なぜ男は結婚後に豹変するのか? 横暴なモラ夫になる「モラスイッチ」はどこで入るのか<モラ夫バスターな日々11>

HARBOR BUSINESS Online / 2019年5月12日 8時33分

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なぜ、モラ夫たちは結婚後に豹変するのか。その傾向と対策を考える

◆弁護士・大貫憲介のモラ夫バスターな日々<11>

 60歳手前の女性が、私の事務所に相談に来た。

 夫が、そろそろ定年退職なので、退職金の半分を貰って、離婚したいという。30数年間の結婚生活をお聞きしたが、夫は、休みの日は何もせず、ゴロゴロしており、いつも不機嫌だった。突然、怒り出すこともしばしばで、家族は皆、はれ物に触るようにしていた。相談者は、子どもが育ち上がるまでと思い、我慢してきた。

 結婚後は、夫との楽しい思い出は一つもないと言う。しかし、結婚前、彼は優しかった、相談者の話を良く聞いてくれて、いつもニコニコとして、ユーモアもあった。

 その彼が、結婚したとたん、不機嫌な塊となって、いつも怒ってばかりになったという。結婚後しばらくして、相談者が、「あなたは変わった」と言うと、彼から、「釣った魚に餌はやらない」と言われたのが忘れられないという。

◆出世して「男の自信」がつきハードモラ夫に豹変

 つまり、彼は、結婚を機に、モラ夫に変身した。本性を現したというべきかもしれない。彼にとって、結婚とは何だったのだろうか。結婚とは、女性を妻とし、自分の物とすること、妻とは支配の対象であって、もはや機嫌を取る必要はない、そういうことだろう。

 別の中年男性は、それまでは、ソフト・モラだったものの、少しは妻に譲るところもあり、2人の子に恵まれ、妻の我慢の下、どうにか「幸せな」家庭を維持していた。

 ところが、男性は、部長に昇進するとハード・モラを行うようになった。それまで700万円台だった年収が、部長職になって1000万円を超えた。部下の数も増えた。本人によると、昇進により、「男としての自信ができた」という。

 妻に気に入らない言動があると、妻を怒鳴り、説教した。「俺は、外で働いて苦労している」「お前は、養ってもらって楽をしている」と諭した。妻がセックスを拒否すると、夜中でも延々と説教した。モラ強度が「ソフト」から「ハード」に切り替わったのだ。部長昇進から2年後、妻は子を連れて家を出た。

◆妻が逃げられなくなったとき、モラスイッチは入る

 女性が逃げられなくなる、つまり「自分の物」になったときに、少なくない数の日本男性はモラ夫になる。私は、夫がモラ夫になるきっかけ/事象を「モラスイッチ」と呼んでいる。モラスイッチの典型は、結婚、第1子、第2子の出産、マイホームの取得、昇進などである。

 30代のある夫婦は、勤務先が同じで共働きだった。結婚後も、夫は、当然のように家事を分担した。掃除、洗濯の分担は、妻よりも多かったと妻も認めている。ところが、第1子を出産したとたん、夫のモラが始まった。子の出産がモラスイッチだったのだ。

 なぜモラスイッチが入ると、モラ夫になるのか。モラスイッチとは、モラ夫予備軍である男性が、自らを家長/支配者と認識し、自らの支配を始めるきっかけ/合図となる事象なのではないか。

 結婚、子の出産、マイホームの取得、昇進など、典型的モラスイッチは、いずれも幸福へのステップアップのはずだ。ところが、スイッチの入ったモラ夫は、妻子を支配し、家庭を不幸にし、結果、自らをも不孝に陥れてしまう。その結婚観、男女観には歪みがあると言うしかない。

 ところで、日本のセックスレス夫婦の割合は5割程度と言われている。セックスレスでも仲の良い夫婦がいるのは当然である。しかし、仮に、セックスレス夫婦を離婚予備軍と仮定すると、日本の結婚の少なくとも半数は失敗しているともいえる。実際、日本では、3組に1組が離婚する。

 そして、私の30年の離婚実務の経験から、離婚案件の大半は、夫によるモラに離婚の原因があると言って間違いない。

◆結婚前にモラ夫を見抜くためには、思想性をチェックせよ

 さて、結婚前に、ある男性がモラ夫であるかどうか見抜くことはできるだろうか。私の理解では、「モラ夫」とは、「男尊女卑を背景として、妻に対する支配を確立・維持・拡大しようとする夫」である。

 したがって、ある男性がモラ文化(モラ夫を育て許容する、男尊女卑などの社会的文化的規範群)に親和的/擁護的かどうか、その程度、妻/女性を支配の対象と捉えているかどうかがわかれば、モラ夫ないしモラ夫予備軍であることが分かるはずだ。

 モラチェックで個々の不幸を予防するだけでなく、モラ夫を育て、許容するモラ文化を変えていかないと、日本の結婚は幸せにならない。生涯未婚率は改善せず、少子高齢化を止めることはできないだろう。

【大貫憲介】

弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中

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