大荒れ必至のポンド相場。ブレグジット、最後の荒波にはこう備えろ

HARBOR BUSINESS Online / 2019年11月15日 8時31分

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 ブレグジット交渉決着へ。そのカギを握るのが12月の総選挙。現状、離脱を進める保守党が優勢だが、まさかのEU残留シナリオも見えてきた!?

◆大荒れ必至! [最後のブレグジット]に備えろ!

 ’16年の国民投票で英国のEU離脱が賛成多数となってから3年、長い戦いが終わりを迎えようとしている。12月12日に総選挙を実施して、改めてブレグジットに関して英国民に信を問うことが決定したのだ。これで離脱派のボリス・ジョンソン首相率いる保守党が大勝すれば、来年1月31日をもって正式にEU離脱が開始される……が、事はそう予想どおりには進まなそう。元為替ディーラーで英国在住の松崎美子氏が話す。

「保守党の優勢は変わらないものの、野党第1党で2度目の国民投票を要求している労働党が巻き返してきています。’17年の前回総選挙では、圧倒的に保守党が優勢と伝えらえていたのに、日を追うごとに支持が低下し、最終的にまさかの過半数割れに終わりました。今回も同じように保守党が単独過半数(326議席)を取れないようなら、またもEU離脱に向けた審議が難航する可能性があります」

◆12月12日の総選挙→来年1月31日についに離脱?

 ご存じのとおり、ポンド相場はブレグジットに振り回されっぱなしだ。’16年の国民投票を受けて、ポンド/ドルは半年ほどかけて1.50から1.20まで3000Pipsも下落。英中銀の利上げに伴い、’18年前半には1.40を回復したものの、EU側との離脱交渉が遅々として進まず、再び下落トレンドへ。「EU離脱を遅らせるぐらいなら、のたれ死んだほうがマシだ!」という離脱強硬派のジョンソン政権が今年5月に誕生してからは、「合意なき離脱」の可能性が高まり、一時1.20の節目を割り込む場面も見られた。「1.00まで下落するという予想も出た」(元外銀為替チーフトレーダーの西原宏一氏)という。ところが、ジョンソン首相は土壇場で逆転満塁ホームランを放った。

「EU離脱案で最大の懸念事項となっていたのが、英領北アイルランドとアイルランド共和国との国境問題。英国が離脱すれば、北アイルランドも離脱することになるため、その国境での人やモノの行き来が妨げられてしまう。それを防ぐためにEU側は『北アイルランドだけはEUの単一市場と関税同盟に残るバックストップ(安全策)を設けるべき』と提案しましたが、英国が拒否して交渉は難航していました。この問題をジョンソン首相は独自の交渉力で解決したんです。アイルランドのバラッカー首相と直接交渉して、バックストップに代わる新たな枠組みに関して合意を取りつけてしまった。

 簡単に言うと、北アイルランドはEU単一市場のルールに従うが、今後ルールに従うか否かは北アイルランド議会に決定権を委ねるというもの。民主的手続きを取り入れた枠組みにバラッカー首相は納得してEU側も了承。これまで離脱協定案を否決し続けてきた英下院も、ついに協定案の基本方針については承認したのです」(同)

◆ハングパーラメントならEU残留でポンド急騰も!?

 これにより、“合意ありの離脱”が現実味を帯びて、ポンド上昇相場へ。西原氏はこのトレンド転換で数百Pips以上の値幅を取ることに成功したという。当然、今度の総選挙に向けて、ポンドは大荒れ必至! 荒稼ぎできるチャンスが目前に迫っているのだ。で、一体、どう推移するのか?

「考えられるシナリオは大きく2つ。総選挙を経て保守党が単独過半数を獲得するか、否かで分かれます。過半数獲得なら1月31日の期限前に合意ありの離脱がほぼ確定的となって、ポンドは急騰することでしょう。外資系投資銀行などはポンド/ドルは1.40まで上昇する(直近1.28)と予想しています。直近の保守党の支持率から予想獲得議席を計算すると、最低でも351議席となるので、これがメインシナリオ。一方で、過半数割れなら、EU離脱協定案を可決させるハードルが高くなる。元保守党議員などを取り込む多数派工作で法案可決に持ち込むと予想していますが、一時的にポンドは売り込まれて対ドルで1.26ぐらいまで売り込まれると見ています。ただし、ジョンソン首相のバックには’16年の国民投票でEU離脱派を賛成多数に導いた“キャンペーンの天才”カミングス上級顧問がいます。この人は負ける戦をやりません。現在7議席持っているシン・フェイン党は一貫して採決に不参加の姿勢を示しいるほか、英下院の議長・副議長には議決権がないため、“実質的な過半数”は320議席。ジョンソン首相がこれを確保するのはそう難しくないと考えています」(松崎氏)

 実は、仮に保守党過半数割れとなってもポンドが大爆騰するケースが考えられるという。

「ロンドンの為替ディーラーに聞いたところ、ハングパーラメント(どの政党も単独過半数を獲得していない状態)になる可能性が80%と予想していました。すると、保守党に代わり労働党が中心になって残留派の自由民主党などと協力して、再び国民投票を実施する可能性も浮上する。世論調査では残留支持が50%を超えているので、一転してEU残留が濃厚になる。EU側としては願ったりかなったりなので当然、承認するでしょう。その場合は、’16年の1.50までポンド/ドルが一気に急騰するのは必至です」(西原氏)

 どちらに転んでもポンド高が進む可能性があるため、足元ポンド/ドルが1.27程度まで下押しするなら、絶好の買い場か? 総選挙情報をウオッチしながら、ポンド相場で一発逆転を狙うべし!

◆<ブレグジット交渉の変遷>

’16年6月 英国民投票で「EU離脱」が賛成多数に!

’17年3月 EU側に離脱を通告 → 離脱期限は’19年3月に

’17年6月 英国総選挙でメイ首相率いる保守党が当初の予想に反して過半数割れに

’18年7月 英外相ボリス・ジョンソン(現首相)が穏健離脱案に反発して辞任

’18年11月 英臨時閣議で「離脱協定」の草案を承認→緊急EU首脳会議で合意へ

’19年1月 英下院で離脱協定案を大差で否決

’19年3月 12日・29日と離脱協定修正案の採決を行うも2度とも否決 → 離脱開始延期へ

’19年5月 メイ首相が保守党党首の辞任を表明→ ボリス・ジョンソン首相就任「10月31日までにブレグジットを遂行する」

’19年9月 英議会で「合意なき離脱」回避法案を可決→ ジョンソン首相は保守党造反者21人の党籍をはく奪

’19年10月 17日に急転直下で英・EUが離脱協定修正案に合意

’19年10月 22日に英議会が離脱協定案を初めて承認!→ スピード審議の日程案は否決され10月31日の離脱は不可能に。EU側が1月31日までの離脱期限延長を承認

’19年12月12日 英解散総選挙

シナリオ1 ポンド急騰

 ボリス首相率いる保守党過半数獲得→ 合意アリ離脱へ

シナリオ2 ポンド下落 or急騰

 過半数獲得ならず→離脱協定案の審議が難航/残留の可能性も

【松崎美子氏】

英国在住トレーダー。ロンドン・シティのバークレイズ銀行本店などで為替ディーラーとして活躍した後、独立。現在、欧州のファンダメンタルズ情報を有料サロン等で発信中

【西原宏一氏】

元外銀為替チーフトレーダー。シティバンクをはじめとした大手外銀で為替部門のチーフトレーダーとして活躍。現在は、有料メルマガで日々の自身のトレード情報を発信中

取材・文/池垣 完

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