「日帰りで行ける北朝鮮」新義州ツアー、3年ぶり再開も、即停止の怪

HARBOR BUSINESS Online / 2019年5月26日 15時30分

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新義州青年駅の隣りにある金日成主席と金正日総書記の銅像

 4月末、一部の人たちの間で熱望されていた北朝鮮の新義州ツアーが3年ぶりに再開した。しかし、それからわずか3週間足らずで再び全面停止となってしまった。一体、何があったのだろうか。

◆中国人にとって「もっとも気軽に行ける外国」、新義州

 ゴールデンウィーク直前の4月末、丹東の旅行会社関係者から日本人(中国人以外の外国人)向けの新義州日帰りツアーが再開されるとの情報が入ってきた。早速、複数の旅行会社関係者へ確認すると、彼らの多くもまだ知らない状態だったが、調べてもらうと事実であることが分かった。

 中朝国境の丹東と接する新義州は、日本統治時代に朝鮮半島と満州国をつなぐ鉄道の要所として作られたことから街の歴史が始まる。

 丹東を訪れたことがある人なら鴨緑江を隔て川幅の狭い場所なら500mもない先にある新義州を眺めた人も多いと思う。その新義州は、中国人向けの観光地として開放され、中国人がもっとも気軽に行ける「外国」として人気となっている。

 中朝関係が冷え込んでいた2015年~18年初頭くらいまでは閑散としていたが、昨年から再び活気を取り戻し多くの中国人が訪れている。

 中国人に人気の理由は、インドネシアやモロッコなど中国籍の人がビザなしで行ける数少ない場所(国)だけでなく新義州に限れば何とパスポートも不要というまるで中国国内旅行の延長のようなノリで行くことができるからだ。

◆3年ぶりの日本人への開放にマニアは湧いたが……

 そこを日本人を含めた外国人にも再開放したことになる。「再」と書いたのは、2015年12月に日本人向けに新義州単独滞在が認められたことがあったからだ、しかし、徐々に審査が厳しくなり半年後の2016年夏前には完全停止してしまったので、約3年ぶりの開放となるわけだ。

 北朝鮮側の担当旅行会社は、3年前と同じくローカル旅行会社の「新義州妙香山国際旅行社」で中国側は、丹東の中堅旅行会社「中国国際旅行社」が1社での独占権を得ていた。

 同社へ問い合わせをしたところ、日帰りツアーで日本円で約4万5000円。1泊2日で約6万円(日本語ガイド付き価格)とのことだった。どう考えても高額な旅だが、それでも一定の日本人からのニーズは熱い。

 いったいなぜ日本人からのニーズがあるのだろうか?

◆新義州が日本人にもニーズがあった理由

「北朝鮮観光には前々から興味はありましたが、客商売なので、3日も4日も音信不通になることは無理で、連絡ができないダウンタイムは、せいぜい丸1日くらいなので日帰りツアーの再開を待っていました」(日帰りツアーへ問い合わせをした日本人男性・自営業)

 現在、一般的な北朝鮮ツアーへ参加すると最低2泊3日以上となる。これは北朝鮮側の出国手続きの関係で最低でも3日間の滞在が必要となるためだ。その例外が、新義州であり、以前お伝えした羅先特別市となる。羅先は、日帰りはできないが、PDFファイルをプリントアウトすればそのまま査証(ビザ)となる簡易査証制度を導入しているので1泊2日の短期旅行ができる。それ以外の首都平壌を含む地域は、2泊3日以上の日数が必要となっている。

 前出の男性のように客商売やいつ緊急連絡が入ってくるか分からないような業種の人たちには、携帯電話が圏外になったり、インターネットがつながらない場所へ長時間身を置くのは難しいという声も聞かれる。そういう人たちにとって日帰り北朝鮮旅行は例え高くても魅力的なのだ。

 それがたったの3週間で再び門を閉じてしまった。その理由を確認すると、再開後に訪れた「1号」日本人が新義州で問題を起こしたからと回答があったという。

◆開放撤回の理由は第一号の日本人が問題を起こしたから?

 しかし、それは怪しい。なぜなら、新義州自体は日本人も観光しており、先に平壌へ入って、帰路に平壌から「朝鮮国際旅行社(KITC)」のガイド同行で新義州へ立ち寄って観光するというルートであれば新義州を訪れることはできるからだ。だから、「第一号観光客が問題を起こした」というのは考えづらい。推測だが、 新義州妙香山国際旅行社が日本人の対応に不慣れだったり、日本語や英語などの外国語通訳の確保ができないなどの要因なのではなかろうか。

 さらに丹東の北朝鮮旅行の手配代理店によると、北朝鮮国内には外国人を担当する旅行会社が増えて競争が熾烈を極めているようで、旅行会社同士の利権争いや足の引っ張り合いなどが原因なのではないかと明かしてくれた。

 そもそも今回、中国人以外の外国人受け入れを再開したのは、旅行単価を上げることが目的と考えられる。

 現状、中国人向けの日帰りツアーは500元(約8000円)ほどで、1泊しても800元(約12800円)もしない。それが日本人であれば、同じようなホテル、食事、観光地で、中国人の5倍近くも稼ぐことができてしまう。外貨を少しでも稼ぎたい北朝鮮にとっては現実的な選択肢と言えるわけだ。

 冷静に考えると、北朝鮮人にも予想ができない行動をすると言わしめる中国人旅行客の対応で日々鍛えられているなら日本人客の対応なんてラクラクだと思う。今回の本当の停止理由は定かではないが、日本人にとって北朝鮮日帰りツアーへの壁はまだまだ高そうだ。

<取材・文/中野鷹(TwitterID=@you_nakano2017)>

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