自民党・尾立源幸候補に向けられた「一大産業なのにマイノリティ」なパチンコ業界の期待と不安

HARBOR BUSINESS Online / 2019年7月20日 15時31分

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おだち源幸候補のTwitterより

Contents1 パチンコ業界の期待を一身に背負う自民党・尾立源幸候補2 尾立候補に当選の目はありや?3 尾立候補Twitterアカウント凍結の衝撃4 不安を隠せない業界関係者

◆パチンコ業界の期待を一身に背負う自民党・尾立源幸候補

 昭和通りを挟んだアメ横の反対側、東京都台東区東上野は、通称「パチンコ村」と呼ばれている。パチンコメーカーや関連販売商社、パチンコホール企業事務所や業界組合団体事務所が軒を連ねているからだ。

 7月16日。長い梅雨の冷たい小雨が降りしきるなか、第25回参議院議員選挙に自民党の全国比例区で立候補している尾立源幸氏は、パチンコ村の「メインストリート」で自身の支持を呼び掛けた。その遊説を見守るのは、パチンコ村に勤める業界関係者たち。割れんばかりの拍手。交わされる熱い握手。尾立氏の目には熱いものがこみ上げていたという。

◆尾立候補に当選の目はありや?

 本当に尾立源幸氏は当選する事が出来るのか。

 パチンコ業界が、その70年の歴史で、国会に族議員を送り出そうとするのは初めての事である。5月17日、おだち源幸遊技産業後援会が催した「おだち源幸君を励ます集い」には約700名の業界関係者が集まり、尾立氏を応援する意思を公に表明した。あれから2カ月、参議院選挙の投票日を前に、業界関係者はその結果を、固唾をのんで見守っている。

 パチンコ業界関係者は約26万人。全国のパチンコ遊技者は900万人。どれだけの票を集める事が出来るのか。注目されたのは、パチンコ業界が一丸となれるのかという事であった。

 そもそもパチンコ業界が、政治活動を活発化させ、族議員に輩出に向け大きく舵を切ったきっかけは、政府が推進するギャンブル等依存症対策に端を発する行政の過度や抑制である。エビデンスのない射幸性の抑制と、それに伴う規則等の改正は、一気にパチンコ業界を苦境に追い込んだ。だからパチンコ業界は政治を頼るしかなかった。その決断が、たとえパチンコ業界を主管する警察庁の怒りを買う事になろうとも。

 尾立氏の選挙戦、もといパチンコ業界の選挙戦は、分断との戦いであった。あくまで行政との連携を主張する業界内部の保守層と、政治活動に舵を切る事で未来を見出そうとする革新層の分断。尾立氏の支持を声高に主張する層と、政治にまったく期待感を持たない層の分断。元来の尾立氏の支持層である大日本猟友会と新興支持勢力となったパチンコ業界との分断。業界内の尾立氏支持層はその分断を、「危機感」を煽り繋ぎとめようとした。

 7月13日。Twitterの「おだち源幸777」のアカウントの凍結は、だからこそ関係者にとって衝撃であったろう。

◆尾立候補Twitterアカウント凍結の衝撃

 パチンコ業界関係者であれば誰もが知っていることではあったが、尾立源幸氏のTwitterアカウントは、「おだち源幸」と「おだち源幸777」の二つが存在していた。ツイートされる内容を見る限り、どちらかがなりすましという事ではなく、「尾立源幸」のアカウントは元来の支持基盤である大日本猟友会関連のツイートや、その他尾立氏を支持する人たちとの活動ツイートがアップされ、「おだち源幸777」アカウントは、パチンコ業界関連の活動内容がツイートされていた。Twitter社が発行する、いわゆる「本人認証マーク」は前者のアカウントについている。

 尾立氏はなぜTwitterアカウントを分けたのか?

 パチンコ業界側が元来の支持基盤に気を使い分けたという人もいれば、逆に新参者のパチンコ業界が敬遠されたとの憶測もある。その擦り合わせを行う時間が無かっただけとの話も聞く。いわゆるパチンコアンチによる「なりすまし」通報が凍結に追い込んだというツイートも見掛けた。理由はどうであれ、この「2つのアカウント」については、パチンコ業界内でも様々な意見が聞かれた。結局、パチンコは世間の日陰者なのだと。

「おだち源幸777」アカウントが凍結された理由も現時点では明かされてはいない。まあ判明していても公言するものではないだろうが。ただ間違いなく、この凍結は、パチンコ業界に動揺を与えたし、選挙活動に積極的な層に動揺も与えた。

 しかし結果として、奇しくもこの凍結が「分断の象徴」をかき消す好材料に転じた。

 尾立氏のパチンコ業界における活動も、本来の公認アカウントに統合され、尾立氏側の広報が一本化されることになったのだ。

 或る業界関係者の呟きが印象的だった。「これで普通の選挙活動になる」。

◆不安を隠せない業界関係者

 選挙は文字通り蓋を開けてみるまで分からない。業界関係者はいまだ「尾立氏苦戦」の危機感の中にいる。期待感を口にする人もいるが、やはり不安は隠せない。当たり前だ。業界関係者であれば、誰もが初めての経験だから。

 筆者はこの期間、多くの業界関係者の声を聞いた。

 世間的には風当たりが強いパチンコ業界。ロビイストと言えば聞こえは良いが、日本社会では「族議員」という言葉に眉を顰める人も多い。その中でも、多くのパチンコ業界関係者は真剣だった。選挙に行ったこともない人たちが連れ立って期日前投票に向かった。パチンコホールもメーカーも、パチンコで口に糊する多くの人たちが尾立氏の支持を強く訴えていた。

 パチンコ業界は一大産業でありながら、一方で社会的マイノリティでもある。

 パチンコ業界が「政治」に舵を切ったことが、業界の未来を拓くことなのかそれは分からない。ギャンブル等依存症問題や業界構造の問題等、克服すべき問題は山積であるし、一人の族議員を生み出したとてそこから目を背けることは出来ない。また仮に尾立氏が当選したとしても業界を取り巻く市場環境が劇的に好転するとも思えない。

 しかし結果がどうであれ、この3週間の選挙期間の活動は、参加した多くの業界関係者にとって、社会的な逆風に縮こまっていた自らのプライドを取り戻す期間であり、だから私は彼らの「戦い」に共感している。

<取材・文/安達夕>

【安達夕】

Twitter:@yuu_adachi

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