自動配布延期になったMicrosoftの新「エッジ」、手動DLでインストールしてみた

HARBOR BUSINESS Online / 2020年1月24日 15時32分

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◆延期になった新Microsoft Edge安定版リリース

 当初の予定とは違う事態になってしまった。この記事を企画したとき、Windows 10 に自動更新で提供される新Microsoft Edge について書こうと考えていた。

 去年の時点で、2020年1月15日に新Microsoft Edge の安定版がリリースされると案内されていた。そして、Windows 10 の自動更新で提供される予定だと発表されていた。しかし、日本での自動配布は延期されてしまった。確定申告の時期にあたるため、4月1日以降順次開始されるそうだ(参照:窓の杜)。

 大いなる肩透かしである。どうしたものかと考えた末、Microsoft のサイトに行って、直接落としてインストールした。実は、けっこう楽しみにしていたのである。

 というわけで、実際に新Microsoft Edge をダウンロードして、インストールしてみた感想や手触りについて書こうと思う。

◆新Microsoft Edgeをインストール

 サイトにアクセスして「DOWNLOAD for Windows 10」ボタンを押すと、「MicrosoftEdgeSetup.exe」という 1.75 MB の実行ファイルがダウンロードされる。このファイルを実行すると、ネットからデータを取得してインストールが始まる。

 元々の Edge と新しい Edge はインストール先が違う。古い方は「C:\Windows\SystemApps\Microsoft.MicrosoftEdge_8wekyb3d8bbwe\MicrosoftEdge.exe」という、システムアプリケーションのフォルダに入っている。新しい方は、「C:\Program Files (x86)\Microsoft\Edge\Application\msedge.exe」という、プログラムをインストールするフォルダに保存される。

 旧版では、コマンドプロンプトで「start shell:AppsFolder\Microsoft.MicrosoftEdge_8wekyb3d8bbwe!MicrosoftEdge」や「start microsoft-edge:」を実行すれば「MicrosoftEdge.exe」が起動していた。新版を入れた場合は、同じコマンドを打つと「msedge.exe」の方が起動する。レジストリを確認してみたが、「msedge.exe」のパスがいくつも登録されていたので、こちらを起動するように書き換わっているのだろう。

 新Microsoft Edge の動作は軽快だ。旧版は、私の環境では、どこかもっさりしていたが、新版はそうしたところがない。Google Chrome の挙動と変わらない。

 「Ctrl + Shift + I」で開発者ツールを表示してみたが、Google Chrome と同じ画面が出てきた。実は、この部分がどうなるのか気になっていた。この部分は、旧版に似せて来るかもしれないと思っていたが、Chromium のものをそのまま利用しているようだ。ここを頑張っていじる労力は無駄なので、当然と言えるだろう。

 特徴的な部分は、Webページの描画部分ではなく、その周辺にある。いくつかの設定や機能を見ていくことにしよう。

◆自動でパスワードも閲覧履歴も引き継がれていた

 私の環境では Google Chrome を規定のブラウザにしている。インストール後に気付いたのだが、Google Chrome のブックマークが、そっくりそのまま新Microsoft Edge に取り込まれていた。また、閲覧履歴も取り込まれている。インストール時に操作するところはなかったので、自動で規定のブラウザを調べて設定を取り込んでいるようだ。

 新Microsoft Edge の右上を見ると、Google Chrome のようにアカウントがある。ここには、Windows にログインしているアカウントが自動で反映されていた。中身を見てみると、「同期は有効になっています」と表示されている。Google Chrome のようなログインは必要ない。これは、OS を持っている企業の強みだ。

 「…」ボタンのメニューから「設定」を開くと、「プロファイル」欄に、「アカウントの管理」「同期」「パスワード」「お支払い情報」「住所などの情報」「ブラウザー データのインポート」という項目が並ぶ。

 試しに「パスワード」をクリックしてみたが、Google Chrome で利用しているパスワードがインポートされている。「ブラウザー データのインポート」をクリックしてみる。インポート項目として「お気に入りまたはブックマーク」「保存されたパスワード」「住所などの情報」「お支払い情報」「閲覧の履歴」「設定」「開いているタブ」と並んでいる。

 おそらくインストール時に、このインポートが自動でおこなわれるのだろう。そのため、Google Chrome で設定したパスワードが、自動で新Microsoft Edgeに取り込まれていたのだ。

 ブックマークは予想していたが閲覧履歴やパスワードは驚いた。そのまま乗り換えてもらおうという強い意志を感じた。

◆広告で儲けるGoogleとの明確な差。追跡ブロック

 Google ではなく、Microsoft の Webブラウザだなと印象付けられるのが、設定の「プライバシーとサービス」の項目だ。「追跡防止」という項目が先頭にある。説明が付いているので以下に転載しよう(参照:詳細説明)。

 Web サイトでは、トラッカーを使用して閲覧に関する情報を収集します。Web サイトでは、この情報を使用して、サイトの改善やパーソナル設定された広告などのコンテンツを表示する場合があります。一部のトラッカーでは、ユーザーの情報を収集し、アクセスしたことがないサイトにその情報を送信することがあります。

 「追跡防止」には、「基本」「バランス」「厳重」の三種類があり、デフォルトでは「バランス」になっている。「ブロックされたトラッカー」を閲覧出来るので確認すると、ブロックした回数が最多のものとして「Google」が先頭に表示される。

 Google は広告で儲けているからユーザーの追跡をおこないたい。しかし、Microsoft は広告企業ではないので追跡は必要ない。ユーザーのプライバシーを考えて、追跡をブロックしても問題ない。デフォルトの設定で、Google をはじめとするトラッカーをブロックしているのが面白いと感じた。

◆拡張機能はどうなっている?

 メニューの「拡張機能」を開くと、ここも面白い。「Microsoft Store から拡張機能を入手する」を選択すると、Microsoft Edge Addons のページが開いて、拡張機能をインストールできる。

 それだけでなく、Chrome ウェブストア – 拡張機能 に行くと、「Chrome ウェブストアから Microsoft Edge に拡張機能を追加できるようになりました。」という案内と、「他のストアからの拡張機能を許可する」というボタンが表示される。

 徹底的に、Google Chrome からの乗り換えの敷居を下げようとしている。この許可の切り換えは、設定の「拡張機能」の左下にあるトグルボタンから簡単におこなえる。

◆ChromiumベースのWebブラウザ、新Microsoft Edge

 さて、新Microsoft Edge を見て来たが、このWebブラウザは Chromium(クロミウム)ベースである。Chromium は、オープンソースで、Google Chrome のベースになっているWebブラウザだ。開発に Google が関わっており、昔は WebKit というレンダリングエンジンが用いられていた。2013年以降は、そこから分岐した Blink に変わっている。

 Chromium ベースのWebブラウザは非常に多い。本家とも呼べる Google Chrome だけでなく、Opera、Brave、Vivaldi など、多くのWebブラウザに採用されている。そこに今回、Microsoft Edge が加わることになる。

 Chromium は Web の一大勢力だ。そして、Google の意向が強く反映される。Webの標準とは関係なく、Google が望む仕様が実装されやすい。

 Microsoft Edge が、独自Webブラウザを捨てて、Chromium ベースになったのは明確な Microsoft の敗北だろう。しかし、Chromium に Microsoft の意向が反映されるようになったとも言える。

 Windows パソコンを購入したあと、Chromium で表示されるなら、わざわざ Google Chrome をダウンロードしてインストールしない、という人も増えるのではないだろうか。少なくとも、Google Chrome を絶対入れようという気持ちはなくなった。

 どの程度、新しい Microsoft Edge がシェアを取るかは分からない。しかし、もしシェアが大幅に伸びたならば、今後の Web の力関係が変わるかもしれない。

<文/柳井政和>

【柳井政和】

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。

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