4・8経団連会長会見に垣間見える経団連の「恫喝」

HARBOR BUSINESS Online / 2019年4月30日 8時32分

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経団連YouTubeチャンネルより

◆4/8経団連中西会長会見をさらに深掘りする

 今回も、前回に引き続き4/8におこなわれた経団連中西宏明会長の記者会見について、その文字おこしをご紹介するとともに詳細に解説してゆきます。文字おこしは、ハーバービジネスオンライン編集部が行い、著者が記者会見を視聴の上で校閲しています。

 再掲となりますが、会見映像と資料はこちらとなります。なお、動画や図版については配信先によってはリンクが機能しなかったり、正常に表示されない場合もございますので、その場合は本サイトでご確認ください。

▼“提言「日本を支える電力システムを再構築する」に関する中西会長会見(2019年4月8日) – YouTube” (会見本体)

▼“中西会長定例会見(2019年4月8日) – YouTube” (質疑応答)

▼日本を支える電力システムを再構築する ― Society 5.0実現に向けた電力政策 ― 2019年4月16日 一般社団法人 日本経済団体連合会

・記者会見資料(リーフレット)

・概要(梗概)

・本文

 また、年頭会見については、会見映像が公開されていませんが、報道映像はこちらになります。

“「原発存続には一般公開の議論すべき」 経団連会長(19/01/01) – YouTube” ANN

◆全文起こしで振り返る経団連中西会長記者会見(後編)

※前回の『全文起こしで振り返る経団連中西会長記者会見(前編)』からの続き--。

中西:じゃあどうしたらいいのかって言うとですね、やっぱり今ものすごく電力についてもですね、大きな技術変化がまあある意味進歩と言えると思いますけれども起こっておりますしそれから環境もずいぶん変わっていると。

 従来のですね、化石燃料の価格の動向っていうか一番日本というのは資源がない国ですからその価格の動向をうまく勘案しながら最適エネルギーポートフォリオを検討していくって言うまあそういう事が基本だった訳ですけども、それでそういう経済原則の検討では片付かなくて再エネをどうやってもう少し安定的にうまく増やしながら使っていくのかまあ原子力の活用を今後どう考えていくのかとか、一番基本のところからですね、複数の可能性を想定してしっかりした計画を立てていくということが非常に重要であるというのはこの将来像の明確化という、これはあの、これ企業側でこれ全部やるっていうのはなかなか難しいんでこれはもうぜひあの経済産業省資源エネルギー庁にですね、しっかりとワークしてもらいたいというふうに思っております。

 そういう中でですね、企業から見ると、まあ再エネを増やすのかっていう課題というのが相当明確になっておりますし、ま、原子力もですね、徹底した安全対策というのはずいぶん進めて参りましたし、今後のことを考えるとですねさらに次のステップがあるだろうということと、それからまあ一番これコアでございますけれども送配電網の次世代化、従来だとですね大型な発電所をベースにしてそれを商品いかに効率良く運んできてざーっと使っていくかっていう、言ってみれば、ハイアラーキーのですね、地域ごとに、まあ割合孤立しててもあんまり連携が取れなくてもうまくいく送配電網だったんですけど、これはあの、太陽光が一番典型ですけども、場合によっては逆流もあるんですね非常に日当たりの良いその1日ですとですね朝の昼間なんかはむしろあの消費、屋根に乗っかってる電力だけで、東京都なんかは相当な規模になりますんで、場合によっては逆流すると。

 まあ要するに、上から下に流すんじゃなくて、まあ実は上から下っていうのは、あの電圧の高い方から低い方に流すんじゃなくて、低い方から上に流れていくっていう流れも出てくるとかですね、あのー、相当送配電網の中の動きも変わらざるを得ない。それに対応する設備投資がしっかり今できてない、したがって再エネも増やせない、そういうことなんですがそうするとですね、これこういうことは今これまで積み重ねてきた電力のビジネスモデルでは十分ではなくて、ビジネスモデルの作り替え、それをしっかりやっていくと同時に、単に儲かる儲からないだけじゃない、新たな価値に対してしっかりファイナンスを組み立てていこうじゃないかという。これは、ファイナンスと言ってる意味はですね、今、ESG投資という言葉がありますように、環境貢献ということは一つの社会的なバリューですから、それを結集したようなファイナンスの仕組みとかですね、そういうことを、やっていく必要があると。ま、料金体系もですねまあ、変えていかなきゃいけないと。まあそういう事をですね精力的に進めていかないと今すぐを進めていかないとこれ電力というのは投資してから実際にワークするまでにどうしても時間がかかります。

 配電設備なんていうのは特に大変でございまして、 場合によって大きな送電線を作ろうとすると、まあ鉄塔をどこに立てたらいいかという土地探しが始まりますから、すぐに5年10年かかってしまう訳で、そういうことをですね早急に手を打っていく必要があるというのがこの今回の提言の内容でございます。

 是非そのへんをですね、あの、理解いただいて、ぜひ幅広く議論ができるようなそういう報道していただきたい、そういうふうに思います。

 で、あの一部先行してい流れているなかで、政府の資金を経団連が求めてるというお話がちょろっとありましたけどそんなことは全然ありませんでして、まあそりゃあこの必要性を強く感じて、投資をしていただくということであれば大いに歓迎なんですけど、お金出してくれるって、そういう話じゃないんですね。これは今、巨大なマーケットですね動いてる話の、仕組みを作り変えることでうまい投資の循環をつくって、まあそういうことをぜひやろうということが議論、あの、お話でございまして、それも含めましてですね、経団連はですね、諸方面にはたらきかけて、さらに具体的なちいてん(聴取不能)を図っていきたい、私からは以上です。

◆検証「中西経団連会長会見」2

 中西氏記者会見の後半ですが、これは非常に解説しにくいです。理由は、中身がないからです。従って、「後半部分には中身がありません。」という解説で終わらせることも可能ですが、それでは余りにも表面的です。

 まず、中西氏の言う「電力についての技術的変化」ですが、これは、日本以外の世界では過去25年間に劇的な変化を遂げています。それは、電力自由化、発送電分離、新・化石資源革命、再生可能エネ革命などによるもので、北米全域と欧州全域(拡大EU)を中心に進行してきています。結果、電力は価格が低減し、同時にとくに合衆国においては環境適応も進んでいます。

 ここに前回の図を再掲します。Forbsというオジサン向け雑誌に掲載された記事であると言うことを重視して、あえてこの図を使っています。なお、引用元はForbs電子版です。

 図の緑色の帯が電力卸価格の帯域です。自由市場ですのでこれだけ幅がありますが、日本で言えば送電端(消費側=ブレーカー)での価格で2015年に6.5円/kWhから11円/kWhの幅があります。2003年では7.5円/kWhから15円/kWhであったわけですので、13年間で15%〜30%ほど電力卸価格は下がり、現在も低下傾向です。実際、米欧では、電力価格は長期的に一部の間抜けな国を除き下がるものというのが今世紀に入ってからの傾向といえます。

 ここで注視すべきは、大規模風力の価格のたいへんな安さと低位安定性、大規模太陽光の急速な価格低下です。

 2006年には27円/kWh(送電端)であった太陽光は、その後価格が急低下し、2006年には7円/kWh(送電端)となっています。10年間で1/4に下がっています。但し、合衆国の場合、日照条件がきわめて良く、都市に近接して広大な原野があることは日本と著しく異なる条件です。従って、日本ではここまで素晴らしい結果を出すことは困難でしょう。

 一方で原子力は8〜13円/MWh(送電端)に留まっており、低下し続ける卸価格の価格帯から外れたものは、当然脱落してゆきます。これに加え、2008年まで電力価格を押し上げていたコモディティバブル(資源・資材バブル)によって、電力卸価格が上昇していたときに多数計画・発注された原子力発電所は、その後のバブル崩壊、新・化石資源革命、再生可能エネ革命による電力卸価格の急落とその後の価格低下傾向によって事業性を失い次々とキャンセルされてしまいました。更に福島核災害によって原子力発電所の建設単価が2〜3倍に激増したことから、完全に芽を絶たれてしまいました。これが「原子力ルネッサンス崩壊」の実像です。

◆イカサマデータで行われた経営判断

 世界の電力網は、そういった一大変革に適応し、創り出すために変化し続けてきましたが、日本では全くそのような変革を起こしませんでした。それが、福島核災害前までとその後も続く実情といえます。その一つの道具が、発電単価などの長年にわたるごまかしによるもので、いわば偽統計、偽数値によって政策、経営判断を行ってきたのですから、国も経団連も電力も、自分たちが何をやっているのかすら分からなくなっているといえます。

 船で言えば、羅針盤は細工をしてアッパラパーな方位を示し、海図は偽もの、GPSは当然偽物で天測できる人間は粛清して誰もいないという状態です。まさにブレジネフ末期からグラスノスチ前のソ連邦と瓜二つです。

 むしろ、著しくゆがんだ制度設計と運用によって2010年に風力発電国策バブル崩壊を起こし、その過程において風力発電をNIMBY(Not In My Backyard:ご近所お断り=迷惑施設)化させてしまい、回らない風車などの風発詐欺を量産した結果、産業として信用失墜させしてしまいました。そしてそれを更に拡大して同じ事を繰り返しているのが現在の再生可能エネ国策バブルといえます。とくに2012年7月の現制度については成立過程からして狂気の沙汰であって、なぜこのような振り切れて狂った制度をつくり、それを漫然と運用してきたのかには、強い興味があります。

 このような状態では、経営資源の配分が正常でできるわけがなく、結果として、送電インフラへの投資が行き詰まりつつある。まさに自作自演の危機を演出しているわけです。

 結局のところ、経団連はエネ庁・国と結託して日本という虚構の箱庭の中で過去25年間の世界での一大変革から逃げてきたわけですが、その結果として製造業として火力を除き海外市場から脱落し、もはや二進も三進も行かなくなってきたというのが実情といえます。

 ここに三枚の経団連ポンチ絵を引用しましたが、どれもこれも流行のキーワードを適当にちりばめて、危機を煽る典型的な恫喝型ヒノマルゲンパツPAであって、全くの常套手段に過ぎません。

 偽造した統計、捏造した基礎数値、はじめから一つに決めている選択肢、形式でしかない議論により、常敗無勝の大失敗であった、エネ庁、経産、経団連が今後予定している市民に対するペテンと誤道、そして目指す結論が現れているに過ぎません。

<*:戦後、それまで品質管理という基礎概念がなかった日本に導入された、製造業における品質管理の一手法であるデミングサイクルを社会全体に拡大・一般化したもので、「→Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)→」の 4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善するという概念である。日本のみで大流行しており、小学校までがPDCAサイクルによる学校運営なるものをうたっている。実態は、単なる回る儀典であって、完全に形骸化し、有害無益な儀式、要するに時間とお金と労力の無駄という社会的害悪と化している場合が極めて多い。

 主に大学・役所・教育機関で大流行中であるヒノマルPDCAの実態は、「→Pray(祈祷)→Decay(劣化)→Cancel(中止)→Abandon((責任)放棄)→」といえる。度しがたいのは、このような無意味な儀典を役所ぐるみで布教する大学までが存在することである>

◆典型的恫喝型PAの中西会見、要点は3つ

 中西氏の記者会見では様々な恫喝的言辞が現れ、要は恫喝型ヒノマルゲンパツPAの典型なのですが、要は次の三つといえます。

・全く売れない原子炉を国内で売らせろ!

・国はカネを出せ、役人への見返りは出す!

・自分たちの電力代は下げろ!

 その為に中西氏が会見中に自白したとおりに経産省・エネ庁と共同して作ったのが今回の経団連によるヒノマルゲンパツPA=4/8中西会見といえます。

 現実には、現時点で稼働の見込みのない原子力発電所に6兆円*、再稼働9基にはテロ対策完了までに2〜3兆円の合わせて8〜9兆円の資金投入を行っており、それらはサンクコスト(埋没費用)になる危機にあります。更に完全に失敗して市場から追放された海外売り込みで1兆円近いお金を浪費しており、合わせて10兆円(核燃料サイクルでの浪費や福島核災害関連、廃炉関連は含めず)程度を過去8年間で原子力へ民間から投入し、それらが無駄になる高い可能性があります。無駄にならずとも投資効率は極めて低いものとなっています。

<*:“未稼働原発に5年で5兆円超支出 費用は主に電気料金:朝日新聞2018/3/8”、“3月8日付 朝日新聞「未稼働原発に5年で5兆円」について - 関連報道に関する当会の見解 | 電気事業連合会2018/3/8” >

 エネルギーベストミックス論は、第二次石油危機後に現れたヒノマルゲンパツPAにおける中心的教義(ドグマ)ですが、「原子力は規制の上に成り立つ」という大前提を忘れており、かつての蒸気発生器ピンホール(PWR)、シュラウド亀裂(BWR)、制御棒落下事故隠しスキャンダル(BWR)、福島核災害(全炉型・とくにBWR)、司法リスクの顕在化(全炉型)、規制リスクの顕在化(全炉型)*といった原子炉規制に関わる全炉長期停止、稼働率低迷を考えに入れてきませんでした。結果は、蒸気発生器やシュラウドの問題はあくまで技術上の問題で解決できた事ですが、それ以外は日本人が原子力をまともに使いこなせないという事実の露呈とそれによる重度の供給不安定という結果に至り、繰り返してきています。

<*:“テロ対策施設、未完成なら原発停止 再稼働原発の停止も:朝日新聞”2019/4/24>

 海外市場で全く通用しなかった日本の原子力産業ですが、国内においてもまともに使いこなせず、偽計によって使いこなすふりをした結果が福島核災害とその後の再稼働不能であって、そこへ恫喝型ヒノマルゲンパツPAを持ち込み、エネ庁、経産と結託して中央突破を図る、それが中西会見であると断ずるほかありません。

 ここまでわずか8年間に原子力一点買いで無駄にしてきた8〜10兆円と、人的資源を堅実な設備投資に回していれば、今回の経団連提言なるものは全く必要がありませんでした。

 いわば、ヘタッピ競馬狂いのオヤジが大穴狙いの一点集中でスッカラカンになるまで競馬でスッて、孫の貯金までを奪おうとしているのが中西氏の会見と言いましょう。

 本稿、次回は、中西氏記者会見の質疑応答について全文文字おこしと解説を行います。

『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第4シリーズPA編Ⅲ原子力産業・圧力団体による宣伝・政策活動−−3

<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:@BB45_Colorado photo by Nuclear Regulatory Commission via flickr (CC BY 2.0)>

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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