春夏物の供給遅延から付録付き雑誌まで……。新型肺炎で「モノができない」ショックが日本を襲う

HARBOR BUSINESS Online / 2020年3月9日 8時33分

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マスクはどこも品薄が続いている 写真/編集部

 中国・武漢で発生した新型肺炎は、安倍政権による後手後手、そして「やってる感」だけの対応策のせいもあって、今や完全に「国内問題」になった。東京五輪の中止も叫ばれるなか、すでに日本経済は大打撃を受けている。

◆自転車や傘、衣料が不足し外食メニューは値上げに!?

 新型肺炎の影響で、アパレル業界は大混乱だ。ユニクロを展開するファーストリテイリングは3月に発売予定だった新商品95品目のうち、一部を延期すると発表。オンワード樫山やダーバンなども、春夏物の供給に遅れが生じる可能性があるという(『朝日新聞』2月25日付)。アパレル業界紙『WWDジャパン』デスクの林芳樹氏は、生産体制の裏事情を話す。

「4月以降の春夏物の商品供給が遅れるのではという懸念が、業界で広がっている。日本で販売されている衣料品の7割は中国で生産されているが、さらに生地、糸、ボタン、ファスナーといった副資材もそれぞれ別々に生産されているので、ブランドの工場だけ稼働を再開しても、それらの一つでも生産が止まったままだと完成品を供給できないのです」

 関連して、バッグや小物などの付録付き女性誌も影響を受けているという。

「3、4月発刊予定だったタイトルの付録が中国から来ず、付録なしでの発行になったんですが、それで売れるはずがない。社内は騒然としていますよ」(出版社の編集者)

 また、都内の専門商社の社員も今後、品薄が予想される商品を次のように挙げる。

「新生活が始まる春先に自転車がまず品薄になる。日本で売られている自転車の85%は中国産で、1月から新車が入らない。また99%が中国で作られているビニール傘も同様で、梅雨シーズンに傘不足になるのは確実です」

 さらにECサイトでガジェットを販売する店舗の運営者は言う。

「中国産の充電ケーブルや液晶防護シール、スマホケースなどは売れ筋で、利幅も大きかったのですが、2月に入ってから全く入荷がない状況です。手持ちの在庫を売り切ったら終わりです。アマゾンでもスマホ関連グッズは徐々に値上がりしていますよ」

◆食料品の価格上昇も懸念される

 一方、中国産のニンニクやタマネギなど輸入野菜も品薄気味。外食や冷凍食品などで、価格上昇を懸念する声もある。

「すでに1割ほどタマネギの価格は上がっていますが、これ以上になると価格を上げざるをえない。一般家庭の買い占めも始っているので心配です」(都内の和食店店主)

 新型肺炎で、われわれの生活がいかに中国に依存しているかを思い知らされた格好だ。

◆日本人と中国人を敵に回し、数千万円稼いだ転売ヤー

 マスクの品薄が続くなか、一時メルカリなどで定価の数倍でマスクを売る転売ヤーの存在がクローズアップされたが、中華圏で騒動になったのが「京都の中国人マスクおばちゃん」だ。

 この女性は、「医師から横流ししてもらったマスクを中国に転売し2000万円儲けた」とSNSに投稿。中国で「国難に便乗してカネを稼いだ非国民」として猛バッシングを浴びた。編集部がこの中国人女性に連絡を取ったところ「投稿は冗談だよ(笑)」と否定。だが、SNS上にはマスクを大量に発送する様子や、大量の札束の写真が。真相は藪の中ということか。

 さらに中国ではパニックに便乗して荒稼ぎをした2人の人物が話題となっている。取材したジャーナリストの周来友氏は話す。

「2月上旬、医薬品の転売業者だったSなる在日中国人が、日本から期限切れの防護服を中国に売りつけたとして大炎上しました。中国ネット民の“人肉検索”により、Sに防護服を調達した災害医療系の商社を営む日本人Aの存在も暴かれた。AはSARS騒動の’04年に防護服を大量に仕入れるも、1万着が在庫としてダブついており、それを今回の感染拡大に乗じ中国で転売した。防護服の品質保証期限は3年程度とされているので完全に期限切れ。中国では防護服の価格は1着3500円ほどなので、ゴミ同然のものを売って3000万円以上を儲けたことになります。この件に関しては中国領事館も調査に動いています」

 2人は確かに荒稼ぎには成功したかもしれないが、日本人と14億の中国人を敵に回してしまったことは決して小さくはない代償である。

◆多くの業界で売り上げが減少していた!

 さらにさまざまな業界ではすでに大ダメージと言ってもいい状況になっているところもある。

●民泊……すでに撤退モードの民泊では、地域掲示板「ジモティ」に家具付きの営業権が各地で大量に出品される事態に。「3000万円借り入れて3棟も運営してるのにこのままでは確実に返せない」(都内の民泊運営者)

●ホテル・旅館……最も影響が大きいといわれる宿泊施設。「修学旅行や国内団体客の大量キャンセルで相当厳しい」(神奈川県内のホテル)。「日本人からも『中国人が利用しているから嫌』と敬遠されていて悲しい」(栃木県内の温泉宿)

●旅行業……インバウンドではすでに廃業も出ている(大分県)が、アウトバウンドも卒業旅行やGW海外旅行のキャンセルが相次ぐ。「3月の羽田増便に向け多数のツアーを企画していたが、すでに中止になったものも」(大手旅行代理店)

●土産物店……全国の有名観光地にある土産物店はどこも閑古鳥が鳴く。「1月末から中国人観光客がいなくなり、例年より6割以上も減った。同業者には店のリフォーム代のローンが払えないと言う人もいる」(神奈川県内の土産物店店主)

●市場……大阪・黒門市場や京都・錦市場など外国人に人気の市場からも人が消えた。「黒門は外国人向けの割高価格だったので日本人は寄りつかない」(大阪在住者)。「錦市場はどこも売り上げが例年の半分以下らしい」(同市場関係者)

●ドラッグストア……“爆買い”対象で大打撃。ツルハHDは大阪の心斎橋・難波エリアの9店舗の中国人売上高が5割減少したという(『日本経済新聞』2月7日付)。「皇潤や救心など高価格帯商品の在庫が山積み状態」(都内のドラッグストア店員)

●百貨店……2月の売り上げが15%減、免税売上高は7割も減少したという(日本百貨店協会発表)。「3月の催事は全部中止になると聞いた。デパ地下もガラガラ」(都内の百貨店店員)。地方の百貨店は新型肺炎を機に倒産が増えそうだ

●居酒屋……新年会や歓送迎会など会合のキャンセルが相次ぐ。「20~30人規模の会合が3月だけで6つもキャンセルに。4~5人グループも激減」(都内チェーン系居酒屋店員)。「若者も家にこもっていて客が消えた」(都内バー店主)

●イベント関連産業……政府による自粛要請であらゆるイベントが中止される事態に。エンタメ業界だけで「損害は数百億円超」(『スポーツ報知』2月27日付)との予測も。「ウチは五輪中止になれば確実に倒産しますね」(都内イベント会社社員)

<取材・文/奥窪優木 広瀬大介 大橋史彦 アズマカン 写真/編集部 時事通信社>

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