Facebookから広告を引き上げる企業が拡大中。#StopHateforProfit から考える、インターネット広告はどうあるべきか

HARBOR BUSINESS Online / 2020年7月11日 8時32分

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stophateforprofitのオフィシャルサイト

◆カネ儲けのためのヘイトをやめろ!

 #StopHateForProfit(#StopHate4Profit)というタグをご存知でしょうか。直訳すればこれは「金儲けのためのヘイトを止めろ」という意味になります。

 極めて単純化して言えばこれは、「Facebookに広告を出すな」というキャンペーンです。日本人でこの流れを知っている人は少ないかもしれませんが、このキャンペーンに賛同した企業は少なくありません。

・ユニリーバ

・コカコーラ

・Microsoft

・PUMA

・ソニー

・North Face

・Ben & Jerry’s

・フォード

 上に挙げたのはほんの一例で、その数は拡大し続けています。興味のある方は下記記事をご参照ください。

●PARTICIPATING BUSINESSES | Stop Hate for Profit

 一件、Twitterで盛り上がっただけでこれだけ多くの企業が広告を取りやめるのか?と思われるかもしれません。そもそも、このキャンペーンは、日本で想像されるよりも遥かに大きく、そしてパブリックなものです。

 ADL(名誉毀損防止同盟)やMozilla、NAACP(全米黒人地位向上協会)など、公的な機関や企業がサポートしているもので、単なるTwitterだけの盛り上がりではないのです。(参照:Stop Hate for Profit)

◆なぜ Facebook は悪の象徴となったのか

 2010年にジェシー・アイゼンバーグが「ソーシャルネットワーク」でFecebookの創業者、マーク・ザッカーバーグを演じたとき、世界は彼のものであるようでした。

 2015年に産休をとったときも、世の中は絶賛しました。(参照:ザッカーバーグ“育休宣言”がもたらす波紋|wedge infinity)

 彼を「若きリベラルな成功者」から「邪悪な王」へと変えてしまったのは、2016年の大統領選挙です。

「破滅論者」スティーブ・バノン主席戦略官が仕切ったこの選挙に関わっていたこの選挙で、後に数々の疑惑に見舞われるドナルド・トランプ大統領が当選を果たします。

 この選挙に関わっていたのがイギリスの分析会社ケンブリッジ・アナリティカでした。(この辺は、Netflixの「グレート・ハック」をぜひ)

 ともあれ、これによって意図せずとも「トランプ誕生の立役者」と思われてしまったザッカーバーグ氏は、連邦議会の公聴会に引っ張り出され、袋叩きに合います。(参照:オカシオ・コルテス議員、公聴会でFacebookのCEOを締め上げる|itmedia、

フェイスブック追い込むオカシオコルテス議員にザッカーバーグがタジタジ|businessinsider)

◆ファクトチェックと広告

 ザッカーバーグ氏とFacebookが批判されている内容は、以下のようなものです。

・Facebookはろくにファクトチェックをしていない。選挙戦において出そうと思えば偽の広告を出すことができる

・ファクトチェックのパートナーに、Daily Callerという右派系のニュースを持ってきた(Daily Caller 自身が有名なフェイクニュースサイト)

・Breitbert news (全米で最も有名なフェイクニュースサイト)を信頼できるメディアとして認証した

 ところで、Webのプラットフォーマーとして、あるいは旧来からの自由主義の常識に従えば、Facebookとザッカーバーグの説明は、間違っているようには聞こえないかもしれません。

 偽の広告を出したとしても、選挙でどこに投票するか判断するのは国民だし(だから、暴力的、アダルトなどのもの以外は出せるようにする)、

 Daily Caller がファクトチェックのパートナーになったのは第三者団体に加入しているからだし、

 Breitbert news はアクセスが多いし、多様な意見のために排除するようなことはしない……というのがザッカーバーグの大まかな回答です。

 ところが、残念ながらすでにこれは「充分」な回答ではないとみなされてしまいます。

 つまり、単に平等であるだけではなく、公平性を担保するためには、偽のニュースや、差別的な広告を排除するために、プラットフォーマー自身が投資をしなければいけない。それが、少なくとも #StopHateforProfit 運動などに賛同を示す人にとっては共通の見解になっているのです。

 Facebook は、「差別や情報操作、虚偽報道と充分に戦っていない」とみなされている。それが現在のFacebookの立ち位置です。

◆そして #StopHateForProfit が始まった

 このような前提のもと、#StopHateForProfitは始まりました。Facebook が今後どうなっていくかはわかりませんが、一つ明確なことがあります。

 それは、プラットフォーマーも明確に責任を問われる時代であるということです。Google にせよ、Facebook にせよ、Twitter にせよ、すでに広告で莫大な収益を上げていますが、Web広告の嫌われ度合いは年々増しています。〈参照:ネット広告への強い嫌悪感、テレビや新聞の倍以上に。「しつこい」「邪魔」が3割超【JIAA調べ】 | Web担当者Forum〉

 スマホのノンターゲティングの漫画系の広告はもともとひどいですが、最近ではYouTubeも、ひどい広告ばかりです。

 エログロならまだマシですが、人間を不快にさせることでアテンションを集める手法が蔓延し、Webの空間は大きく汚染されています。(いじめ、不倫、浮気の漫画、あとブスだとかブサイクだとかが飛び交う恋愛・自己啓発系のコンテンツなど、みなさんも見た覚えがあるでしょう)

 テレビCMにせよ、ラジオCMにせよ、媒体は通常審査をするわけですが、この審査の部分を媒体側に丸投げし、プラットフォーマーが十分に行えていない。

 そのくせ文字の比率が何%だとかはチェックするというのは一体どういう思考なのか、と思ってしまいます。(この点では、FacebookやAdSense / Google広告はマシな方で、TwitterやYDNのほうが断然ゆるいですが)

◆広告とはなにか

 結局の所、広告というのは見せたくないものを見せることでお金が発生します。かつその見せたくないものが「刺激的」であればあるほど、効果が高くなります。それが日本ではエログロですが、海外ではヘイトコンテンツです。(日本にもありますが)

 このような構造がある限り、プラットフォーマーが投資をし、収益性の高い広告を諦めてでも健全性を取り戻さなくてはいけません。

 今のWeb広告はひどいものです。だからこそ、儲かっているプラットフォーマーが、株主の圧力をはねのけ、適切に審査を行うようにしなければいけない、という点に関して私は100%同意します。

 Tech Giantは2010年代の寵児でした。ソーシャルメディアは多くの面で世界を変え、情報が誰でも簡単に手に入るようになった。それは世界にとって素晴らしいことでした。

 そして、情報が存在するところ、広告は常に血液として存在します。しかし、かつてのSEOスパムが駆逐されたように、社会的に不利益な広告をしっかりと規制しない限り、その血液自体が腐敗していく、ということではないでしょうか。

<文/遠藤結万>

【遠藤結万】

えんどう・ゆうま(Twitter ID:@yumaendo/筆者のnote)●早稲田大学卒業後、グーグル株式会社(現グーグル合同会社)に入社。中小企業向けセールスとアジア太平洋地域の分析を担当。退社後、CMO株式会社を設立し、インハウス化やマーケティング戦略支援、マーケティング教育などを手がける。デジタルマーケティングについてなどを「ブログ」にて執筆・公開中。著書に『世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング』(技術評論社)

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