タイで日本人が事実上入国不可能に。ベトナムにいた記者もあわや家族のもとに帰れなくなる羽目に

HARBOR BUSINESS Online / 2020年3月26日 8時31分

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3月15日時点のタイ・スワナプーム空港出発ロビー。この時点でも利用者はかなり少ない

◆タイ、厳格な入国規制で日本人は事実上入国不可能に!?

 東南アジアでは世界中にまき散らされた新型コロナウィルス感染症「COVID-19」を食い止めるため、実質的な入国規制を外国人に強制している国が増えている。日本よりずっと危機感を持ち、強硬な手段に素早く転じている印象だ。

 観光で人気のタイは国籍問わず入国の際、この新型ウィルスの感染に関し陰性であることを証明する、到着72時間以内に発行された医師の診断書を必要としている。この書類は現状の日本の検査体制からして日本での発行はほぼ不可能だと考えられ、実質的に日本在住の日本人はタイに入国することは極めて困難になった。

 また、診断書のほか、10万米ドル(約1000万円)に相当するCOVID-19に対する治療費が約束された保険に加入していることも義務づけられている。

保険は空港などで加入できる海外旅行傷害保険でどうにかなるはずだが、診断書が難しく、ほとんどの日本人が日本の空港でそもそも搭乗拒否を受けているようだ。この措置は先日3月22日から実施されているということで、実施以降タイに入国した日本人は数えるほどと見られる。

 タイは、日本の外務省が毎年公表している在留邦人者数の中で米国や中国、オーストラリアに続いて4番目に長期滞在日本人が多い国だ。そのため、生活の基盤をタイに置いている日本人も少なくない。用事があって日本に一時帰国したものの、タイに戻れなくなった日本人もいることだろう。また、日系企業も多く進出しており、特にこの時期は駐在員の交代時期でもある。この入国問題で後任が着任できない問題も増えているようだ。

◆ベトナムにいた筆者もあわや帰タイ不可能に!?

 先日まで筆者はベトナムに滞在していた。3月15日に入国したが、その日から欧州27ヶ国からは入国できなくなったり、18日からは外国人へのビザの発給停止が実施された。ベトナムは社会主義国であるため、防疫措置の実行が素早い。外国人の入国禁止も時間の問題と見られ(実際に3月22日から実施されている)、そうなると国内に滞在する外国人が隔離される可能性もある。

 筆者はそうなる前にベトナムを離れる必要があり、元々予定していた3月20日の便でタイへと戻らなければならないと18日ごろから焦りを感じていた。ところが、というか案の定、そう簡単に話が進まなかった。

 3月20日はベトナムの格安航空会社ベトジェットの正午ごろの便でバンコクへと飛ぶ予定だった。しかし、前日の17時前後に欠航のメールが届いていたことに朝になって気がついた。ちょうど取材に出かけてしまい、メールに一切気がつかなかったのだ。

 慌ててベトジェットに問い合わせると、どこのニュースにも載っていない話が飛び出してきた。

「昨日政府の決定で、ベトナム発の格安航空会社は4月25日まで海外行きはすべて欠航なんですよ」

 国内線は飛ぶのだが、国際線は飛ばないという。一方ではフライトがちゃんとあるという人もSNS上にいたりで情報が錯綜している。いずれにしても、ベトジェットの公式ウェブサイトを見ると確かにすべてのフライトがない。ほかの格安航空会社もベトナム便がすべてない状態だった。ベトジェットでは振り替えどころか、払い戻しもないということで、ほかの便を探すしかなくなってしまう。

◆ダメ押しに飛び込んできたタイの入国制限

 同時にとんでもないニュースが飛び込んでくる。それが、冒頭の「タイ入国時に全外国人に診断書の提出が義務づけられ、22日午前0時から適用される」という在タイ日本大使館からの一斉メールだった。ここでも情報が錯綜し、SNSでは21日から始まるとも言われた。こうなると、筆者が確実にタイに帰ることができるのは20日中でないとならない。ベトナムでもその診断書が出るかわからないことと、ベトナムでどこかに強制収容されてはたまらない。

 ベトナム航空とタイ国際航空がベトナム-タイ間を1日に何便も飛ばしているのでネット検索してみると、ベトナム航空は地方の空港から翌1日の朝に出る便しかない。タイ航空は20日20時半に出る便があった。これなら20日中にタイに到着する。

 筆者はその便を急遽買い直し、タイに戻った。昼間のタイ航空はほぼ空でタイに飛んだという情報があったが、夜の便は満席だった。大半が欧米人のバックパッカーらしき人々だ。おそらく、格安航空会社でチケットを持っていたものの、筆者同様に欠航になったため、駆け込みでこの便に乗ったと見られる。

 ハノイの空港ノイバイ国際空港は、その日1~3時間に1本というほどフライト数が減っていた。そのため、空港自体にはほとんど人がいないが、タイ航空のチェックインカウンターだけ乗客が殺到している異様な光景だった。

◆なんとかタイの空港に辿り着いた筆者。入国は……

 フライトは順調で、なんら問題なくタイの玄関口であるスワナプーム国際空港に到着する。問題は入国が可能かどうかである。

 タイではその数日前からすべての入国者に対し、健康診断の自己申告を提出するように義務づけていた。実施後に入国した人の話では、2時間くらい待たされたという人もいれば、簡単にチェックされて終わったという人もいた。おそらく欧州など警戒されている国からの便は時間がかかり、そうでない国は簡単ということなのかと見られる。その点で言えばベトナムは早いはずだ。ただ、到着が22時半なので、2時間後から実質的な入国規制に入る可能性があり、すでに厳しくなっている可能性もあった。

 その健康申告は入国審査場の手前で行われる。審査場の前にゲートを設け、申告が完了したらゲートを抜け、入国審査を受けられる。その申告所の前はたくさんの人で溢れかえっていた。ただ、列に並んでいるというわけではなく、多くの人がスマートフォンとにらめっこしている状態だった。

 というのも、この自己申告は用紙、もしくはスマホのアプリで申告することができる。特にアプリの方は入国中に行動を追跡できると言われ、タイ政府はアプリの方を推奨しているという話がある。実際に係員たちも英語でアプリのダウンロードを勧めており、一切紙についてはアナウンスしない。

 そこで筆者はタイ語で「自分は紙の方がやりやすいんだけど」と言うと、特に訝るわけでもなく、さっと用紙を渡された。この記入に2分程度、係官に紙を渡し承認のスタンプを受けるのに数秒、入国審査は人が並んでいないのでここも数分で終わった。むしろ、通常時よりも早くタイに入国することができた。

◆無期限の入国制限、飲食店も営業停止

 この自己申告は、診断書が必要になった現在も入国審査場の手前で実施されているという。すでに実質的な入国禁止措置がとられているので入国者も激減している今は、欧州や日中韓などの要警戒国からでなければおそらくもっと簡単に入国できると見られる。むしろ、現在は出発地でタイ行きの飛行機に乗ることの方が難しいだろう。

 ただ、これらの防疫措置は現状期限が決められていないようだ。また、バンコクを始め、多くの県で飲食店も営業停止命令が出ている。バンコク都からは外出を控えるように要請も出ている。これらは4月12日までと一応の区切りはあるものの、延長される可能性は高い。情報がめまぐるしく変化しているし、新型コロナウィルスが収束したとしても経済的な打撃は大きく、犯罪増加に繋がる懸念もある。防疫措置による入国規制の期限うんぬんよりも、在住者や観光で来る外国人にとって大きな問題が残りそうである。

<取材・文・撮影/高田胤臣>

【高田胤臣】

(Twitter ID:@NatureNENEAM)

たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など

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