格差社会の行く末。日本も決して他人事ではない、夢・就職・結婚・出産すべてを諦めざるを得ない韓国の若者の受難

HARBOR BUSINESS Online / 2020年3月27日 8時32分

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街には疲れきった様子の若者も散見される。「アルバイトをしながら就活をするから慢性的に疲労が溜まる」(33歳・就活者)という

◆大学を出ても就職が困難、原因特定できず解決策なし

 韓国映画『パラサイト/半地下の家族』がアジア映画として史上初のアカデミー賞4部門を受賞し、韓国の存在が一躍、世界に轟いた。同映画は韓国社会の深刻な貧困問題を描き、観る者に衝撃を与えたが、そこでも描き切れないほどに実際の韓国社会には闇が溢れている。

 IMF危機から20年以上、韓国を悩ませているのが若者の就職難だ。’19年にはわずかに回復したが、劇的に改善はしていない。そのため現在の20~30代はあらゆるライフイベントを放棄せざるを得ないという意味で「N放世代」と呼ばれている(Nにはライフイベントの数を当てはめる)。学歴偏重、企業の賃金格差、女性差別など原因が複雑に絡み合い、解決策はいまだない。

◆夢・就職・結婚・出産すべてを諦めざるを得ない若者の受難

 このように、韓国社会で最もしわ寄せを受けているのが、若者だ。’50~’60年代生まれの親世代が子女の教育に全力を注いだ結果、国内の大卒者が8割となり過当競争が勃発。0.1%の大企業が一流大卒を優先的に採用するため、そこから溢れた若者たちは大卒にもかかわらず、必然的に中小企業や非正規職に就くしかなくなる。青年失業問題に詳しい梨花女子大学のホン・ギソク教授は「『あれだけ勉強したのに』『大卒なのに肉体労働なんて』という意識や、中小企業によるパワハラも社会問題化するなど複合的な要素も作用している」と話している。事実、大卒者の就職率は年々低下している。

◆仕事がないので家を借りられず、結婚や出産は夢のまた夢

 就職難の問題は結婚にも直結する。韓国の賃貸住宅は、退去時に返還されるものの数十万~数百万円のデポジットを前納する必要がある。だが、そもそも職がないため工面できず、「就職できない=入居できない=結婚できない」という構図が出来上がる。そのため「就職・恋愛・結婚」の3つを放棄する「3放世代」と言われていたが、昨今ではそこに「出産・家・趣味(夢)・人間関係」を加え「7放」とも呼ばれている。人間関係は、単に交際費がないなどが原因である。

 女子大生のミン・ハナさん(仮名・25歳)は「周囲の同世代はもはや、結婚を人生の重荷としか思っていません」と話す。大学を休学してのインターンや就活に数年を費やし、1か月前にようやく小さなIT会社に就職したイ・エナさん(仮名・27歳)は「本当は専攻していた福祉関係の仕事をしたかった。でも一流大卒でないと希望の職に就くのはほぼ無理。幼い頃から土日を犠牲にしてまで勉強しても、夢が叶うわけではない」と嘆く。給料は月額13万円ほど。生活費が足りず、週末は市場で野菜を卸す仕事をしており、「貧しさのあまり売春をするコも実は身近にいる」と話す。

◆起業してもすぐ大企業にパクられる……

 起業の道は考えないのだろうか? かつてパティシエを目指していた公務員のユ・ソンテクさん(仮名・34歳)はこのように話す。

「例えば個人事業主として商品がある程度話題になると、大企業に買収という名目で吸収されるか、パクられるのが韓国のパターン。相手は大企業なので、よほどのオリジナリティを発揮できなければ泣き寝入り。だから、中途半端な力量なら独立しないほうがマシだと思って気が引けてしまうのです」

 未来を担う若者が夢を描けないようでは、国の前途は多難だ。

◆売れなくてもとりあえず食えるシステムの韓国風俗

 「大卒でも貧しさのあまり売春をするコも……」と前出のミンさんは語った。悲しいかな貧困若年層の受け皿になっている韓国風俗業界だが、ユニークな点がひとつある。韓国人の風俗事情通によると、日本との違いは指名の多い女のコが独り勝ちするのではなく、指名のないコとの格差が広がらないよう配慮されている点だ。

 例えば、クラブ式按摩の場合、テーブルで一緒に飲んだ中から気に入ったコを選び、別室などで本番に及ぶ。本番は60分あたり約1万2000円。最長勤務時間が12時間で、人気嬢の場合はその間10人ほど相手をする。選ばれなかったコは、再び次の客のテーブルに着き、一度も本番に入れなくてもテーブルの回数に沿って給与が出る。額は本番嬢の半額程度だという。人気嬢が、売れないコを食わせている構図だ。月収は、売れっ子の場合は、例えば週3日勤務であれば最大140万円前後と推測される。

 ところで、人気のコは気配りがある、性格がいいなど付加要素があるのだろうか?

「いえ、見た目が一番いいコです」

 身も蓋もないが、韓国で風俗に行く場合、男同士で飲んだ帰りに皆で酔ってなだれ込むことがほとんどであるため、手っ取り早く顔で選ばれるのだとか。日本のようにルックスを補うための努力は必要ない。だがその半面、飛びぬけて稼ぐこともできないのである。

 ちなみに韓国でもパパ活のような脱法売春もごくたまにあるが、「密室だと男が暴力的になることが多い」ことや、つい先日韓国全土を震撼させた「n番部屋事件」のような事例につながることもあり、不特定多数と繫がるようなアプリでそうした脱法売春をする層はほとんど存在しない。店に在籍するか、太い人脈を得るかにかかっているようだ。

<取材・文/安宿緑>

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