない状況に至った時、或いは、自分に自信ができたときにスイッチが入り、モラハラを始める。結婚、第1子、第2子の出生、マイホームの取得、勤務先での昇進などがスイッチとなり得る。

 モラスイッチが入り、モラハラが始まったらどう対処するのがよいか。よくあるアドバイスは「夫を立てればよい」「我慢する」「反撃する」「諭して自覚を促す」などである。残念ながら、いずれも役に立たない。仮に、個別的にうまくいった例があるとしても、一般的には通用しない。

 モラ夫は、我慢したり、立てたりすれば増長する。反撃すれば、更に強い反撃が返ってくる。「諭す」と「何を偉そうに言っているのだ」と更なるモラハラのネタになる。

 モラ夫に対する対処方法は、ほぼないに等しいが、これについては、別の回に改めて述べる。

◆被害を受けた妻たちの肉体・精神はこうなる

 日本女性たちもモラ文化(男尊女卑、性別役割分担等モラ夫を育て許容する社会的文化的規範群)のもとで育っているので、モラハラの異常性に気が付かないことも多い。

 例えば、父が家長として君臨している家庭で育てば、夫の君臨も受け入れてしまうことが多い。そして、家長として君臨するモラ夫は、「お前が俺を怒らせる」と自分が怒ることまでも妻に責任転嫁する。妻は、怒られるのを怖れ、自分の言動に気を付けるようになり、ますます自責的になる。

 怒らせないようにすることが習慣化してしまうと、夫が怒るであろう行動の選択は難しくなる。しかも、日本社会では女性は差別され、給与も安いので、離婚した場合の経済的不安がある。

 子には父親が必要との思いもあり、離婚が頭をかすめても、自らそれを打ち消してしまう。周囲からも、「我慢が足りない」「男なんてそんなもん」と言われ、身動きができなくなる。自らの結婚を「失敗」にしたくないとの思いや、もしかしたら、夫が何らかのきっかけで優しくなるかも知れないとの期待も捨てきれない。その結果、モラハラを受け続けることを(消極的に)選択してしまう。

 しかし、心も身体も、自らの選択についていけない。その結果、感情が平たんになり、夫の帰宅時間が近づくと憂うつなる。ストレスが身体症状化し、心身症になったり、様々な疾病を引き起こしたりする。更年期が早まったりすることもある。突然涙が出たりなどの精神症状が出ることもある。

◆モラ夫との離婚で手に入れられるものとは

 モラ夫から逃げない自分を合理化するため、「夫は弁が立つ」「夫はソトヅラがいい(から私は理解されない)」「別居、離婚したら何をされるかわからない(ので怖い)」などと考え始め、自ら信じ込んでしまう。それが、モラ夫への従属度をさらに高めることになる。

 結論から言うと、モラ夫との離婚は難しくない。日本では、3組に1組は離婚している。離婚は、もはやありふれたことなのだ。確かに、経済的自立は必要になるが、モラハラ被害を受けなくなる解放感、幸福感は、経済的な苦労を補って余りある。

 モラ夫が改心することは極めて稀である。もしも、あなたがモラハラ被害を受けているのであれば、その被害から逃げることも考えた方がよい。

 この10連休、夫が自宅にいることで気が重い、重苦しいのであれば、あなたも被害妻である可能性が高い。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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