セブン-イレブン・ジャパンは「独占禁止法に違反」。オーナーらの主張を解説

HARBOR BUSINESS Online / 2019年9月18日 8時32分

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公取委での集団申告を終えたオーナーら

 9月11日、セブン‐イレブンのオーナーら8人が東京・霞ヶ関の公正取引委員会を訪れ、株式会社セブン‐イレブン・ジャパンが独占禁止法に違反しているとして、集団申告を行った。申告を呼びかけたのはセブン本部社員の河野正史さんが委員長を務める、コンビニ業界の労働組合・コンビニ関連ユニオン。

 コンビニ関連ユニオンは、どのような理由でセブン-イレブン・ジャパンが独禁法に違反していると主張しているのか。申告書の6つの要点に沿って、以下で説明していく。

◆24時間営業の強制、時短するとチャージ料引き上げ

(1)24時間営業の強制は優越的地位の濫用である

(2)実験的時短後、時短を継続する場合はチャージ料を2%引き上げられてしまう規定は優越的地位の濫用である

 この2点についてはまとめて説明した方が分かりやすいだろう。ある程度の年齢層の方なら、セブン‐イレブンのCMといわれれば「開いててよかった」というキャッチコピーを思い出すはずだ。しかしこのキャッチコピーが使われたのも今は昔。現在はコンビニといえば24時間営業が当たり前、「開いててよかった」ではなく「開いてないとおかしい」という認識を持っている人も少なくないのではないだろうか。

 しかし、セブン‐イレブンの契約を確認してみると、実はオーナーには、24時間営業は義務付けられていないという。同ユニオン副委員長であり前橋荻窪町店のオーナーでもある永尾潤さんは会見で次のように語った。

「24時間営業は義務ではない。現在でも基本契約としては朝7時から夜11時という時間帯が設定されている。24時間営業に関する規定はあくまでも補助契約であり、これを実施すればチャージ料(店舗売上の中から本部へ支払う手数料)を2%引き下げる、というのが契約の内容だ」

 意外なことに、今でも基本契約としてはセブン‐イレブンという名前の通りの朝7時から夜11時という時間帯が定められているのだ。しかし実態はどうなっているかと言えば、あくまでも補助契約である24時間営業が実質的に義務と化し、それを履行した際の特別待遇であるはずのチャージ料2%減が「24時間営業をやめる場合はチャージ料を2%引き上げる」という脅し文句として機能してしまっている転倒した状況がオーナーに圧し掛かっている。

 これは優越的地位の濫用(取引において相手よりも優越した地位を持つ一方の当事者が、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当な不利益を相手に押し付けること)である、というのが(1)と(2)における同ユニオンの主張だ。

◆使えない「オーナーヘルプ制度」

(3)オーナーヘルプ制度が機能していないのは欺瞞的顧客誘引に該当する

 オーナーヘルプ制度とは、オーナーが何らかの都合で不在の場合に本部社員が営業を代行する制度である。これについては過去に「オーナーが語る、セブンイレブンの機能しない『オーナーヘルプ制度』」でも詳報しているが、こちらで掲載したオーナー向けの資料には「冠婚葬祭や旅行、病気などでオーナーさまが不在の場合に営業を代行するオーナーヘルプ制度」とある。

 しかし、上掲の記事を見ても分かるように、オーナーヘルプ制度は実質的に機能していないというのが今回の申入の内容だ。オーナーのNさんは会見で次のように語った。

「店を開いた当時、妻がガンだった。本部からは年に2回、1回あたり7日間のオーナーヘルプ制度を利用して休むことができると説明されており、それで安心してオーナーになることを決めた。しかしあとになってヘルプ制度の利用を却下され、話が違うじゃないかと。オーナーとして働き始めてから妻を亡くしてしまったのだが、多忙で葬式をあげられず、一ヶ月半ドライアイスを棺のなかに入れて遺体を安置した。親族からは相当責められることになった」

 オーナーヘルプ制度については、今年6月下旬にセブン‐イレブン本社が適用範囲から旅行を削除する内規の変更をオーナーへの通告なしに行い、これを告発されたことを受けて再び書き加えるなど、混乱が相次いでいる。今月13日の『めざましテレビ』の報道でも、オーナーヘルプ制度が7年間却下され続け、週6日で午前0時~午前6時の間働くことを余儀なくされていた状況がとあるオーナーによって暴露されていた。

 本来ならばオーナーの日々の生活を支える大きな役割を果たすべき制度が有名無実化してしまっている現状は明らかに問題であり、また、それを売り文句にしてオーナーにフランチャイズ契約を持ちかけている本部社員のやり方は「欺瞞的顧客誘引」(実際よりも有利な条件を事実としてそうであるかのように相手に誤認させ、他の競争相手ではなく自らとの取引へ顧客を誘引すること)に当たる――これが同ユニオンの(3)における主張だ。

◆本部の社員がオーナーに無断で商品を発注

(4)おでんなどの発注強制、さらにはオーナーに無断で行われる本部社員の発注は窃盗であり、優越的地位の濫用である

 同ユニオンによると、本部の社員が、オーナーに無断でおでんや酒、栄養ドリンクを発注することがあるという。

 本部社員はなぜ窃盗として告発もされかねないというリスクを背負ってまでこんなことをするのだろうか。ある組合関係者は次のように語る。「本部社員は管理職から『あの店から〇〇の発注を100個入れさせろ』『ポリスの目を持て』などという言い方をされる。オーナーに対する支配を強要される」

 セブン本部のオーナーに対する視点は、オーナーをどう動かし、本部の利益となる行動をさせていくか、というものだ。そして本部の内側でも当然ながら管理職と社員という上下関係があり、社員は自身の出世のために本部の立場につくか、それともオーナーの立場に立って健康問題や資金繰りを共に考えていくかという二者択一を迫られる。

 ここまで見てきた中では、利害関係が対立し、食うか食われるかの競争を強いられているオーナーと本部の関係が目立ってしまったが、しかし本部にしても社員同士の上下関係や立場の違いから構成されている組織である。オーナーと本部の対立というのは確かに大きいが、それが全てだとしてコンビニ問題を割り切ってしまうのは実状に即していない、あまりにも単純な見方だといえる。

◆オーナーをだまし討ちするようなドミナント出店

(5)事前に了解を得ないままドミナント(チェーンストアが地域を絞って集中的に出店する経営戦略のこと)を進めた事例は欺瞞的顧客誘引である

 同ユニオン書記長の鎌倉玲司さんは、千葉県の某所で事前に十分な了解を得ず、言いくるめるような形でドミナントが行われた事例について語った。

「千葉の田舎で、2キロ離れているところに別の店舗ができるという話だった。田舎のコンビニで2キロというのはかなり近い距離だと考えてもらいたい。最初は道路の向こう側だから売り上げには影響が出ないとの話だったので了承したが、実際にできた店舗を見てみると道路のこちら側。話が違うじゃないかと文句を言いに行ったが、担当者に『私は後任者で前任者からは何も聞かされていない』などとはぐらかされてしまった。何も話を聞いていないなんてことはありえないはずだ」

 公取委はドミナント自体に関しては営業の自由として認めているようだが、しかしこのような形で行われるドミナントは欺瞞的顧客誘引であり独占禁止法違反に当たる、というのが(5)における同ユニオンの主張だ。

◆時短営業の違約金として1700万円を請求

(6)時短営業をした場合に違約金を1700万円請求すると通告したのは優越的地位の濫用である

 これは具体的に言えば今年2月、大阪のセブン‐イレブン南上小阪店のオーナー・松本実敏さんにセブン本部が突き付けた「処分」だ。今回の集団申告にも参加している松本さんは、2019年2月に人手不足を理由に時短営業を始めた。

 するとたちまち本部の担当者が店に来て、24時間営業をやめなければ契約解除であると告げられ、それでも時短営業を7日間続けると1700万円の違約金を請求するとまで通告したのだ。しかしその後この件がメディアによって大きく報じられると、本部は態度を大きく軟化させ、オーナーヘルプ制度による支援を提案した。しかし松本さんはその条件に納得できず、今も時短営業を続けている。

 今年の3月、オーナーらとの団体交渉にコンビニ本部が応じなかったことを不当労働行為であるとする申し立てに対し、厚生労働省の中央労働委員会が「オーナーは事業主であり、労働者ではない」との見解を示した。

 だが、自らの判断で店を7日間閉めただけで1700万円もの違約金を請求されるコンビニオーナーが本部に対して圧倒的に不利な立場に立たされているのは事実であり、それを救済できずして何が労働委員会だろうか?

 このような状況で、実態としては「労働者」ともいえるようなオーナーらの地位の向上、待遇の改善のために取り組めるのは、労働者自身による運動体である労働組合のみだ。このような時代の要請に応じて登場してきたのがコンビニ関連ユニオンだといえよう。

 集団申告の直前に行われた記者会見では、その他のオーナーからも、独占禁止法違反だと思われるセブン本部の行為について具体的な話が飛び出した。会見は弁護士会館のロビーで開かれたささやかなものだったが、どのオーナーも怒りをあらわにしてこのような本部の理不尽な対応を語り、落ち着いた会館の一角には緊迫した空気が漂った。現場にいたとある組合関係者は「オーナーの8割はうつ病なのではないか。そこまで追い詰められた状況でなんとかやっている」と話した。

 記者会見を終え、オーナーらはすぐ隣にある公取委の建物へと入っていった。そして2時間後、集団申告を終えて出てきたそれぞれのオーナーの顔には笑みが浮かんでいた。同ユニオン書記長の鎌倉さんは「調査は間違いなくするということだった。排除を出すか出さないかの判断はこれからだが、手ごたえはあった」と話した。

 申告が終わるとオーナーらは東京・四ツ谷のセブン‐イレブン・ジャパン本社へ向かい、本部に対して要求書と、24時間営業が義務化された現状の見直しを呼びかけて集めた署名約15000筆の提出を行った。現在もchang.orgで署名を募っている。

【鈴木翔大】

早稲田大学在学。労働問題に関心を持ち、執筆活動を行う。

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