幸福の科学の「ゴールデン・エイジ」予言と表裏一体な「終末論」の危険度

HARBOR BUSINESS Online / 2020年7月8日 8時31分

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千葉県長生村ですでに開設されている「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」は、大学の設置申請は2014年に不認可とされ、教団関係者が文科省職員を脅すなどしたとされて5年間認可しないとのペナルティまで課せられた。現在、大学の認可を再申請中

 昨日配信した記事では、幸福の科学がコロナ禍で出した「霊言本」の中に、「ポア思想」とも言える一節があることを指摘した。

 今回は後編として、その「ポア思想」の危険度をより際立たせる、キーワード「ゴールデン・エイジ」予言について語っていく。

◆ゴールデン・エイジの破綻と終末論

 大川総裁は著書『太陽の法』で、2020年に日本が黄金期「ゴールデン・エイジ」を迎えると予言している。それを実現するのが幸福の科学の使命であると繰り返し説いてきた。

 今の幸福の科学の内部的な「状況」を知る上で、この「ゴールデン・エイジ予言」は極めて重要だ。予言された年である今年2020年。すでに事実上この予言は破綻しており、コロナ禍とあいまって「ゴールデン・エイジ予言」が期限間近の終末論と表裏一体となっているからだ。

 教団は2015年に「幸福の科学大学」を開設予定だったが、これはゴールデン・エイジの担い手として若手信者(大半が2世信者)を育成するためだった。それに先立って、2010年と2013年にそれぞれ幸福の科学学園那須校と同関西校(それぞれ中学・高校)が開校。その卒業生が「幸福の科学大学」に入り、ゴールデン・エイジの初年から大学が卒業生を輩出する。そんなスケジュールだった。

 しかし大学の設置申請は2014年に不認可とされ、教団関係者が文科省職員を脅すなどしたとされて5年間認可しないとのペナルティまで課せられた。現在、大学の認可を再申請中だが、仮に認可されても1期生の卒業は「ゴールデン・エイジ」に間に合わない。大学への学生の最大の供給源である2つの幸福の科学学園は、ともに定員割れに陥っている。〈参照:”「幸福の科学大学」は開学しても定員を維持できない? 系列中高が軒並み定員割れに突入中”|HBOL〉

 幸福の科学の「ユートピア建設」に向けた活動の大きな柱の1つである幸福実現党の政治活動も、結党から11年間、国政選挙で全敗を続けている。結党時の2009年衆院選では、地球至高神「エル・カンターレ」であり「再誕の仏陀」であるはずの大川総裁自身も落選している(以後、二度と自身は立候補しなくなった)。

 教団の活動は成果を生み出せず、ネット上や週刊誌では霊言が「イタコ芸」などと嘲笑される。

 しかもいま日本はおろか世界中が新型コロナウイルスの恐怖に怯え経済も後退。黄金期どころではない。「2020年にゴールデン・エイジが到来する」という大川総裁の予言と教団の目標は、すでに頓挫したと言っていい。

◆コロナ禍は「神風」か

 当初、大川総裁は霊言で、コロナ禍を「エル・カンターレをなめている人々への罰」であるかのように語った。日本での感染拡大が本格化する前に収録された『中国発・新型コロナウィルス感染霊査』(2月25日発売)にある、コロナをばらまいた宇宙人の霊の言葉(と称して語る大川総裁の言葉)だ。

〈まあ、日本に罰(ばち)が当たるとしたら、エル・カンターレをなめすぎていると思います。私たちは、これ以上はもう許せない。限界です。〉

 一方で、5月に発刊された前出の松下幸之助霊言は、コロナ禍を教団にとっての追い風であるかのように捉えて見せる場面も。

 たとえば、これまで宗教(による病気治し)の商売敵だった医療関係者が入信してくるだろうから、入会料金をちょっと高めにしようとか、病院丸ごと祈願して1億円単位の金を取ろうなどと、カネを儲ける算段をしている。他宗教の指導者が神や霊を呼び出せないとして、〈もうこんなの、世界の宗教は〝倒産〟よ。もう、みんな要らないんで、こりゃあ、君らねえ、世界制覇の一歩手前よ〉と語り、潰れそうな銀行を買収して〝幸福の科学債〟を発行しようなどというアイデアも語っている。

 むしろ、コロナのおかげでゴールデン・エイジが到来すると言わんばかりだ。

 コロナ禍が始まるよりも前の2019年。カナダでの講演で大川総裁は、ゴールデン・エイジについてこう語っている。

〈それは、この地球上から、無神論者や神への信仰を持たない人々を一掃し、二〇二〇年から二〇三〇年にかけて、そうした大きな力が滅んでいくということです。それはたとえば、神を信じない一党独裁、共産主義独裁の巨大な国家が、神の力によって倒されるということ〉(『いま求められる世界正義』)

 コロナの感染拡大が中国から始まったのは、唯物論国家による覇権主義に対する罰。これによって無神論者が一掃されるのでゴールデン・エイジが到来する。内容は無茶苦茶だがストーリーは一応つながっている。

◆終末論と表裏一体

 しかし明るい未来に向けてまっしぐら、という空気ではない。この機会を逃さず幸福の科学による「一教支配」を実現しなければ、むしろ日本は滅ぶ。そんな終末論と表裏一体になっている。

〈まあ、国民主権はあってもいいんだけれども、「国民主権は神様から委託されているもの」というふうに思うわけですよ。

(略)

 だから、神様に主権を返さなきゃいけないんですよ。〉(『大恐慌時代を生き抜く知恵 松下幸之助の霊言』=2020年)

〈だから、幸福実現党は、次は勝たなければ駄目ですよ。次、君たちが全敗するようなら、この国は終わる。これで終わるから、本当に終わるから。〉(同)

〈幸福実現党が通らなければ、この国は終わる。〉(同)

 コロナ関連の別の霊言でも、こんな一節がある。

〈幸福の科学は、もはや三十年以上、活動してきた。ただ、日本社会も、これを諸宗教の一つに封じ込めようということで〝頑張り〟続けてきた。救世のためにやっていることを、名誉心や権力欲、地位欲、物質欲、金銭欲のためにやっているものだと誤解して、嘲笑ってきた。その〝ツケ〟は払わなければならなくなるだろうということですね。〉(『釈尊の未来予言』=2020年)

 大川総裁は常々「無神論」「唯物論」を敵視するが、この『釈尊の未来予言』は、「宗教全般」ではなく「幸福の科学」への人々の無理解に対して神仏が怒っているという設定だ。幸福の科学を「諸宗教の一つ」と捉えることすら許さないのだから。

 前出の大川総裁の発言も合わせて総合すると、人類や日本を滅亡から救いゴールデン・エイジを実現する条件は、「無神論者」の一掃ではなく事実上「幸福の科学を理解しない者・認めない者」の一掃であると捉えることができる。つまり、幸福の科学による「一教支配」が実現しなければ日本は滅亡するのである。

◆「忖度集団」の恐ろしさ

 オウムでは、教祖自身が殺人やテロを指示した。幸福の科学でも、たとえばフライデー事件は教祖の指示だと証言する元職員がいる。90年代にオウム真理教を激しく批判していた教団内で、大川総裁が直筆のFAXで「ブラフ(脅し)」での訴訟を指示したこともある。訴訟を起こす場合など、組織としてまとまった行動については大川総裁が指示を出したり事後承認したりしているケースはありそうだ。

 一方で、自称発刊数2600冊以上という膨大な大川総裁の著作に散財する教えや教団の方針を忖度した信者たちが、教祖の具体的指示によらない問題行動を取るケースも目立つ。たとえば筆者に対する暴力行為などは、その場に筆者が取材に行くことは事前に告知していない場面だった。事前に教祖から指示が出るはずもない。逆に、取材の際に必ず暴力を振るわれているわけではないから、「いつでもどこでも藤倉を見たら殴れ」という教祖の指示が出ているとも思えない。

 これは、教義や教団の方針を忖度した現場の教団職員や信者の暴走だ。だからこそ、「ポア思想もどき」の登場は危険なのである。

 信者にとって「暴力を振るっていい相手」が、大川総裁の言葉を忖度した結果「早く死んだ方がいい相手」に変わったら、どうなるか。「無神論者」や幸福の科学を批判する人々が、単なる「悪魔憑き」や「闇の勢力」(幸福の科学ではそう言われる)から、「早く死ぬべき人々」に変わったらどうなるか。信仰を捨てた信者は教団で「魔が入った」などと言われるが、「罪を重ねる前に早く死んだ方がいい人々」に変わったら?

 それらが死んで一掃されなければゴールデン・エイジは来ないし、日本は滅亡するのだ。命を捨てる行動こそが信仰の証明であるという教祖の言葉を真に受けて、命がけで人を殺そうとする信者が出現したとしても不思議はない。

 仮にそんな狂信的な信者が1人でもいれば、それだけで「幸福の科学の教えに基づく殺人」は起こる。そこまでいかないにしても、テロや殺人でなければ構わないというものでもない。

 自分の教えは世俗の法律よりも優越するという前出の大川総裁の言葉には、〈私は、決して、「世間の常識や法律などを無視してよい」と言っているわけではありませんが〉(法話『選ばれし人となるためには』)というエクスキューズが付いている。にも関わらず、本稿で列挙した職員や信者たちの行動は、すでに法律を無視したものがいくつも見られる。

 忖度で動く集団においては、たとえ教祖の言葉であっても細部のエクスキューズはどこかに消し飛んでしまう。教祖ですら制御できない集団、あるいは教祖ですら制御できない個人を生み出す集団ということだ。

 こうした教団の変化や行動にしっかりと社会的監視の目を向けることが、オウム事件が残した教訓ではないだろうか。

<取材・文・撮影/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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