「トラックは一般道の左車線を走りたがらない」? 運転手が語る事情とは

HARBOR BUSINESS Online / 2019年7月13日 8時33分

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街路樹の枝1本がトラックの大きな障害になることもある

Contents1 トラックは一般道の左車線を走りたがらない!?2 一般道でも道交法上は左車線通行が原則3 最左車線では沿道から伸びる街路樹や標識が「障害」に4 「障害物」で損害が出やすい車種も

◆トラックは一般道の左車線を走りたがらない!?

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズでは、これまでに「トラックがノロノロ運転をする理由」や「路上駐車せざるを得ない理由」など、様々なトラックの事情を紹介してきたが、今回は「トラックが一般道の左車線を走りたがらない理由」を紹介したいと思う。(※高速道路の追い越し車線走行については、本シリーズの各所で触れているので、ご興味ある方はご一読いただきたい)

◆一般道でも道交法上は左車線通行が原則

 高速道路の中央分離帯寄りの車線(最右車線)は「追い越し車線」であり、同車線を走り続ければ「通行帯違反」になることは、運転免許取得者であれば誰もが知っている交通ルールだ。

 しかし、このルールが高速道路だけではなく、一般道でも適応されていることを知るドライバーは、実はそれほど多くない。

 道路交通法第20条には、

「車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない」(1項)

「ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となっているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる」(1項)

「(略)追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」(3項)

とある。

 つまり、全ての車両は、高速道路だけでなく一般道でも、原則的に2車線の場合は左車線を、3車線の場合は最左車線か中央車線を走らねばならず、最右車線は、追い越しをする時や、緊急車両に道を譲る時、工事や事故などの道路状況でやむを得ない時にしか走ることが許されていないのだ。

 それゆえ、一般道でも右車線をひたすら走り続けることは、原則的には交通違反なのである。

 しかし、一般道には、高速道路とは違い、右折のために右車線に寄っていなければならないことも当然あるため、現状、厳しい取り締まりは行われていない。

 実際、同件に関して職務中の白バイ隊員に確認したところ、やはり「原則的には車両の種類に関わらず、全ての車両は最左車線を走らなければならないが、我々も積極的には取り締まっていない」とのことだった。

 つまり道路上では、高速道路、一般道に関わらず、遅いクルマは原則「左」。そんな中、この「遅いクルマ」の筆頭として挙げられるのが、トラックだ。

◆最左車線では沿道から伸びる街路樹や標識が「障害」に

 今回、SNSや休憩中のトラックドライバーたちに「一般道の最左車線を走るトラックの事情」について話を聞いたところ、意見のほとんどが「最左車線の走行は避けたい」「走れない」とするものだった。

その理由を紹介しよう。

1.右折したい

 他でもない。トラックだって右折することはある。しいて言えば、トラックはその車体の長さゆえに身軽に車線変更できず、移れる時に移ろうと、早い段階から右車線に入って走り続けることがある。

ちなみに、右折レーンで信号待ちしているトラックの中には、隣車線を走るクルマとの接触を避けるために、左サイドミラーを畳んでいるドライバーも少なくない。

2.左折車の存在

 一般道の最左車線を走ると、左折したい前方のクルマが歩行者の横断を待つたびに詰まり、その都度ブレーキを踏まねばならない。

こうしたクルマの詰まりによるストレスは、無論一般車にも生じるのだが、これまで本シリーズでも解説してきた通り、トラックは頻繁にブレーキを踏むことで、シフトチェンジや速度回復時間だけでなく、クルマへの負担なども生じるため、乗用車以上に最左車線が走行しづらいのだ。

3.二輪車の存在

 「自転車とトラックの相性の悪さ」は、以前紹介した通りだ。トラックにとって自転車や原付などの二輪車は、死角にピンポイントで入り込む、大変恐ろしい存在である。

 特に交通ルールを知らない自転車が車道を走っていると、こちらが安全運転していても危険が拭えない。それに、側溝や道路のデコボコ、ゴミなどで突然ふらつかれると、命に関わる事故を起こしてしまう。当然「命が関わる」のは、二輪車側だ。

 こうした危険回避に対する意見は、歩行者や原付、自転車利用者も同じで、「事故に巻き込まれる確率が減るため、我々もトラックが最左車線を避けてもらえると嬉しい」という声があった。

4.街路樹や標識の存在

 最左車線には、こうした自転車たち以外にも大きな障害がある。沿道から伸びる街路樹や標識だ。

図体の大きいトラックにとってこれらは、接触の危険が大いにある障害物だ。

特に街路樹の枝は大敵。トラックは一見、頑丈そうだが、箱車(後ろが箱型のトラック)の荷台はアルミになっていたり塗装されていたりするため、すぐに傷が付く。

◆「障害物」で損害が出やすい車種も

 中でも「損害」が出るのが、「キャリアカー」だ。

 キャリアカーは、何台ものクルマを載せて運ぶトラック。商品であるクルマを、むき出しのまま載せて走るあのトラックにとって、最左車線を走ることは、かなりのリスクがあるのだ。

5.通行帯が指定されている

 一般車に乗っていると気付きにくいのだが、都心部の幹線道路など、カーブや人通りが多いところでは、交通標識によってトラックの走行車線が中央分離帯側(最右車線)に指定されていることがある。その理由は各道路によってまちまちだが、歩行者や道路沿いに立つ建物に対して、騒音や振動、排ガスによる影響を少しでも緩和させることが主たる目的だ。

 無論、中には、

●一般道とはいえ左は走行車線、右は追い越し車線。指定通行帯がない限り、トラックでも左を走るべき

●社速で少しでも55km/hを超えたら会社から始末書を書かされるため、最左車線を走っている

●右側を走りたがるのは、社速等の縛りのないトラック。教育された会社の乗務員は左側を少々我慢して走っている

とするドライバーももちろん存在する。

 とりわけ、牽引車である「トレーラー」は、引っ張っているコンテナが沿道の街路樹などに当たって傷がついても大きく気にすることはないし、超重量を引っ張る手前、発進から速度を上げるまでにトラック以上に時間と手間がかかり、周囲のクルマの流れを阻害する恐れがあるため、多少走りづらくとも、最左車線のほうが精神的には楽だとするドライバーが多い。

 事故や接触のリスクを取るか、はたまたルールを取るか。

 もちろん最左車線を走らねばならない前提はあるが、トラックには、こうした車種や載せている荷物などによって、同車線の走行を避けたい、走れない様々な事情や感覚の違いが発生することもあることを、是非知っておいてほしい。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

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