スルガ銀行「不正融資」被害者が告発!「保険抱き合わせ商法」の闇

HARBOR BUSINESS Online / 2019年12月16日 8時33分

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◆金融庁は2度目の行政処分を検討?

「保険業法違反に保険販売代理店としてのコンプライアンス違反、優越的地位の乱用。少なく見積もっても、これだけの法令違反が該当するため、金融庁はさらなる行政処分を検討中と聞いています」

 こう話すのはメガバンクの融資担当者。さらなる処分が検討されているのは、かつての“地銀の雄”。経営再建中のスルガ銀行だ。

 周知のとおり、同行の名を地に落としたのは、昨年発覚した不正融資事件だった。女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズ(SD)など、投資用不動産を販売する事業者と結託して、繰り返し与信枠の乏しい投資家にも融資を実行。審査に通りやすくなるよう、投資家の預金残高や契約書類などの偽造を事業者に求めていたことが明らかになった。

 一連の騒動を受けて、昨年10月に一部業務の停止命令を受けた同行は、経営再建を本格化。目下、シェアハウスオーナーの“借金帳消し”*という奇策で事態の幕引きを図ろうとしている。だが、不正問題の清算には程遠い。いまだクローズアップされていない不正がくすぶっているのだ。それが冒頭の「保険」。スルガ銀行から2億円の融資を受けた斉藤さん(仮名・50代男性)も次のように話す。

〈*11月20日に相次ぎ報じられたのがシェアハウスオーナーに対する借金棒引きという救済措置。オーナー側の弁護団の求めに、スルガ銀行が応じる姿勢を示した格好だ。ただし、同行のシェアハウス向け融資残高は1992億円(9月時点)。うち4 割の返済が3か月以上滞っている。多額の貸倒引当金を計上済みのため、財務的負担は限定的か〉

「私は持病を2つ抱え、融資を受ける直前には入院もしていたのに、スルガの担当者から『生命保険に加入してくれ』と何度も勧誘されました。いつ発病してもおかしくないのに加入できるのか?と聞くと『問題ない。方法はいくらでもある。(改ざんの)専門の業者もいるから任せてほしい』と。根負けして保険証、健康診断書、預金残高、源泉徴収票を渡したら、何事もなかったかのように生命保険証券が送られてきて驚きました」

◆健康診断書の偽装も発覚!?

 問題点は不正融資と共通する。

「健康診断書の偽造、別人の保険証を使った替え玉、または差し替えによって保険加入の審査をパスさせる不法行為が発覚しています。組織ぐるみの偽造が行われていた可能性も疑われている。どの銀行でも利益率が高い保険商品の販売は注力しているセクションですが、スルガの営業手法はルールを逸脱していました」(メガバンク融資担当者)

 加えて、融資の実行と保険をセットにしていた点に問題の根深さがある。昨年の騒動では、不要なカードローンを抱き合わせで販売していた実態が報じられたが、保険も半ば強制的に加入させていたことが明るみに出たという。これは銀行法に抵触するうえに、優越的地位の乱用に当たる。スルガ銀行新宿支店で1億円超の融資を受けた山野さん(仮名・50代男性)も「断ると融資を受けられないという圧を感じた」と話す。

「融資の審査中に突然、保険の担当者を連れて来て『確定申告の際の保険控除枠がまだ余っています。絶対に得なのでやりましょう!』と言われました。何度断っても、『家賃収入があるので負担はないも同然』などと何時間も話し続ける。耐えきれずに『加入します』と言うまで、融資の話は一切ありませんでした」

 山野さんが加入させられたのは500万円の死亡保障がついた低解約返戻金型保険だった。月々の保険料1万6000円に1.25%の予定利率がつく積み立て式の保険だが、20年に設定された払込期間中に解約すると積立額の60~70%の“低返戻金”しか発生しない。加入者からすれば20年間はマイナス運用となる分、「保険会社と代理販売する銀行にとっては割のいい商品」(メガバンク融資担当者)だという。

◆融資を「人質」に恫喝まがいの保険勧誘

 大手IT企業で働く中村さん(仮名・30代男性)はスルガ銀行以外にも、不動産投資の際にメガバンクや地銀から融資を受けていた。だが、他行と比較して、スルガの融資は明らかに異質だったという。

「正直、他行で融資を受ける際も電話口で事務的に保険やカードローンの加入を勧められます。ただ、スルガのように保険の担当者を同席させるようなことはなかった。おまけに、融資の条件として保険加入を勧めてくるので非常に悪質。私は生命保険のほかにも、他社の金利2%のカードローンをスルガの5%のローンへと乗り換えさせられました」

 金融機関に勤める吉田さん(仮名・40代男性)は融資を受ける際に生命保険に加入したが、騒動後に解約を申し出ると、巨額の解約金をチラつかされたという。

「私の借入額は計5億円。スルガは4.5%という金利の高さがネックでしたが、何年かすれば金利交渉に応じると言われてシェアハウス投資用にローンを組んだのです。ところが、不正融資が明るみに出る前に、家賃の支払いが停止。月々のローン返済額は160万円を超えていたので、返済猶予と保険の解約をお願いしたら、『担保措置がなくなるため、現金5000万円を担保として入れろ』『解約手数料は1000万円だ』と言われました。契約時に説明を受けていないと訴えても『説明した』の一点張り。不正行為は明らかなので現在、ローンの返済や保険料の支払いについてスルガと交渉中ですが、出口は見えていません……」

◆預金残高の改ざんを薦められる

 よりあからさまに融資条件として保険加入を勧められたケースもある。横浜支店でローンを組んだ山岡さん(仮名・30代男性)が話す。

「年収500万円のサラリーマンの身で1億円を超える融資が受けられるか不安に思っていたら、投資用不動産の販売会社に預金残高の改ざんを勧められました。『どこでもやっている』と言われて、改ざんを了承してしまったのですが、融資が下りる直前になってスルガから『審査の関係上、5000万円分の保険に入るか、自宅を担保に入れてくれ』と言われたんです。自宅に抵当権が打たれていることは担当者も把握していたはずなので、保険の強制加入を求められた格好。100万円超のローン返済からすれば、月々の保険料2万5000円は小さく思えますが、払込期間は29年なので私が死なない限り、トータルの支払いは870万円になる。投資するシェアハウスそのものに融資額に相当する担保価値があると言われていたのに、直前になって負担増を強いる。こんなことが許されるのでしょうか?」

 スルガ銀行は一部投資家の元本カットなどに応じているが、保険はあくまで保険会社との契約。半ば強制的に加入させられながら、保険料を払い続けている投資家は少なくないという。スルガ銀行に囲われた投資家の苦悩が解消される日は遠い。

◆<スルガ銀行不正融資問題の流れ>

’18年1月 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズで、賃借料支払い停止トラブルが表面化

4月 金融庁が「かぼちゃの馬車」オーナーに融資していたスルガ銀行に対して緊急立ち入り検査を実施

   オーナーへの賃料支払いを停止していたスマートデイズは民事再生法の適用を申請(負債総額約60億円)

5月 スマートデイズが破産手続開始

   スルガ銀行員が預金残高などの顧客情報の改ざんに関与していたとしてオーナーらが刑事告発

6月 過剰融資の発覚に伴う貸倒引当金の増額により、スルガ銀行の’18年3月期最終利益は前期比8割減に

8月 ’19年4~6月四半期決算でスルガ銀行の不良債権額が前年同期比4.6倍へと一気に急増

9月 第三者委員会がスルガ銀行の調査結果を公表。「組織的な不正」「企業統治の機能不全」が明らかに

   スルガ創業家の岡野光喜会長ら取締役5人が引責辞任

10月 金融庁がスルガ銀行に6か月間の一部業務停止命令

11月 スルガ銀行が業務改善計画を公表し、融資の際の資料改ざんなどに関与した行員117人を処分

’19年4月 金融庁が行政処分を解除

5月 スルガ銀行が実施した全件調査の結果を公表。不適切融資は全体の6割強に達する1兆700億円に

   家電量販大手のノジマ、新生銀行と業務提携を発表

10月 創業家の全保有株をノジマに譲渡すると発表

<取材・文/栗田シメイ>

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