最悪の場合走行中の突然死も!? トラック運転手を悩ます職業病

HARBOR BUSINESS Online / 2019年8月24日 8時32分

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過酷な荷降ろし、長距離運転、睡眠不足、トイレ不足……ドライバーの健康管理は自己責任だけに任せてはあまりに重荷になってしまう (写真/ドライバー提供)

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。

 前回は、「ETCの深夜割引がトラックドライバーにもたらす弊害」について紹介したが、今回は、不規則な生活や肉体労働に対峙するトラックドライバーの「職業病」について述べていきたい。

◆ドライバー自身が語る、身体の悩みとは?

 これまでにも紹介した通り、トラックドライバーの仕事は拘束時間が長いうえ、運転以外にも実質的に「手積み・降ろし」などの力仕事が業務として含まれることがある。

 そうなると、どうしても避けられないのが「肉体疲労」や「体調不良」だ。

 今回、SNSや高速道路のサービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)で出会った現役のトラックドライバーに、自身が抱える「職業病」について聞いてみたところ、さまざまな病名・症状が返ってきたので、一部を紹介しよう。

1.腰痛

 中でも、「もはや抱えていない人はいないのでは」、と思うほど多かったのが、腰痛だ。

「座りっぱなしでの長時間運転」からの「荷物の積み降ろし作業」。凝り固まった体をいきなり動かせば、普段どれほど体を鍛えている人でも腰を悪くする。

 現役時代、筆者が積んでいたのは金型だったゆえ、手荷役(手での積み降ろし)はほとんどなかったが、それでも突然の相対する動作に体が追い付かず、やはりこの腰痛には悩まされた。

 ちなみに、女性である筆者は、周囲の男性ドライバーと骨格の造りが違うのか、ただただ純粋に自身の足が短いからなのかは謎だが、大型トラックの運転席に腰を掛けると、どうしても足がアクセルやクラッチペダルに届かず、背もたれを常時「ほぼ垂直」にして着席。15分も走れば、すでにストレッチが必要な状態だった。

2.歯のトラブル

 トラックドライバーには、歯が悪い人が非常に多い。

 現役当時、同じ時間、同じSA・PAに行くと、筆者の到着を待ってくれているおっちゃんトラックドライバーが数名いたのだが、その中に、前歯が全部ない先輩ドライバーがいた。すごく優しい人だったのだが、正直、彼が何を言ってるのか最後まで分からなかった。

 歯のトラブルは、不規則な生活ゆえに歯を磨くタイミングがなかったり、歯を食いしばって重いモノを持ち上げたりすることが多いトラックドライバーにとっては、口の中の「隠れた職業病」だといえる。

 それでも早めに治療できればいいのだが、長距離ドライバーなどは労働時間の都合上、定期的に歯医者に通いにくく、その結果、重症化するケースも少なくない。

 前出の先輩ドライバーに前歯がないことは、決して笑い話なだけではないのだ。

◆トイレに行けず便秘になる人も

3.肥満

 手荷役などの肉体労働も多いトラックドライバーだが、それでも職業病に「肥満」を挙げる人が少なくないのは、やはり走行中でも「口」が唯一自由に動かせるパーツだからだろう。

 以前にも紹介した通り、「眠気対策」として食べすぎないようにするドライバーがいる一方、運転しながらスナック菓子や軽食などを食べることで「こめかみ」を動かし、居眠り運転を防ぐ「食べる派」もいるのだ。

 また、「この仕事の唯一の特権は、各地のご当地グルメを食べられること」とするドライバーが多いことに鑑みると、「食べること」がいわば、仕事のストレスのはけ口になりやすい環境にあるとも言えるだろう。

4.便秘

 一般的には女性に多い症状である「便秘」だが、今回のアンケートでは、男性トラックドライバーにも同症状に悩まされている人が意外に多いことが分かった。

 以前にも言及したが、トラックは「走る」よりも「停まる」ほうが難しい。

 混雑するSA・PAでは、駐車スペースを確保できず、諦めて本線に戻ることもしばしば。

 一般道の場合、たとえトイレのあるコンビニを見つけても、その大きな図体を停められる駐車場がなければ、やはり素通りするしかない。

 こうして毎回トイレを我慢すれば、便秘になるのはもはや必然的だと言えるだろう。

 さらに、トイレの回数を減らそうと、飲む水を制限したことで便秘になったのでは、と推測するドライバーもいた。

5.睡眠障害

 トラックドライバーの「睡眠環境」が良くないことは、誰もが想像できるところだろう。

 周囲のトラックのエンジン音、自身のエンジンで振動する車内、小さなベッド。そんな場所での仮眠が快適であるはずがない。

 それゆえ、トラックドライバーの中には、慢性的な不眠症に悩まされている人が少なくない。

 休息時間にしっかりとした睡眠が取れなければ、無論それは「居眠り運転」へと繋がっていく。

「快適に休みたい」よりも「事故を起こしたくない」という理由から、「各地にもっと休憩所があれば」と嘆く現場の声は、残念ながら遠い昔から今に至るまで絶ち消えたことはない。

 これら以外にも、「手指の変形」、「高血圧」、「眼精疲労」、「ぢ」、「肩こり」など、彼らが訴える症状は、枚挙にいとまがない。

 睡眠や水分補給、適度な運動など、「健康な体づくりに欠かせない」とされる一般要件のほとんどを果たせず、逆に不摂生をしやすい労働環境にいる彼らの「職業病」は、多岐にわたりやすいのだ。

◆走行中の心筋梗塞で突然死も

「寝不足」、「“美味しい”食事」、「水分不足」……。不規則な労働環境と不摂生な生活習慣は、当然、大病の原因にもなる。

 筆者の知り合いにも1人、トラック走行中に心筋梗塞を起こして亡くなったドライバーがいた。40代だったと思う。

 幸いクルマは暴走することなく、二次的な被害はなかったが、このように走行中に発病する人の中には、苦しさのあまり力が入ったり、意識を失ったりして、アクセルペダルをベタ踏みしてしまう人もいる。トラックが街中で暴走すればどうなるかは、想像に難くない。

 そんな中、ドライバーの健康を考えてか、はたまた昨今の時流を意識してか、運送業界にも少なからず「禁煙ブーム」が到来しているという。

 元々、ガソリンなどの危険物を運ぶトラックの場合、車内での喫煙は厳禁となっており、灰皿さえボンドなどで開かなくしている業者もあるのだが、近年、一部の一般トラックを扱う業者でも、禁煙車と喫煙車を設置し「分煙化」を実施するようになったという。

 さらに厳しいところでは、全車を禁煙にし、車内カメラでチェックしたり、規則に従わなかったドライバーには、降車処分やボーナスカットなどの対象としたりする企業もあるとのことだった。

 トラックドライバーは近年、深刻な人手不足に陥っているうえ、高齢化も加速の一途をたどっている。彼らが少しでも健康に長くトラックドライバーとして働いていくには、自身の健康管理はもちろん、所属企業による社員の健康管理や、荷主の協力、国の援助なども少なからず必要になってくるだろう。

<取材・文/橋本愛喜>

【橋本愛喜】

フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。

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