レジ袋有料化、最前線では何が起きていた? コンビニ店員に聞いてみた

HARBOR BUSINESS Online / 2020年7月19日 8時33分

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 今年7月1日よりプラスチック製買い物袋の有料化がスタートした。ただでさえ多岐にわたるコンビニのレジ業務に加え、今年はコロナ禍の影響も大きい。当初は混乱が予想されたが、果たして……!? 騒動の舞台裏に迫った。

◆レジ袋有料化でやっぱり登場、モンスター客

 近年、プラスチックゴミの海洋流出による資源・環境問題が世界的課題になっている。そこで、プラスチック資源循環戦略の一環として打ち出され、省令改正によって必須となったのが、「レジ袋の有料化」だ。レジといえば、マスクやアルコールの入荷を巡り、客がドラッグストアの店員を怒鳴りつける、いわゆるカスハラ(カスタマーハラスメント)が記憶に新しい。では、業務内容が多岐にわたるコンビニのレジでは、一波乱起きているのでは? まずは、利用者に聞き込みを行った。

<対象外となるプラスチック製買い物袋>

・持ち手がなく、袋の中身が景品や試供品

・福袋のように袋が商品の一部であるもの

・プラスチックの厚さが50マイクロメートル以上

・海洋生分解性プラスチックの配合率100%

・バイオマス素材の配合率25%以上

 さすが、「コンビニなら週5で通っている」という人も珍しくないほど身近な存在なだけに、短時間で多くの声が集まった。

「『レジ袋はいるけれどカネは払わん』とゴネる老人を見た」「『有料化? 知らん!』と言い放つオヤジがいた」といった目撃情報から、「なぜか温かい弁当を入れてもらう茶色い袋だけは無料でもらえると思い込んでいた」という勘違い派まで。恥ずかしそうに、「酒やつまみをたんまり買い込んで、袋1枚で足りるかと思ったらはみ出てしまい、追加で1枚袋を買った」と目測違いを告白する向きもいた。なかには、「戸外で弁当を食べ終わり、いざ捨てようと思ったらゴミ袋がないので焦った」といった、いかに日々レジ袋に頼っていたか(!?)がわかるエピソードまでさまざま。

◆大きな混乱はなかったが、店員当惑の場面も

 では、当のレジ担当者はレジ袋有料化初日をどんな思いで迎えたのだろう? 神奈川在住、コンビニ歴8年の遠藤道子さん(仮名)に話を聞いた。

「有料化前夜は、レジ袋のいる・いらない、購入した商品をお客さまがマイバッグに入れるのかどうかなど、聞くこと・やることが増えるので、朝昼の混雑時はどうなるのかな?と不安しかありませんでした」

 実際は思った以上の混乱はなかったそうだが、全く問題がなかったわけではない。

「なかには汚れたマイバッグを持ってこられる方もいます。先日はお客さまがエコバッグを広げた瞬間、強烈な匂いが……。何かと思ったら、なかに玉ねぎの皮が入っていて、その周辺に白いカビがびっしり。正直、ここにお弁当やコロッケを入れても大丈夫だろうか?と思いましたが、入れてほしいと言われたので従いました。新型コロナウイルスも心配ですし、できればスーパーにあるようなサッカー台(作業用カウンター)を置いてもらって、お客さまには自分で袋詰めをしてもらいたいですね」

 と、遠藤さん。これから夏に向けて、汚れたマイバッグに触りたくない気持ちはよくわかる。利用者側としてもレジ袋は複数枚用意し、適宜、洗濯しながら使いたいもの。『死都調布』シリーズなどの著書があり、都内コンビニバイト歴7年の漫画家・斎藤潤一郎さんもレジ袋有料化を憂慮していたひとりだ。

「いざ始まってみると、そんなに面倒はないですね。ただ、思った以上に袋はいらないって人が多い。この間、ドーナツとカップ麺とおにぎり2つとサラダを買った人がいて、カバンもマイバッグも持っていなかったから、『これは絶対に袋が必要だろう』と、聞かずにレジに打ち込もうとしたら、『袋いらないです!』って言われて。どうするのかと思ったら両手で抱えて持って帰りました。おそらく、クルマで来ていたんだと思いますけど」

 女性はマイバッグ持参率が高いため、有料レジ袋を辞退する向きが多いが、男性の辞退者にはこんな理由が。しかし、3円をケチって駐車場でつまずきでもしたら3円の損害では済まない。もちろん例外もいる。

「奥さんが用意したのか、強面の男性が花柄のマイバッグを恥ずかしそうに持参してくるのは微笑ましいものがあります」(遠藤さん)

 そのとき、レジ周りにはほっこりした空気が流れたに違いない。情景が浮かぶエピソードだ。

◆コンビニは社会実験に最適の場!?

 現時点でのレジ袋有料化に対する思いは三者三様。このドタバタはしばらく続きそうだ。では今後、事態はどうなっていくのだろう?

 大手コンビニチェーン2社を経て、現在はコンビニ研究家として活動する田矢信二氏は、このように予測する。

「主要チェーンだけでも国内の店舗数は5万店以上ですから、全国民に訴えたい施策のとき、コンビニを使うことはスケールメリットが大きい。セルフレジの普及に合わせ、いずれは全チェーンのレジ袋がバーコード管理になると思います」

 レジ袋のバーコード管理というと、今年3月に開業したJR山手線の新駅・高輪ゲートウェイ内の無人コンビニでは早くもレジ袋がバーコード管理に。もしかすると、レジ袋有料化を皮切りに、大手コンビニの無人化も進む?

「現状は厳しいです。今のコンビニはamazоnやメルカリなどネット商品の扱いも多く、公共料金の支払いができるのも当たり前に。加えて、いかに少数で効率よく店舗運営するかが勝負です。ですから、専門特化した業態ならともかく、コンビニの便利なサービスをすべて標準装備した無人化は先の話になるでしょう。それより、立地に合わせたセルフレジ店舗と縮小型無人化店舗の導入が優先です。それに、レジが遅いとキレたり、不機嫌になる人がいますが、自分でやってみると案外、時間がかかるものです。そんななかでのレジ袋有料化ですから、現場の方のご負担は相当なものだと思います」(田矢氏)

◆趣向を凝らした「レジ袋有料化」PRを行うチェーンも

 そんな折、加盟店の負担を軽減すべく、コンビニ本部も有料化の周知に工夫を凝らしていた。

「目立ったのがナチュラルローソンとミニストップ。前者は伊坂幸太郎さん、吉本ばななさん、筒井康隆さん3人の小説を印字したレジ袋を作り、すぐ捨てられてしまうレジ袋に意識が向かうよう期間限定で無料配布していました。今後、レジ袋を広告的に使ったり、アニメやミュージシャンとコラボした期間限定のマイバッグなんかも出てくるでしょうね。また、ミニストップは特定の店舗で可燃ゴミ袋を店舗のレジ袋として使用する実証実験を行っていました。食品ロス削減などと並行して、こういったエシカルな取り組みは、新・買い物時代のトレンドになります」(同)

 成熟期を迎えたコンビニ市場。その一方で、人件費や物流費の上昇、24時間営業の揺らぎという構造上の問題を抱えるコンビニ業界。今後、国際的な世論を受け、エシカルな方向にシフトするにせよ、本部と加盟店の連携は、これまで以上に必要になってくるだろう。

◆コンビニのレジでキレる人の心理

 コンビニのレジでひとりにかかる時間はおおよそ10秒から15秒といわれている。そんな短い時間でキレる客の心理とは? 精神科医の片田珠美氏に聞いた。

「ひとつ考えられるのは、日頃の不満や怒りが溜まっている状態ということ。それらは排泄物と同じで、どこかで出さなければ気持ち悪くなる。そこで、怒りの矛先を方向転換して、出しやすいところで出すわけですが、これを精神分析では“怒りの置き換え”と呼びます。2つ目は、自分は損をしているという感覚が強いこと。レジ袋って今までタダだったわけじゃないですか。加えて、昨年の消費税増税やコロナ禍による経済的困窮が、損をしている感覚に拍車をかけていると思います」

 体内に怒りが溜まると、呼吸も脈拍も速くなる。イラッときたら、まずは深呼吸を。また、1か月以上前から店内やメディアなどで告知がなされていたにもかかわらず、「有料化? ワシャ知らん」と開き直る老人の心理も気になる。

「それは“暗点化”という現象です。視野内に生じた見えない部分を暗点と言いますが、同じように自分にとって都合の悪いことは見えなくなる現象を指します。自己正当化の傾向が強い人は暗点化が起こりやすいですね。あるいは、自分は老い先短いし、我慢を重ねてきたからもう我慢したくないと“脱抑制”と呼ばれる状態になり、暴走してしまうとも考えられます」

 コンビニは憂さを晴らす場所ではないと、肝に銘じたい。

【田矢信二氏】

コンビニ研究家。近畿大学商経学部卒業。セブン-イレブン、ローソンを経てコンサルタント会社等に勤務。SNSで独自視点の情報を伝え、テレビやラジオなど多岐にわたるメディアに出演。コンビニをテーマにした講演も多い

【片田珠美氏】

精神科医。大阪大学医学部卒業。パリ第8大学精神分析学部にてラカン派の精神分析を学ぶ。著書に『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)、『「自分が正義」の人に振り回されない方法』(だいわ文庫)など多数

<取材・文/山脇麻生>

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