統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石

HARBOR BUSINESS Online / 2019年9月19日 8時33分

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9月11日、経済産業省で就任会見を行う菅原一秀新経産相

<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第17回>

 9月11日に行われた内閣改造、意外な人物が経済産業大臣に抜擢された。菅原一秀衆議院議員、当連載で何度も取り上げてきた問題議員の一人だ。入閣待機組に名前が挙がってはいたが派閥に属しておらず入閣の可能性は低いと見られていた。では今回の組閣でなぜ無派閥の菅原が初入閣を果たせたのか、見え隠れするのは菅義偉官房長官の思惑だ。

◆多数閣僚入りした統一教会関係議員

 第4次安倍再改造内閣で新たに閣僚として就任した顔ぶれをみると、これまで本連載で取り上げてきた議員の名が散見できる。当該閣僚と統一教会(世界平和統一家庭連合)との関係を以下に列記する。

・武田良太 国家公安委員長・防災・行革担当大臣

 2017年2月に韓国で開かれた世界平和国会議員連合(IAPP)の総会で韓鶴子から“国家復帰”指令を受け、同年7月には同教団による外遊議員団の一員として渡米。昨年10月、国際勝共連合50周年大会に出席

・竹本直一 IT政策・科学技術担当大臣

 2016年11月、世界平和国会議員連合日本創設式典の晩さん会に出席、翌17年7月、統一教会国会議員団の一員として米外遊

・萩生田光一 文部科学大臣

 2014年10月、八王子市民ホールで開催された統一教会会長教団会長の講演会に来賓出席し祝辞

・加藤勝信 厚生労働大臣(再任)

 2018年7月、厚労大臣として岡山の教団1万人信者大会に秘書を代理出席

・衛藤晟一 沖縄・北方・一億総活躍大臣

 2014年1月、教団関連団体・世界戦略総合研究所の定例会で講演し参議院議員会館使用の便宜

・田中和徳 復興大臣

 2016年10月、川崎駅での駅頭で教団機関紙・世界日報を配布。翌17年5月、教団北米会長一行と自民党本部で会談

・菅原一秀 経済産業大臣

 2017年

 3月、世界平和女性連合に政治活動費から会費1,5万円を支払い

 10月、衆院選で統一教会青年信者運動員活用疑惑

 11月、教団2世組織 ・勝共UNITEが永田町の広陵会館で開催した「改憲実現2020大会」に出席し信者を激励

〈参照:統一教会イベントで2世信者を激励した議員に「信者運動員使用」疑惑浮上。本人を直撃|HBOL〉

 これまでの安倍政権の組閣では数人の統一教会系議員が閣僚に登用されてきたが、今回の閣僚人事は“異常”と呼んで差し支えないレベルで同教団への貢献度が高い議員が登用されている。

◆新経産相就任前に行われた取材者への虚偽刑事告訴

 今回の人事で筆者が注目したのは経産相に抜擢された菅原一秀だ。今年6月から7月にかけ、菅原の政治家としての資質が問われる“事件”が立て続けに起こった。

 菅原及びそのスタッフは確認できただけでこの数年来継続して有権者への顔写真付きカード型カレンダーの配布を行ってきた。カレンダー配布が公職選挙法に抵触する可能性を指摘した筆者のツイートが6月中旬、カレンダーの画像ごと削除、アカウントもロックされた。何者かが規約違反としてツイッター社へ虚偽通報を行ったのだ。

 菅原の関与を疑った筆者が菅原の地元事務所へ問い合わせると、電話口の秘書は折り返しの連絡をすると言ったきり居留守を続けた。そこで直接、取材申し入れのために筆者とジャーナリストの藤倉善郎氏が同事務所を訪れると、連絡を受けた国会事務所の秘書が110番通報を行い警察が出動する事態に。これら一連の経緯について藤倉氏との連名で公開質問状を出したところ、菅原議員サイドは建造物侵入での刑事告訴を仕掛けてきたという流れだ。

〈参照:公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か|HBOL〉

〈参照:「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由|HBOL〉

 一連の菅原議員側の対応は、取材の申し入れに対し虚偽の刑事告訴で応じるというおよそ公人が採る手段とは思えないものであり、立法に関わる国会議員が既存の法制度を使い取材者を虚偽の罪状で陥れようと画策したことは看過できない事態だ。

 今回の菅原の入閣は、取材や報道の自由、国民の知る権利を権力でねじ伏せようと画策する政治家に更なる権力を持たせたということに他ならない。

◆菅官房長官への信奉をアピールしていた菅原議員

 では菅原の閣僚抜擢の背景には何があったのか。菅原は平成15年の衆院選初当選以降、党内のどの派閥にも属していない。その理由は本人の弁によると菅義偉官房長官の存在があったからだという。

「衆議院議員初当選以来、無派閥を16年間貫いてきたのはこの方がいらしたからです」(2019.4.30すがわら一秀ツイートより)

 菅原の両親は菅と同じ秋田出身で卒業したのも菅と同じ県立湯沢高校だ。菅原は国政選挙に挑み敗れた父親と同郷の菅を慕い、その懐刀として動いてきた。“地盤・看板・カバン”を持たない菅原は自分と同じく世襲議員ではない菅を信奉している。

 菅原が毎年秋に開く政治資金パーティには菅を主賓として招いている。

 今年6月、菅原は菅官房長官をバックアップする10数人の自民党無派閥国会議員の連絡会「令和の会」を立ち上げた。

 菅官房長官を支える自民党グループには党内の派閥の枠を超えた「偉駄天の会」があり、その中に当選回数4回以下の無派閥議員が集まった「ガネーシャの会」がある。そのほか当選1回の議員が集うグループもある。

 これらの“菅グループ”には今回防衛副大臣に再登用された山本朋広・自民党前国防部会長や星野剛、当選1回議員の“菅信奉会”の事務局を務める島村大など統一教会と関係の深い議員も多い。

 また今回、法務大臣に就任した河井克行は2016年に故・鳩山邦夫と派閥横断型の政策グループ「きさらぎ会」を立ち上げ現在、同会の幹事長を務めているが、同会の顧問である菅官房長官とは近しい関係にある。河井が主宰する自民党の若手・中堅議員の会「向日葵(ひまわり)会」も実質“菅グループ”と目されている。

 これら“菅グループ”の国会議員は50人を超える勢いだ。

◆副大臣や政務官人事を仕切る菅官房長官

 副大臣や政務官の人事は実質的に菅官房長官が差配する。菅が開く会合では若手議員と官僚を引き合わせ、政務官や副大臣ポストをあてがうという。

 前述の通り副大臣にも統一教会と親しく、菅が目をかけている山本朋広を防衛副大臣に復帰させた。その他、国土交通と復興副大臣にはやはり統一教会と緊密な関係にある御法川信英が就任し、財務政務官には2006年参院選で統一教会票を官邸から割り振られた宮島喜文が任命された。内閣官房副長官には今年6月、統一教会の関連政治団体の集会で宮城県世話人を務めた西村明宏が就任した。

◆次の閣僚20人「NEXT20の会」開催

 経産相就任日のブログに「夢にまで見た階段での記念撮影」と首相官邸での記念撮影について記した菅原。

 大臣のポストを切望する菅原は3年前の2016年10月、地元の会合で支援者を前に「練馬からは50年以上大臣が誕生していない」「6期目で大臣」と発言、そのことをFacebookに書いた支援者に「6期目で大臣のくだりを安倍総理が見たらやばいです。消してください」と慌ててお願いするなど、安倍から不興を買うことをおそれる小心ぶりを露呈させていた。

 その翌月、菅原は京王プラザホテルで菅官房長官や森喜朗元総理らを招き『すがわら一秀君と築くNEXT20の会』と題した政治資金パーティを開いている。次の20人の閣僚に加わるのは自分だとアピールするかのようなタイトルだ。

 NEXT20の会から3年後、菅原は念願の首相官邸の階段に立ったということになる。

◆増大する菅官房長官の影響力

 菅原にとって、菅官房長官との関係は生命線である。菅原は経産大臣への抜擢についてメディアの取材に「菅さんが推薦してくれたのだろう」と答えている(9/12付読売新聞朝刊)。

 筆者はそう遠くない時期に菅原の入閣があるとは予想していた。ただしそれは現在の安倍政権下ではなく次期政権を菅義偉官房長官が担った際に、忠臣として尽くしてきた菅原が登用されるのではないかと思っていた。

 菅原が「令和の会」を立ち上げたのも、次の総理大臣を菅だと睨み、菅を担いでおけば閣僚のポストが自分のものになるという計算だ。

 菅政権を待たずしてこの段階で菅原が初入閣を果たしたということは、それだけ菅の影響力・発言力がより一層大きくなっているということだ。菅政権の誕生がますます現実味を帯びてきた。

◆次期菅政権へ向けて進む静かな策動

 今回の組閣人事に仕込まれた菅の思惑とはいかなるものか。菅原の他には菅ルートでは安倍晋三とは距離を置く小泉進次郎が環境大臣として初入閣した。小泉進次郎の結婚記者会見を首相官邸で行わせたのも菅の手配によるものと指摘されている。

 その他、河野太郎も外務大臣から防衛大臣として引き続き重用し、前述のように菅に近い河井克行も法務大臣に就任した。

 今年4月、菅原はブログで菅についてこう書いている

「令和の発表で、一段と存在感が増したが、あくまで黒子に徹すると自らおっしゃっている。

まさに黒田官兵衛である。しかし、天の時、地の利、人の和は自然体で起こるのが、政治の世界の常であり、人間社会の摂理である。平成の次の令和に向けて、日々、国家国民のために菅長官のもとで懸命に汗を流していく」(菅原一秀氏のブログより)

◆新経済産業大臣の任命後初当庁と記者会見を取材

 筆者と藤倉氏は11日夜、菅原が多くの職員が出迎える中で経済産業省に初当庁する場面を取材した。筆者らの姿を認めた菅原新大臣の表情が歪む。

 その後、同省内で行われた就任会見には多くのメディアが参集した。質疑応答では、挙手をする筆者を司会者が無視。筆者らは指名されることはなく、菅原新大臣に統一教会への対応や取材・報道の自由と国民の知る権利についての姿勢を問うことは叶わなかった。

 菅原は今年7月の参院選で、自身が仕切り菅らが登壇した武見敬三候補の演説会に勝共UNITEの主要メンバーや都内の教団地区で政治家対策を行っていた渉外担当者を招待するなど、統一教会との緊密な関係を続けている。

<参照:菅官房長官登壇の選挙演説会で会場を仕切る菅原一秀衆議院議員がジャーナリストを不当排除|HBOL>

 今後、政権の移行とともに問題教団との関係性も継承されていくのか、関係する政治家の動向を含め注目されるところだ。(文中敬称略)

<鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)>

【鈴木エイト】

すずきえいと●やや日刊カルト新聞主筆・Twitter ID:@cult_and_fraud。滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表~主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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