蓮舫議員の6・10年金質疑を信号無視話法分析。報告書を読んでいなかった麻生財務相

HARBOR BUSINESS Online / 2019年6月18日 8時32分

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◆年金不足問題における麻生財務相の答弁は誠実だったか?

 2019年6月3日に金融庁が公表した「高齢社会における資産形成・管理」に関する報告書。

 一般的な無職の高齢夫婦世帯の場合、毎月5.5万円の赤字となり、老後30年間で約2000万円が不足すると試算。さらに、この2000万円には介護費用などの特別な支出は含まれていないことが明らかになり、実際の不足額はさらに大きいと見られる。

 報告書公表から1週間後の6月10日、年金に大きな関心が集まる中で迎えた参議院決算委員会。立憲民主党・蓮舫議員は約30分間にわたって、麻生太郎財務相や安倍総理に年金問題を質問。本記事では、この質疑の約10分間をノーカットで信号無視話法分析していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。

◆わずかな「青」に垣間見える麻生財務相の本音。「赤」だらけの安倍総理

 麻生太郎財務相と安倍晋三総理の回答を集計した結果、このようになった。

<色別集計・結果>

●麻生太郎財務相:赤信号49% 黄信号21% 青信号13% 地の色17%

●安倍晋三総理:赤信号79% 黄信号7% 青信号0% 地の色15%

 2人とも大半が赤信号でほとんど質問に答えていない。

 麻生財務相は青信号が13%あるが、この青信号には衝撃的な本音を垣間見ることができ、中身に注目したい。一方、安倍総理は青信号が0%で質問に一言も答えていない。委員長による「答弁は簡潔に」という注意も一顧だにせず、延々と「ある専門用語」を解説し続けた。

 いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。

◆報告書を読んでいなかった麻生財務相

蓮舫議員:はい。えー、今、麻生大臣は、えー、あたかも赤字だと表現したのは不適切だった。豊かな生活を送るための25万円に、5万円足りない。これ、前回の会見でも言ってるんですけど、この認識は変わってないんですね?

麻生財務相:一番冒頭に申し上げたと思いますが、各年金生活者、老齢をとられた方の、(赤信号)ね、生活者は非常に色々な条件があります。で、一概に、一律に、この方ってワンパターン化するのには不可能だと思っております(赤信号)。

 この質疑については、以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。

質問内容:豊かな生活を送るために月5万円足りないという認識は変わっていないか



答弁内容:年金生活者の収支算出を一律にできるか

 このちぐはぐな答弁を聞いて、蓮舫議員は短く切り返す。

蓮舫議員:この報告書(金融庁の市場ワーキング・グループ報告書)、読みました?

麻生財務相:冒頭の部分、一部、目を通させて頂きました。全体を読んでいるわけではありません(青信号)。

 質問には答えているため青信号としたが、委員会室からは一斉に「えー!」とどよめきが起きる。(動画の38秒~)

 なぜならば、この決算委員会が行われた6月10日は報告書公表から既に1週間が経過。さらに、報告書公表の翌日には「人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか?」と物議を醸したコメントを出した麻生財務相本人が、実は報告書を読んでいなかったという衝撃的な事実が明るみになったからだ。

◆再度質問するも、またしても論点ずらし

 続いて、冒頭の「月5万円足りない」発言について再度質問する蓮舫議員。

蓮舫議員:これだけ国民の間で怒りが蔓延して、大問題になっている。読んだら5分で終わる報告書を読んでいない。このどこに、どこに、「豊かな暮らしのために5万円足りない」って書いてありますか?

麻生財務相::わた、私ども、私どもが最初から申し上げておりますのは、これは、いわゆる、年金のこの勉強をするグループで出されてきたものを挙げられた(赤信号)サイヨウだと私ども理解しておりますので、そういった意味では(赤信号)、私どもはこの挙げられた、すぐ後、に、今の中で申し上げているような色々な表現の中にある中で少なくとも、そういったものを目的としてやろうとしているということを申し上げております(赤信号)。

 またも論点をすり替えており、赤信号とした。

質問内容:豊かな生活を送るために月5万円足りないという認識は変わっていないか



答弁内容:報告書の出所

 この答弁に対して、蓮舫議員は間髪入れずに麻生財務相の認識誤りを指摘する。

蓮舫議員:間違ってます。2つの意味で。1つ、勉強するためのグループが話したものじゃなくて、麻生大臣が諮問をした審議会のワーキンググループですよ。で、そして、この報告書には、「豊かな老後のために25万円要るから5万円足りない」とは、1行も書いていません。その問題認識が甘い。そんないい加減なことで「不適切だ」と国民に言うのは、私はその方が不適切だと思います。

◆「赤字は不適切」で国民は納得するのか

 続いて、蓮舫議員は「赤字という表現が不適切だった」という麻生財務相のコメントについて質問する。

蓮舫議員:そもそも、そもそも、麻生大臣にお伺いします。赤字との表現が不適切。それで国民は納得すると思いますか?

麻生財務相:いろいろな方の、からも私どもにご質問をいただいたことは事実でありますけども、その中に、その点に関して、不適切だという、ごい、ご意見に関しては、そうではないんだということで丁寧にご説明をさせて頂き、(黄信号)

ご理解頂いた方も多くいらっしゃいます(青信号)。

 冒頭は質問に関する背景や経緯のため、黄信号。

 最後の1文は「ご理解頂いた方も多くいる」という回答のため、青信号とした。

 この回答への違和感については、蓮舫議員がすぐさま的確に指摘している。

◆「100年安心」と言いつつ公助を放棄する欺瞞

蓮舫議員:いや、不適切でご理解頂いた方が多くいるというのは、麻生さんの周りってのは随分と忖度される方しかいないんじゃないんですか。この報告書で、国民が怒ってるのは、100年安心が嘘だったと。自分で2000万円貯めろって、どういうことかという憤りですよ。

 報告書を簡単にまとめると、高齢世帯を含む各世帯の収入は全体的に低下傾向、で、公的年金の水準は、今後調整される。税保険料の年金、えー、負担は年々増加。少子高齢化で今後もこの傾向は一層強まる。高齢夫婦無職世帯の平均、えー、的な姿では毎月の赤字額は5.5万円。これは、自身が保有する金融資産の補填、老後の生活で足らざる部分は当然、金融資産で取り崩していくことになる。

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 豊かな生活のためではなく生活費不足のために、

「もっと働け」

「節約しろ」

「貯めろ」

と言わんばかりの報告書。

 100年安心を謳いながら、その実態は公助から自助に切り替わっている。ここから約7分間にわたって、この矛盾を蓮舫議員は安倍総理に質問していく。そのやり取りは後編で視覚化していく。

<文・図版・動画作成/犬飼淳 TwitterID/@jun21101016>

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。

 犬飼淳氏の(note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(日本語版/英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している

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