佐々木千夏・杉並区議が「日本平和神軍」って本当? 電話で直接尋ねたら……

HARBOR BUSINESS Online / 2019年5月8日 8時32分

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佐々木千夏・杉並区議(佐々木氏のTwitterより)

◆N国党代表が口にした「中杉弘」という名前

 4月21日に投開票が行われた統一地方選で、「NHKから国民を守る党」公認候補として杉並区議選に当選した佐々木千夏氏。その後、N国党から除名される騒ぎが起こると、かつてネットやパソコン通信で名を馳せた有名な右翼団体「日本平和神軍」の元幹部であることがTwitterなどで指摘されるようになった。これは事実なのだろうか。本人に電話で尋ねてみた。

 そのやりとりをそのまま記事にすべきかどうか迷った。明らかに、メディアに掲載するには不適切な内容だ。しかし公職についた人物の思想を明らかにするため、伏せ字なしで掲載する。言うまでもなく本サイトも筆者も、彼らの主張を支持しない。

 電話の内容をリポートする前に、今回の騒動になぜ「日本平和神軍」がからんでくるのか、流れをおさらいしておこう。

◆N国と佐々木区議の騒動の顛末

 N国党・立花孝志代表は統一地方選挙から約1週間後の4月29日、佐々木区議のほか八王子市議・若林修氏、豊島区議・沓沢亮治氏、西東京市議・冨永雄二氏の計4人を除名にしたと発表した。立花氏が130万円を党に収めるよう統一地方選当選者らに求めたのに対して、4人が拒否したことが直接の理由のようだ。立花氏は除名を発表したYouTube動画の中で、「4人のバックに中杉弘という『らあめん花月』の会長さんがいる」などと語った。

 中杉(本名=黒須英治)氏とは、かつて「日本平和神軍」の総督を務めていた人物。中杉氏ら日本平和神軍は中国や韓国、あるいはその国の人々に対する差別的な発言を繰り返してきた。軍服を着て集団で公道を行進する風変わりなパフォーマンスも、多くの人の目を引きつけた。その歴史は古く、90年代のパソコン通信「NIFTY-Serve」内にもウォッチャーがいたほど。「ネトウヨ」という言葉が生まれる前から、「ネット上で有名な右翼」だった。

 中杉氏が当時、ラーメンチェーン「らあめん花月嵐」を運営するグロービート・ジャパン社の会長を名乗っていたこともあって、当時からパソコン通信やインターネットでは日本平和神軍とグロービート社の関係が指摘された。

 そもそも、日本平和神軍はグロービート社の保養施設である「花月荘」(静岡県伊東市)を「平和神軍 士官学校」として使用していた。両者が深い関係にあることは一目瞭然だった。

◆かつて注目された裁判

 日本平和神軍を調査し掲載していたウェブサイト「平和神軍観察会」も、同様に日本平和神軍とグロービート社の関係を発信してきたサイトだ。

 同サイトには、「新進党はユダヤの手先」「小沢一郎も山本五十六も南雲中将もフリーメーソン」「国際化と言ってるのはみんな朝鮮人!」「神戸の大地震ね、あれもそうだから、あれみそぎですよ。朝鮮人が多すぎた」といった、中杉氏の説法テープの内容も掲載されていた。

「平和神軍観察会」の運営者だった会社員男性は、名誉毀損を理由にグロービート社から訴えられ、民事裁判では77万円の損害賠償、刑事裁判では罰金30万円の有罪判決が下っている。2010年まで7年間にわたる裁判だった。

 裁判では、日本平和神軍とグロービート社との間に関係があることは認められたものの、「一体とまでは言えない」とされた。また、サイト内の文章の一部に事実誤認や揶揄的な表現があったことが男性にとって「敗因」となった。

 しかし「一体とまでは言えない」はずなのに、グロービート社が勝訴すると日本平和神軍のウェブサイトに「勝利宣言」が掲載されるということも起こった。男性は裁判に負けたものの、日本平和神軍とグロービート社の関係はそれまで以上に明らかになった裁判だった。

 訴えられたのは膨大なサイト内のごく一部の記述についてのみ。サイトの内容の大半は正確で、ジャーナリスト顔負けの調査による独自情報も含まれていた。訴訟に至っても男性は「自分が泣き寝入りすればネットの表現の自由が萎縮しかねない」と、最高裁まで闘い抜いた。インターネット上の「表現の自由」に関わる重大な裁判で、判決時には新聞も含め複数のメディアが取り上げた。

◆佐々木区議本人に電話で確認

 佐々木氏は、この日本平和神軍の「野中広子中佐(総督第二秘書)」だったと言われている。「野中広子」の名は実際に日本平和神軍のウェブサイト(すでに閉鎖)に掲載されており、ある時期以降は「佐々木千夏中佐(総督第二秘書)」と掲載されていた。

 日本平和神軍との関係は、昨年6月に行われた杉並区議補選に佐々木氏がN国党から立候補したとき、すでに話題になっていた。それが先月末のN国党の除名騒動で、さらに注目され話題になるようになったという経緯だ。

 N国党をめぐる今回の騒動では、立花氏がTwitterで佐々木氏からのメールを公開した。そこには「NHK問題の本質は、内部に朝鮮人が増えたからこそ発生した」などと書かれていた。

 佐々木氏は今回の杉並区議選の選挙公報にも、「NHKの問題」として「職員の外国人数を非公開」と記載。さらに「NHKと政治の問題」として、「既存政党はNHKと結託し国民を自虐史観に洗脳、存在しない従軍慰安婦に税金から10億、二重国籍議員がこの謝罪外交のバックマージンにより私腹を肥やしているのが現行政治です」と記載していた。

 現在、Twitterなどでは、佐々木氏が日本平和神軍幹部であったことは自明のこととして語られている。しかし少なくともネット上には、その事実を証明する物証を見つけることはできなかった。

 日本平和神軍が活動していた当時を知る人からの資料提供を受けて、同一人物であることは確認できた。しかし、やはりここは本人に直接聞いてみるべきだろう。そう考え、杉並区議選の選挙公報に掲載されていた佐々木氏の携帯電話番号にかけてみた。

 佐々木氏は、自身が日本平和神軍の野中中佐であり佐々木中佐だったことについて、あっさりと認めた。中杉氏が経営する学位販売会社「イオンド大学」や「日本催眠カレッジ(催眠大学校)」にも「佐々木千夏」の名があるが、これも本人であると認めた。

 佐々木氏の説明を要約する。

「平和神軍は、もうずいぶん前に自然消滅しています。非常に懐かしいです。最後に活動したのは19年くらい前ではないかと思います。その頃まで講習会があったと記憶しています。暴力的な団体ではなく、日本精神を学ぶ思想集団の将校です。いまは『正理会』(しょうりかい)という団体で、中杉先生が名誉会長、私は副主任教授という立場。平和神軍にいた朝鮮人はみな脱走して、正理会は全員日本人です。正理会は仏教や神道の教えに基づいた団体で、カルト宗教ではありません。民衆を騙す幸福の科学や創価学会のようなことは全くありません」

 正理会は、日本平和神軍が活動していた頃からすでに存在していたという。日本平和神軍の機関誌のタイトルも『正理』だ。

 N国党・立花代表が暴露した佐々木氏のメールも、本物だという。そこには「二重国籍の国会議員が250人いる」かのようなことも書かれていた。

「『二重国籍』と書いてしまいましたが、言葉足らずでした。帰化人のことです。DNAまで調べることはできませんので、各議員の発言や政策を元にしています。『國民新聞』に載った『帰化人国会議員一覧』を見ていただければと思います」(佐々木氏)

 そのメールには、立花氏が当選者たちに求めた「130万円」等について、「会長がお怒り」といった趣旨も書かれていた。

「会長と書いてしまいましたが、(正理会の)名誉会長です。中杉弘先生のことです」(佐々木氏)

 佐々木氏によると、佐々木氏が立花氏に公認を頼んだ場には沓沢氏と中杉氏も同席。中杉氏から立花氏に「NHK内に何人朝鮮人がいるのか知っているのか」などと話したりもしたという。また中杉氏の著書も立花氏に渡したという。仮にこれが事実なら、N国党は佐々木氏や中杉氏の思想を認識した上で佐々木氏を公認したことになる。

「立花氏は、除名された4人の黒幕が中杉先生であるかのように言っていますが、それは全く違います。今回除名された4人のうち、私以外の3人は、平和神軍や正理会と全く関係ありません」(佐々木氏)

 佐々木氏は、日本人より朝鮮人のほうが生活保護を受給しやすいとか、市役所の生活保護担当の部署に朝鮮人が入り込んでいるのだといった持論を、筆者に向かって語り続けた。

「これは区別であり、差別ではないんです」(佐々木氏)

◆総督が直々に

 20分ほど話を聞いていると、電話の向こうで男性の声が聴こえた。電話から少し離れたところで、佐々木氏とこんなやり取りをしている。

「何やってんだよ」

「ジャーナリストの方が……」

 すぐに、電話の相手が佐々木氏から男性に代わった。

「はいはい。わたし中杉ですけど」

 なんと、日本平和神軍総督にして正理会名誉会長である中杉氏本人だ。

「催眠大学校はもうやってない。イオンド大学は、まあやってはいるんだけどね。みんな妨害によって潰されてるんだよ。平和神軍なんてずいぶん前に解散したよ。非暴力で、リーガルオンリーで、精神のスピリットオンリーの軍隊ですよということを20年くらい前に始めたんだよ。そしたら朝鮮人たちがワイワイ騒いで潰したんですよ」(中杉氏)

 中杉氏も、「日本平和神軍には朝鮮人もいたが、正理会にはいない」という。

「いまぜんぶ整理して区別して、朝鮮人は1人も入れないと思ってますから」(中杉氏)

 筆者は、先ほど佐々木氏が口にした「区別であり差別ではない」という言葉について、中杉氏に尋ねてみた。

「ぼくには、差別と区別の区別がよくわからないんですが」

「ははは。おんなじようなもんだよ!」(中杉氏)

 差別と区別は違うと主張する佐々木氏の言葉を笑いながら台無しにしてしまった中杉氏だが、そんなことも気にせず約20分にわたって喋り続けた。

「外縁を広くとれば内縁が薄まるってことだよ。日本人でも朝鮮人でも中国人でも当てはまるようなことを言えば、その分、日本人の精神が失われていくわけですよ。外縁をとっていくと創価学会になっちゃいますよってこと。朝鮮人をどんどん入れてたら、日蓮大聖人の精神なんて言えなくなっちゃうんですよ」(同)

「朝鮮人のこと言うと民族差別だとか、何言ってんだバカ。朝鮮人と日本人じゃ違いがあんだろって。その違いをしっかり教えないとダメなんですよ」(同)

「日韓併合なんて日本の失敗。武力をもってあれを植民地にしたなんてウソだろ。ウソやめろよって。植民地ってのは、そこから何か奪うことを言うんだよ。朝鮮に何か奪うものなんてあんの? 何もないじゃないか。(日本から)与えるものしかないんだよ。民族差別じゃないんだよ。そういうこというのやめろって。従軍慰安婦なんてものもなかったのに。これは差別ではない。朝鮮人はウソをつくのやめろと言っているんだ!」(同)

「歌舞伎町の土地はぜんぶ朝鮮人が持ってるの。なんで持ってるんだよ。ぜんぶぶっ殺して盗ったの、あの土地は! 新橋も銀座も駅前はいまぜんぶ朝鮮人のものです。そこにいる人間をぶっ殺して占領して、その土地を自分のものにしちゃったんです」(同)

「NHKを潰せないまでも、叩かないといけないんですよ。NHKには1000人も朝鮮人がいる。それがみんな偏向報道して南京大虐殺があったとか言ってるんです」(同)

 なぜNHKに1000人の朝鮮人がいるとわかるのか尋ねると。

「そのくらいの情報は入ってくるんだよ!」(同)

◆「らあめん花月嵐」との関係も

 中杉氏に、「らあめん花月嵐」チェーンの運営母体である「グロービート・ジャパン」との関係を尋ねた。すると、いま現在も同社の会長だという。

「平和神軍の活動をなんで中止したかって、理由があったんですよ。(日本平和神軍は)結構大きくなったんですよ。そしたら左翼どもが最低の右翼だって言ってね、私の本業の会社(グロービート社)のほうに攻撃したわけ。そういう話なんだよ。そしたら会社の方から『オレたちの商売に差し支えるからやめてくれ』と言われたんだよ」(中杉氏)

 やめてくれと言われて、会長を辞めたのではなく日本平和神軍の活動をやめたということか?と、改めて確認すると。

「そうだよ。しょうがないだろ。飯食うところを爆撃されたんじゃ飯食えなくなるから。(会長であることは変わらず?との質問に)変わらないよ。(社長である息子から)それも言わないでくれって言われてるわけ。言うと、思想団体と花月が結びつくから『花月から籍を抜いたことにしてくれ』と言われてるんだよ。(会長の名は登記簿には出てこないが)倅が社長なんだから。娘婿が副社長なんだ。専務が次男で、三男が取締役だからね。ぜんぶ一族でやってんの。年商いま150億円くらいあんのかな」(中杉氏)

「花月は、ずいぶん店舗が増えましたよね」と筆者が言うと、海外にも店舗を増やしているという。韓国にも?と尋ねると、こんな答え。

「韓国なんか行かないよ、あんなとこ。(店舗を出しているのは)台湾、あとシンガポール。韓国には死んでも行かないよ。ははははは!」

 電話を切った後、考え込んでしまった。韓国に出店しないのは自由だ。しかしそれはそれとして、佐々木氏や中杉氏が言う「差別ではなく区別」の違いは、やっぱりわからない。

 いずれにしても、佐々木区議にまつわる噂の真偽だけでなく、日本平和神軍及び中杉氏とグロービート・ジャパン(らあめん花月嵐)の現在の関係まで中杉氏自ら語ってくれるという思わぬ結果になった取材であった。

<取材・文・写真/藤倉善郎(やや日刊カルト新聞総裁)・Twitter ID:@daily_cult3>

ふじくらよしろう●1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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