小中学校で不登校でも勉強を諦めなくていい。高卒資格や大学進学を得るための選択肢

HARBOR BUSINESS Online / 2019年7月11日 15時31分

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Gerd Altmann via Pixabay

Contents1 話題になった不登校YouTuber小学生2 普通の不登校児の選択肢3 学力に自信の無い15歳が選べる「高卒&大学進学法」3選4 それでも学力があるに越したことはない

◆話題になった不登校YouTuber小学生

 今年になって、沖縄県在住の小学5年生、通称ゆたぼん君が不登校を宣言し、自身はYoutuberとして生きていくことで多くのメディアが彼の動向を報じました。私を含め、教育に関わる多くの専門家が持論を展開し、ネットニュースなどで拡散され、彼がアップロードした動画は数多くの低評価を受けるなど、賛否の分かれる話となっています。(参照:“小学生がYoutuberとなって不登校宣言。我が子がこう言ったとき、親はどうすべきか?”|HBOL)

 彼が学校へ行かないことについては、父親がテレビ等で「本人が行きたくないものを無理強いすることはしたくない」などとコメントしていることや、脳科学者の茂木健一郎氏をはじめとする多くの著名人が「学校へ行くことだけが勉強じゃない」、「動画を作成してYoutubeにアップロードすることも勉強」など、好意的に理解していることで、彼の好きなようにやらせてみればよいという、社会的な理解は得られていると思います。

 私としては、このゆたぼん君という小学生については、これだけ知名度が上がり、芸能界でいうところの売れっ子の子役タレントみたいな地位を手に入れたのですから、それなりに他人とのつながりを大切にしていけば、彼が成人して、改めて学ぼうとした時には周りの大人や友人・知人が彼の学びを助けてくれる可能性があります。だから、彼についてはさほど心配していません。

◆普通の不登校児の選択肢

 ゆたぼん君のように、幸運にもYoutuberという道を選ぶことができた人や、著名な人との関わりが持てた人は、それなりに他人と交流できるだけのスキル、つまり社交性に優れているため、周辺の人を巻き込んで新しいビジネスを始めたりとか、芸能界に進んだりするなど、必ずしも学力や知識を要しない世界で生きていくことができますが、問題は彼のような特殊な環境にいる子どもではなく、学校以外に外界の人とのつながりがない子どもたちです。

 日本の義務教育では「年齢相当学年」という考え方があって、小中学校においては、出席日数がゼロであったとしても、自動的に卒業できてしまいます。「原級留置」という留年のような措置もありますが、大半は学校長の判断で卒業に至ります。そしてその中学校卒業の学歴があれば、高等学校へ入学できる資格を得てしまいます。しかし、不登校の生徒の多くは学力が著しく乏しく、出席日数も少ないから、内申書はほぼ無価値です。したがって、普通の高校へ進学するのは困難であることは間違いありません。

 学校へ行かずとも、勉強しなくても中学校は卒業できて進学するための資格に支障がないという配慮は、高校進学の段階で学力不足という大きな問題が露呈するのです。そこで、高校入試を突破する自信のない人たちに、あえてその上の、大学への道まで見据えた進学法を検討しておくべきです。

◆学力に自信の無い15歳が選べる「高卒&大学進学法」3選

 大学や専門学校へ行くには高校を卒業して「大学入学資格」を得ておかなければなりませんし、多くの企業の求人票には「高卒以上」とあります。人生には学歴は関係ないとはいっても、社会生活において「高卒」の有無は大きいのです。そこで、学力が乏しい人でも、一定の努力で挑戦できる高卒・大学進学の道を3つ紹介します。

1.通信制高校へ進学

 通信制高校はそれぞれ公立と私立のものがあり、公立は授業料が安く、私立は高く設定されていますが、世帯年収が低い家庭については就学支援金などでどちらも大半の費用が補助されます。

 数ある通信制高校のうち、私立のところは、地元の学習塾や予備校などと提携していることが多くあります。この提携校のことを「サポート校」と呼びます。

 私立通信制高校とサポート校を併用すると年間100万円程度、3年間で300万円程度の学費が必要ですが、生徒の学力に応じて小中学校の学習に戻って指導することがあるなど、不登校だった人たちにとって居心地のよい環境や様々な工夫を用意してあるため、学びやすい学校が多いとされています。

2.高等学校卒業程度認定試験を受験

 かつて「大検」と呼ばれた、大学入学資格付与のための国家試験です。

 高校で行われる授業のうち、必修・選択を含めて8科目(例えば国語・英語・数学・地理・世界史・現代社会・科学と人間生活・生物など)を受験し、その全てで合格した人たちに、合格証書が送られます。

 受験料は8科目受験で8500円。年に2回開催され、一度に全て合格する必要はなく、科目別の合格を積み上げても構いません。全科目合格するには至難の業と思われがちですが、そうでもありません。

 俳優の河合我聞さんは42歳で挑戦し、7科目に合格しました。数学が合格基準点を下回ったので不合格でしたが、すぐに私立の通信制高校の聴講生になり、数学1科目分の単位を修得して科目免除を受けて最終合格を果たしています。

3.いきなり大学へ進学する

 我が国の通信制の課程を有する大学のうち、20校程度に「特修生」と呼ばれる入学制度があります。大学入学資格が無い人でも、15歳以上であれば学力不問で仮に入学できる制度で、所定の16単位を修得すると大学に正規入学することができます。

 例えば放送大学では、テレビ放送や教科書で勉強して、マークシートなどの課題を提出して単位認定試験に受験・合格すれば、1科目合格で2単位修得。これを8科目分繰り返せば16単位となり、正規に入学できてしまいます。正式に入学を許可されたら、過去に修得した16単位を含めて124単位に達すれば、4年制大学を正式に卒業できて、学士が取得できます。

 15歳から選科履修生となり、18歳で正規に入学し、22歳で卒業すると考えると、たっぷり7年の時間をかけて124単位を取ればよいので、アルバイトをしたり、同時並行で高卒認定試験や他の資格試験などに挑戦したりしながら、就職活動をすれば同世代の人たちと年齢的な帳尻があいます。

◆それでも学力があるに越したことはない

 不登校に悩む皆さんが、とりあえず高校へ行く方法があるとか、高卒認定試験や通信制大学へ行く道があったとしても、相応の知識や学力があったほうが良いと思います。

 大学を出たのに知識が乏しい、高校を出たはずなのに作文や計算ができないとなると、社会人になってから困りますよね。

 学校でのいじめや先生の体罰については、自分の努力ではどうしようもありません。しかし学力不足については学習塾に通わせるとか、子どもの居場所を確保しつつ学べるフリースクールへ行くなどの選択肢を検討することになるかと思います。

 しかし、学習習慣の無い子どもの学習は、やはり自宅での支援が大切です。親子で取り組みやすい目標を定めて、例えば漢字検定や算数・数学検定などを受験して、習熟度を計った上で、親子で勉強してみるとか、英語であれば洋画のDVDを字幕付きで視聴し、次は字幕を消して視聴して英語に慣れるなど、あまり大きく構えずとも、反復練習をするだけで、容易に取り組める学びの場を作っていくと、無理なく学ぶことができます。

 小中学校における学習を、全て諦めるのではなく、少しでも、わかるところだけでもしっかりやっておくことで、将来に対する不安が少しは払拭できるはずです。

<文/松本肇>

参考文献中卒・中退・不登校 誰でもイキナリ大学生

【松本肇】

<Twitter ID:@matsuhaji>

まつもとはじめ●教育ジャーナリスト&教育評論家。有限会社トライアルコーポレーション代表取締役。神奈川大学法学部卒。神奈川大学大学院博士前期課程修了(民事訴訟法)。放送大学教養学部の全7専攻・コースを卒業し名誉学生。独立行政法人大学改革支援・学位授与機構で学士(法学、社会科学、教育学)を授与される。

著書:『短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒になれる本』(エール出版社)、『中卒・中退・不登校 誰でもイキナリ大学生』『社会人大学院生のススメ』(オクムラ書店)

2008年、インターネット画像の著作権事件「スメルゲット事件」の本人訴訟原告で勝訴し、著作権法判例百選に掲載。

近年はバイキング(フジテレビ)、ワイドスクランブル・モーニングショー(テレビ朝日)、アベマプライム(アベマTV)などに教育問題の専門家として出演

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